【8月の台風6号含む】離島での停電被害事例から学ぶ、停電が起きやすい要因や4つの対策例(3分防災・BCPニュース)
前触れもなく突然発生し、私たちの生活だけでなく、ビジネスにも大きな被害をもたらすのが自然災害です。特に離島では、いざ自然災害で停電が発生してしまうと、他の地域との接続が容易でないこともあり、より重大な状況を引き起こす可能性があります。また復旧作業も通常よりも長引くことが想定され、長引けば長引くほどその損失も大きくなっていきます。
この記事では、ここ数年、国内の離島において大きな停電被害をもたらしたニュースをピックアップ。その停電被害の大きさや企業にもたらす影響、また、そういった事態に備えるため日頃からどのような準備をしておくべきなのかといったことについて学んでいきましょう。
ここ数年で大きな停電被害をもたらした離島の災害ニュース4選
様々な災害によって停電は起こり得ます。災害によって停電が引き起こされると私たちのライフラインが脅かされるのはもちろん、ビジネスの動きも完全に止めてしまう可能性があります。人為的ではない自然災害はいつ収束するか分からず、特に離島ではその地域的な特徴から停電被害が長期化するケースも考えられないでしょうか。
ニュース① 沖縄・台風6号による災害(2023年8月)
2023年7月28日に発生した台風6号は、進路がUターンするなど迷走し、異例の進路を辿った結果、沖縄や奄美地方など離島を2度暴風域に巻き込みました。その影響は大きく各地で何度も線状降水帯が発生し、奄美・沖縄地方は長時間暴風雨にさらされました。長時間の暴風雨による影響で沖縄では、沖縄全世帯の4分の1にあたる16万世帯余りが停電の被害を受けたことが報告されています。
また、大手コンビニ3社で合計約300店舗ほどが一時休業の対応となったり、度重なる停電で一部店舗の冷蔵庫が故障したり、飲料水や乳製品など冷蔵品の販売に困難が生じていました。
ニュース② 奄美大島・線状降水帯発生による災害(2023年6月)
近年、特に梅雨時期に発生し各地で大きな被害をもたらしている線状降水帯※。決して離島も関係ないわけではありません。2023年6月20日から21日まで線状降水帯が発生し、大雨に見舞われた奄美大島(鹿児島県)では22日も寸断された交通網や水道、電気の復旧作業が続き、約300戸で停電が続き、道路の寸断により多くの集落が孤立していました。
※多発する積乱雲が同じ場所を通過・停滞することで、線状に伸びた地域に大雨を降らせるもの
この災害では線状降水帯が2日連続で発生。この記録的大雨の影響で、約4,300世帯で断水が続くなど大きな被害があり、このときの雨量は48時間で404.5ミリを記録し、これは6月としては最大の雨量です。そして奄美大島は離島であるため、孤立した地域には漁船で発電機や救援物資を運ぶなどしました。
ニュース③ 五島列島・大雨による災害(2020年8月)
2020年8月、五島列島(長崎県)では台風9号・台風10号が連続して来襲。この台風の連続した直撃により、五島列島では港湾27施設と漁港12施設に大きな被害が生じます。また特に被害が大きかったのは、台風9号が接近した際、五島列島の「相の浦港海岸阿古木護岸」において、最大瞬間風速40.0m/sの風と満潮時が重なった波による影響で、唯一の道路である市道及び水叩きが崩壊し、市民生活に大きな影響を与えました。
この被害が起きた島は2次離島※と呼ばれ、長崎県本土と交通手段を持たないため、今回のような市民生活に大きな被害を及ぼす災害が発生した場合、復旧のための移動手段も然り、潮の干満による移動制約もあり、復旧までに大きな時間を要する場合もあります。
※本土との間を直接結ぶ公共の交通手段(航路・航空路)がある島を1次離島、その手段がない島を2次離島、さらに先が3次離島と呼ぶことがあります。法的に定義された用語ではありません。
ニュース④ 小笠原諸島(父島)・台風1号による災害(2022年4月)
日本の離島で大きく影響を与える災害の代表格は台風です。毎年決まって台風は離島に影響を何らか及ぼします。2022年4月に発生した台風1号は小笠原諸島(東京都)の父島に大きな影響を与えました。
父島では150ミリを超える大雨になった一方で、最大瞬間風速が45mを超えるなど4月には異例の暴風雨が吹き荒れました。その影響で島の全域1,300世帯が午前5時台から停電になり、同日午後10時には復旧。この停電の原因は木々が強風で煽られ、電線に接触した影響で発生しました。
なぜ離島では停電が起きやすい? 停電が長期化する要因と合わせて紐解いていく
現在、日本の離島は14,120島あります。そのうち居住者がいる有人島は416島。さらにそのなかでも本土から行くことができる1次離島、近隣の島を介さないと行くことのできない2次離島や3次離島も存在します。
特に2次/3次離島は移動手段がさらに限られるため、被災した際に発生した停電は、周囲の状況が落ち着くまでは復旧が難しく長期化する恐れがあります。また離島は基本的に周囲が何も守られていないため、ちょっとした飛来物の影響で電線が切れるなどのリスクも考えられます。
離島における停電対策は、離島という地域特性、例えば日本列島本土と別の離島を介さなければ交通手段がない2次離島や3次離島の場合、復旧支援を望んでも被災して港が使えなかったり、海が荒れている影響で支援を受け入れることができないリスクが存在します。そうすると復旧手段が絶たれている離島にとっては必ず長期化すると考えられる停電はすぐ目の前にあるリスクです。
離島における停電が発生した際の4つの対策
離島で停電が発生した場合、停電復旧の目処が立たなければ生活はもちろん、企業活動にも影響が及ぶことが考えられます。そのため想定される停電時間を予め最大限考慮し、最悪を想定した予備電力の設置を最初から計画しておくことが大切です。
災害による停電が発生した際、離島ではどのような対策を検討または実施しているのか、4つの対策を見ていきましょう。
① 再生エネルギー活用
離島では太陽光や風力など再生エネルギー活用を検討・導入している地域が存在します。東京・神津島(神津島村)ではディーゼル発電から太陽光発電に切り替えました。国土交通省の2019年の調査では254島の離島自治体を対象に聞き取りを実施し、公共施設に再エネを導入したのは59島にのぼります。
(参考:再エネで離島が電源を確保!災害孤立に備え導入広がる(防災ニッポン+))
② 移動式避難所の活用
ライフラインがもし止まったとしても、電気・水を自給することが可能になる移動式避難所の活用も離島では検討されています。人口300人の伊豆諸島・利島村では2023年春に導入をしています。この移動式避難所はトレーラー型の避難所で、電気は主に太陽光パネルと蓄電池で供給され、もし電力が足りない場合は発電機が自動で稼働する仕組みになっています。水についても雨水をろ過し、トイレやシャワー、洗濯に利用することができます。
(参考:災害弱者のもとへ出向く「ケアできる避難所」 開発企業の思い (毎日新聞))
③ ドローンを活用した物資輸送
奄美大島では2022年6月に食料品や生活物資を小型無人機「ドローン」で離島に運ぶ実証試験を行いました。約8kmのルートのなかで目視外かつ海を渡って行う形で実施されました。災害などで集落が孤立した際や停電で電力が利用できないときの物資救援にも力を発揮できると期待されています。2023年度中の事業化をめざしているということで、事例でも紹介したような奄美大島での災害発生時、孤立した集落への物資輸送などで力を発揮すると思われます。
(参考:島の暮らしを支えるドローンの社会実装モデルを検証しました (JAL))
④ 発電池システムの活用
離島での電力確保については、災害発生時には場所の特性上、孤立する可能性があるため、企業向けの蓄電池や産業用発電機、無停電電源装置といった予備電力や、PCなども充電できるような大容量のモバイルバッテリーの準備を予め確保しておくことが大切です。
BCP(事業継続計画)にも活用できる非常用電源を展開しているRebglo.(リブグロ)の「REBGLO発電池システム」は、災害発生時の代替電源として72時間稼働します。このパッケージを離島で活用することが検討されています。
2023年6月には、東京大学 生産技術研究所 沼田研究室との共同研究の一環として、福岡県福岡市の離島をフィールドに「災害時の電源確保に関する定量的な指標の検討」に向けた研究を開始しています。
災害時に重要な電力。離島の貴重な電力として活用できるBCPバッテリー
停電被害は地域や業種、企業の規模を問わず、あらゆる活動を長期間止めてしまう可能性があります。特に災害時に孤立しやすい離島で大規模停電が起きた際、常日頃から備えをしていないと自社の通信機能やサーバーなどを守ることは絶対にできません。予備電力を確保しておくことで、緊急事態発生時に事業の継続性を保つことができます。
災害時だけでなく、平時でも日常的に活用することでコスト削減に貢献する電力BCPシステムを搭載した「REBGLO発電地システム」は、エコでメンテナンスも容易なガス発電機と、高性能蓄電池を組み合わせてシステム化したため、コンパクトで災害に強い、無瞬断の電源バックアップが可能になります。
執筆:望月大作
編集:Number X