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EVバッテリーの再利用でカーボンニュートラルを実現。Rebglo.とフォーアールエナジーが目指す資源活用の新世界

2050年までに地球温暖化ガスの排出をゼロにする、カーボンニュートラルの動きが世界的に広がっており、ガソリン車からEV(電気自動車)への移行も活発になっています。それとともに、使用済みバッテリーの廃棄による環境問題から、バッテリーの再利用やリサイクル・リユースも世界的な注目の的に。

そこで今回は、早い時期から電気自動車用バッテリーの再利用を始め、現在ではRebglo.との協業でカーボンニュートラルやゼロエミッション社会の実現を目指している、フォーアールエナジー株式会社(以下、フォーアールエナジー)の堀江裕(ほりえ・ゆたか)社長に使用済みバッテリーの再利用の状況やRebglo.との協業に関するお話を伺いました。

バッテリーの再利用技術を提供するフォーアールエナジー
日産自動車がリーフを初めて発売した2010年12月の3ヶ月前、日産自動車と住友商事の共同出資によって設立。低炭素社会の実現を軸に再生可能エネルギーの普及やバッテリーの二次利用、環境にやさしいゼロエミッション車の普及をミッションとして活動している。
フォーアールエナジーの企業サイト

回収したバッテリーの荷受けから出荷までの全工程を行う、フォーアールエナジー浪江事業所の外観

再生可能エネルギーを通して、CO2の削減、レアメタル資源の枯渇問題などの社会課題に貢献

現在、世界中でニッケルやコバルトなどバッテリーに使用されている希少金属の使用量削減が叫ばれており、米国のアセンド・エレメンツ社、中国の恒創睿能社などバッテリーの再利用を軸とした有力なスタートアップが世界中で数多く設立されている状況です。このように環境問題や資源問題を考える上で、環境に配慮したバッテリーの再利用が求められています。

堀江「カーボンニュートラルを実現するために重要な再生可能エネルギーは、発電量が不安定なため蓄電池が不可欠です。しかし、これまでその蓄電池が高価だったため、再生可能エネルギー普及のネックとなっていました。そのため、私どもは安価かつ高性能なリユースバッテリーを提供していくことで、再生エネルギーの普及に貢献したいと考えています。

そうすることで、バッテリーの生産や廃棄時に排出されるCO2も減らせます。バッテリーの寿命を延ばすことで、すでに争奪戦が激化しているリチウムやコバルト、ニッケルなどの希少金属を有効活用でき、資源枯渇問題の解決や環境保全にも繋がっていくでしょう」

世界と日本におけるコバルトの需給の将来の見通し(出典:Wood Mackenzie、IEA資料より資源エネルギー庁作成

EV車のバッテリーを1台分作るのに必要なCO2は約6.2t!?
なぜ、世界中でバッテリーの再利用が求められているのでしょうか。その理由にEV車のバッテリー問題が挙げられるでしょう。EV車そのものは環境性能に優れていますが、そのバッテリー製造時には約6.2tものCO2が発生しているのです。これは3人の人間が1年間に発生させるCO2量に匹敵します。

日産リーフの使用済みバッテリーに新たな生命を吹き込む。リユースバッテリーが生まれた理由

現在、フォーアールエナジーが供給するリユースバッテリーを活用した製品は大きく3つ。Rebglo.でも扱っているバックアップ電源や小型電源、再び電気自動車に搭載する安価な交換用バッテリー、そして系統接続して電力の需給調整に使う大型の蓄電システムです。リユースバッテリーの活用が当たり前になることでどんな効果が挙げられるのでしょうか。

フォーアールエナジーでは福島県浪江町の工場で、日産が提供する電気自動車(EV)『リーフ』から回収した使用済みバッテリーをリフレッシュし、パートナー企業との協業を通して製品化しています。

浪江工場の様子(写真:Rebglo.)

堀江「廃車となるリーフのバッテリーでも、廃棄するのはもったいない。まだまだ価値があります。自動車用としては容量不足を迎えたバッテリーでも、非常用電源などその他の用途として十分に利用できます。そこで私どもは、ディーラーや解体業者から回収したバッテリーを検査し、用途に応じて使えるものをRebglo.さんのようなパートナー企業とともに製品化し、世に送り出しているのです。

日産リーフ充電中の様子

それを可能にしているのが、リーフの発売以来、10年以上かけて磨きあげてきた私どもの技術とノウハウ。リーフから収集した走行状況などのビッグデータも活用し、回収したバッテリーの性能を正確に測定するとともに、再利用後の劣化性能、残寿命を予測する。このような車載バッテリーの安全性を保証しつつ、再利用する技術において、私どもは大きな強みをもっています」

安全性を担保するために徹底したトレーサビリティ管理(入荷から検品、出荷までを全て記録する管理システム)

バッテリーのことを知り尽くし、お客さまのニーズに応えた製品化が強みのRebglo.との協業で販路を拡大

そんなフォーアールエナジーとRebglo.の協業のきっかけは、4年前に遡ります。石油会社でエネルギー事業に携わってきたRebglo.代表の村越誠(むらこし・まこと)は、当時「Reboot Globalization(再生とグローバリゼーション)」を事業コンセプトに、廃棄物などの価値を再び見出して資源循環を図り、環境問題とエネルギー問題を両立させる。そのような事業アイデアを練るなかで、そのコアとなる技術としてバッテリーに着目していたときに、現在Rebglo.のバッテリーアドバイザーを務める加東重明(かとう・しげあき)と出会いました。

加東は日産自動車で長年、EVバッテリーの規格や生産・品質管理に携わり、リーフにも企画段階から関わってきた、いわばバッテリーのプロフェッショナルです。そんな加東の技術とノウハウ、村越の事業コンセプトの融合によって生まれたのがRebglo.です。

堀江「加東さんは我々の大先輩で、うちの社員よりリーフのバッテリーについては詳しい方。そんな加東さんをアドバイザーに迎えられたRebglo.さんは、バッテリーの制御や管理技術に関しては、他社と比べて圧倒的に高いレベルをお持ちです。弊社のリユースバッテリーを最も安全に、緻密な設計で製品化されているので、我々も安心して供給することができます」

万が一、リーフに使っていたバッテリーの再利用で事故が起きれば、日産やリーフというブランドの毀損にもつながります。そのためフォーアールエナジーでは、UL1974*という国際認証規格のもと、リユースバッテリーを厳格に管理・運用。また、同社から供給されるバッテリーは容量がそれぞれに違うため、製品化するにはバッテリーに関する高度な知識とノウハウが不可欠です。Rebglo.では加東の指導のもと、48枚のモジュール1枚1枚の特性にあわせた製品化を行っています。

*…電池の再利用に対する安全規格

Rebglo.は必要な容量や機能に合わせてモジュールの数量を使い分けている

堀江「Rebglo.さんとの協業でありがたいのが、我々のバッテリーのことを知り尽くしたうえで、お客さまのニーズや社会の動向をいち早く捉え、製品化していただけることです。実はバッテリーの再利用ビジネスを始めてしばらくは、今ほどカーボンニュートラルやSDGsへの関心が高くなかったこともあり、販売先を探すのにとても苦労したんですね。

でも、Rebglo.さんの力をお借りしたことで、環境負荷やBCPに関心のある企業や団体が、私どものバッテリーを積極的に活用してくださるようになりました。Rebglo.さんから社会の動きや業界動向、お客さまの声やニーズといった情報を的確に提供いただけることで、我々も必要なバッテリーを事前に確保する計画を立てることができています」

Rebglo.では現在、フォーアールエナジーから提供されるリユースバッテリーをおもに災害時の非常用電源として製品化し、BCP(事業継続計画)の観点からお客さまに提案。従来の非常用電源とは一線を画す、デザイン性にも配慮した外観も好評です。建設業や流通、高齢者施設や病院、各種事業所などでの導入が広がり、定置用はオフィスや事業所、可搬式は建設現場や災害時の避難場所などで主に使用されています。

Rebglo.が展開している環境配慮型ポータブル蓄電池「ミルミルワーカー®」

アメリカや欧州などグローバルに技術を展開。さらなる資源循環でゼロエミッション社会を実現していきたい

フォーアールエナジーとRebglo.の協業は、バッテリーを売っていくことが目的ではありません。バッテリーの再利用を通し、CO2の排出を減らしてカーボンニュートラルを進める。資源を循環させて有効に活用することで、ゼロエミッション社会を実現する。それが最終的な目標です。

堀江「そのためにもバッテリーの再利用の輪を、社会全体にさらに広げていく必要があります。我々としてもバッテリーの回収量を今よりもっと増やしていきたい。また、『アリア』や『サクラ』など『リーフ』以外の日産の電気自動車や、『e-POWER』のようなハイブリッド車のバッテリーの再利用も今後は行っていきたいですね。さらに、我々の技術をプラットフォームとして、他社のバッテリーやバッテリー以外にもモーターやインバーターなどを再利用することも検討しています」

今のまま電気自動車の生産段数が右肩上がりで伸びていけば、バッテリーの再利用やリサイクルは、大きな社会課題となってきます。そのため、近年ではアメリカや欧米においても自動車メーカーやベンチャー企業が中心となってリユースバッテリーを活用したビジネスに参入し始めている状況です。しかし、世界に先駆けて発売したリーフとともに10年以上、バッテリーの再利用ビジネスに取り組んできたフォーアールエナジーには、技術やノウハウにおいて大きなアドバンテージがあります。

堀江「私どもは今後、アメリカや欧州で展開している日産の事業にも弊社の技術を組み込み、世界に広げていく予定です。また、バッテリーから希少金属などの素材を効率的にリサイクルする技術が現在まだ確立されていません。今後、そのようなリサイクル技術の開発も進め、再利用によって最後まで使い切ったバッテリーの資源をさらに有効活用する。そんな完全な資源循環サイクルの構築を目指していきます」

単なるメーカーや国といった枠組みを超え、環境とエネルギーが調和した世界を築くために、あくなき挑戦を続けるフォーアールエナジー。Rebglo.はそんなフォーアールエナジーとこれからもさらに強固なタッグを組み、エネルギーと資源の好循環サイクルの構築、カーボンニュートラル、ゼロエミッション社会の実現に向けて歩みを続けていくようです。

撮影:高島啓行
執筆:関川隆
編集:エクスライト、Number X

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