対升田初手合
「将棋世界」昭和23年新春号(1月号)に升田幸三八段との初手合の自戦記を寄せているのが加藤治郎八段である(肩書きはいずれも当時)。
この一局、加藤八段が負けているので「敗戦記」
「升田君の棋風は一般には攻め八分とか言われているが、本質的なものは攻めよりも受けである」として、序盤の居玉を褒めている。
「本局でも居玉が、七、八筋の受けに役立っている。(中略)だから升田君の居玉は細心の注意の下に行われている計画的な居玉なのである」
このあたり、掲載されている棋譜と一緒に読むと納得させられる。
この号でもうひとつ興味深かったのは、「本間五段対平野四段」の観戦記。
「平野四段は古い錬成会員である。当年三十四歳、斎藤八段門下として三段までさした、ところがあの戦争の影響で将棋も指していられなくなり、新宿に経営していた将棋倶楽部も解散して田舎に引き籠っていた。それが此度の第二期順位戦に先立ち行われた錬成会選抜戦に五十嵐四段と共に優勝し、四段を貰うと同時にC級張出し棋士として順位戦に参加したのである」
へえ、そんなことがあったのか。
ちなみに、平野広吉四段の師匠が故・斎藤銀次郎八段で、平野四段の孫弟子が渡辺明名人に連なるそうだ。
平野広吉 vs. 本間爽悦 順位戦の棋譜はこちら
加藤治郎氏と言えば、忘れてはいけないのが、名著『将棋は歩から』である。
これを読まずして将棋は指せないだろう(たぶん)。以前は古本屋を探さないと手に入らなかったのだが、ありがたいことに復刊というのかな、手に入りやすくなっているので、棋力が上がらないとお嘆きの方は、序盤からいかに歩が大切かを理解できるこの名著をぜひお手元に。