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インフレはイノベーションを促す 〜 ”たまには”他責のススメ

お疲れ様ですキャリアコンサルタントのタケシマです

他責思考というと仕事をする上でダメな態度として言われることがほとんどですが見方によってはメリットもあります。イノベーションを考えた時に”たまには”他責思考することにもメリットがあるのではないかと天邪鬼の私としては考えてみました。

まずインフレの話をいたします。最近はガソリンや小麦粉が値上がりしてますね、その割には収入が上がらずにジワジワ家計を圧迫しているなんて声もよく聞きます。インフレ=物価が上がること、正確に言うとお金と物の相対関係の中で物の価値がお金に対して上がることです。

日本は30年くらいデフレ、つまり物価が下がることが続いていましたのでインフレは勘弁してくれよという気持ちの方も多いでしょう、物価が上がるのは嫌だと言うのは心情的にはわかるのですが私が以前住んでいた海外の国々では緩やかなインフレは政府として目指すべき目標でした。

10年ほど前シンガポールに住んでいた時に、中央銀行の展示室を見たことがあります。そこには過去2、30年の経済発展の歴史がTシャツとか、食料品の写真とその価格の値上がりのグラフとともに

年間数%の緩やかなインフレを実現してきたことが誇らしげな実績として説明されていました。デフレに慣れた日本人的にはちょっとびっくりしますが物の値段が上がってきたことが中央銀行が誇るべき実績なのです

確かにシンガポールの経済成長は安定的であり、ベンチャーなども活況を呈しています。そんな状況をうらやましく見ていた記憶があります
その時に、シンガポール中央銀行の目指すものが明確にビジュアルとして理解できました。

確かに、食べ物などの値段だけ上がり給料が上がらなければ勘弁してほしいよと思いますが、本質的にインフレとは労働の価格である給料も含め全般的な物価上昇のことを指します。政府としても給料も含めた物の値段が緩やかに上がるインフレをターゲットとする、言い換えるとお金の価値を相対的に下げるインフレを指向することは大事な政策なのです。

さて、今回は日経新聞に面白い記事がありましたので紹介します。

インフレはイノベーション促す 岩井克人・東大名誉教授「物価を考える 低温からの脱却」を聞く(1)

東大名誉教授、マサチューセッツ工科大学などで教鞭をとった経済学者の岩井克人さんの記事です。

岩井氏は日本は30年間にわたり経済が停滞した理由を

「デフレだ。資本主義においてデフレは長期衰退に導く最も確実な道だ。資本主義は利潤の追求で動く。その源泉は経済学者のシュンペーターが指摘したようにイノベーションだ。新しい商品や技術、市場開拓など差異が価値を生む」「インフレの役割を強調したのがケインズだ。イノベーションを現実化するにはお金が必要だが、アイデアがある人の多くはお金がない。そういう人に対し、アイデアはないがお金はある人を結びつける。それが金融だ」

と、説明します。さらに

「インフレの場合、借金は目減りしていくので、アイデアはあるがお金がない人は借金して投資しやすくなる。その結果、イノベーションが促される。逆にデフレではお金の価値が上がるので、無駄なタンス預金になってしまう」

と言うように、イノベーションはインフレによって促されたと説明します

「資本主義はまさにインフレによって始まった。英国は16世紀後半から17世紀にかけ、緩やかなインフレが続いた。貿易や毛織物の製造など、投資に必要なお金が借りやすくなり、資本主義的な発展を始めることができた」「劇作家のシェイクスピアが活躍したのもこの頃だ。彼が劇団を経営して自らの作品を上演できたのもインフレのおかげだ。英国は物的資本だけでなく、最大の文化資本も手に入れたのだ」

岩井さんは専門業績のマクロ経済学に加えて『貨幣論』などの著作で貨幣を根源的に思考することを長年続けてきました。ここでは『貨幣論』に触れる余裕はないのですが、十数年ぶりに再読してみたくなりました。

さて、今回のお題であるイノベーションについて。
さる調査ではデフレ下では起業件数が低下するという結果があるそうです。確かに起業するにはお金がかかりますし、失敗した時に就職できるような環境であれば思い切って起業もできるのですが路頭に迷うようなリスクは取りにくいです。デフレ下ではそもそもお金が不足していますので借りるに借りれないし、ベンチャーだでけでなく大企業も含め設備投資を抑える傾向にあり、経済が全体が萎縮してしまいます。転職も容易ではなく、失敗が許されない世界です、、、、なかなかそんな環境ではイノベーションが生まれないのです。
アメリカでGAFAが生まれた背景には、アメリカが持続的にインフレ傾向であることもあるでしょう。

書店にはイノベーションを生み出すためのノウハウを解説した本がたくさんあります、イノベーションを生み出す思考法、経営術、組織作り、技術開発、勉強法などなど、、、個人や企業ができる創意工夫としてはイノベーションをいかに生み出すかを考えることは生き残るために大切なことです。
ただ、個人や企業がどんなに頑張っても政府や中央銀行のマクロ経済政策が長期的に失敗してしまっては限界があります。

そんなこと言われてもマクロ経済を我々がどうこうできるわけじゃないので意味ないじゃん、、、と思われるかもしれませんが私はマクロ経済状況を知ることはイノベーションを生み出そうとしている人にとってとても意味のあることだと考えます。以下半分ギャグですが、半分本気です、マクロ経済政策のせいにしましょう!”たまには”他責のススメです!

①失敗に優しくなる:「失敗したらどうするんだ、、」など部下の出す新しいアイディアに対して上司が批判的にみてしまうのはそのアイディアがダメなわけでも、上司の頭が硬いわけでもなく30年デフレの心情がそうさせていると理解しましょう。マクロ経済政策のせいにしましょう
②気質という曖昧さを回避できる:日本人は気質的にイノベーション思考がないとか、サラリーマンは保守的だからイノベーション思考がないとか、気質という曖昧なものに原因を求める思考がありますが、そんなことはありません。経済成長していた時はSONYやHONDA、任天堂が登場したのです。マクロ経済政策のせいにしましょう
③勝ち組/負け組思考からの脱却:こんなデフレ下でも頑張って成功する人はいます。弱肉強食を勝ち抜いた方は尊敬すべきですが、勝ち組からするとマッチョな努力論とか才能論になりがちで、負け組からすると自分の才能や努力が足りないのでダメなんだと思いがちですが、そんなことはありません。
経済成長していれば全員が勝ち組ということだってありえます、負けたのはマクロ経済政策のせいにしましょう

以上半分ギャグですが、半分本気です。我々個人や企業セクターがマクロ経済に対しできることなんて超超ほんのわずかですが、何でもかんでも自責にして思考が縮こまってしまうことを一度止めてみましょう、他責にしてみること=マクロ経済政策が悪いんだとすることでまずは自信を取り戻しましょう!
マクロ経済政策のせいにして、我々の中のアニマルスピリットを呼び覚ましましょう!

ではでは





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