The Velvet undergroundと民主革命「NHK映像の世紀バタフライエフェクト」
少し前の番組ですが5月に放送した「NHK映像の世紀:ヴェルヴェットの奇跡 革命家とロックシンガー」が素晴らしい番組だったのでご紹介します。公式ネット配信は残念ながら現時点ではないですが、ネット上ではデ●リーモーションに動画がありました(リンクは貼らないでおきます)
ルー・リード率いるThe Velvet undergroungのレコードがチェコスロバキアの民主革命に大きな影響を与えたという実話です。
↑ルー・リードと民主革命のイメージ描きました。
番組はチェコスロバキアの劇作家ハヴェス氏が公演のためNYを訪れる場面から始まります。初めてのアメリカ、母国にはないものを求めレコード屋でたまたま手に取ったものは
The Velvet undergroungの『White Light/White Heat』
古臭い秩序を破壊するその表現に感銘を受けるハヴェス氏はそれを持ち帰る。ルー・リードはゲイを公言し、ドラッギーな歌を歌い自由のために闘争していた。しかしヴェルヴェット・アンダーグラウンドは売れてませんでした。
このアルバムは私も愛聴していますがかなりぶっとんだサウンドでありまして言論の自由の無い国のハヴェス氏が驚いたのは容易に想像がつきます。
プラハの春でチェコスロバキアでは社会主義と自由の両立、検閲の廃止、言論の自由がようやく進展してきました。歌手のマルタ・クビショヴァとかロックバンドPPU(The Plastic Pleple of The Universe)らが活躍。しかし春は長くは続かないのですね、、、、ソ連の軍事侵攻に屈した議会は傀儡政権が樹立し言論統制、自由の弾圧が始まります。国民的英雄の体操選手チャスラフスカ達は署名活動をします。
ちなみにこのチャスラフスカ選手は1964年東京オリンピックで素晴らしい演技を披露し金3つの大活躍をしました。市川崑の『東京オリンピック』という見事なドキュメンタリー映画があり、もちろん映像は全編ドキュメントなのですがこのチャスラフスカ選手の場面だけは黒バックに美しく伸びやかな演技の構成された映像を見ることができます。市川崑監督、あまりにもチャスラフスカ選手が美しかったので魅せる絵を取りたくなったのでしょう。
国民的英雄チャスラフスカはスポーツ界を追放され身分を隠し清掃員として働く、PPUは危険な歌を歌ったという罪で逮捕されてしまいました。
劇作家ハヴェル氏は、PPU逮捕に抗議する活動を始めます。しかしそのハヴェル氏も逮捕され4年半の実刑判決をくらいます。
1983年ハヴェル氏釈放、89年ベルリンの壁崩壊で一気に民主化の機運が高まります。プラハでの集会、数十万人の市民による抗議デモ、ついに11月24日共産党政権は倒れます。ソ連侵攻から20年、新大統領にあのハヴェル氏が就任。
ルーリードはハヴェル氏から自分の音楽が市民の力になったのだと聞かされます。そして初のチェコスロバキアでのライブ、
I'm waiting for the man
バックはもちろんPPUのメンバー。チャスラフスカの名誉も回復されました。
ビロード革命(Velvet Revolution)という名前ですが、ビロードのように柔らかなイメージから来ているのですが、ハヴェル氏いわくThe Velvet underground由来でもあるということでした。
ホワイトハウスにハヴェル氏が招かれた際には、ゲストとしてルー・リードが呼ばれました。その夜ホワイトハウスには大音量のギターが鳴り響きました。
ハヴェル氏の活動は多くの人に勇気を与えました、中国の劉暁波(りゅうぎょう)もその一人です。彼は中国の民主化を訴えノーベル平和賞を受賞したのですが残念ながら刑務所に収監中に他界しました。
この『NHK映像の世紀』は水準の高いコンテンツを提供してくれます。特にこの話は感動しましたね。音楽というものがいかに人々を勇気づけてくれるのか。ルー・リードが自分の音楽はチェコに居場所を見つけたと言っていたのが印象的でした。
もちろん当時の時代のうねり、ベルリンの壁崩壊、ソ連のペレストロイカの流れの中でチェコスロバキアの民主化も見るべきだと思いますが、ハヴェル氏やPPUが弾圧にも負けずに強い信念をもつことができたのはThe Velvet undergroundの音楽があったからだと思います。
そういえば春にみた映画『ZAPPA』も同様にフランク・ザッパの音楽がチェコスロバキアの人々の自由獲得へのエネルギーになったという話でした。PPUのバンド名もザッパの曲から取られていましたね。この映画もすごく良かったので別途レビューしたいとおもいます。
ではでは
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?