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海外進出失敗企業あるある


私はこれまで日系企業が多く進出している3か国で事業運営の経験をしてきたが、私が関わってきた会社も当然ながら、周りのスタートアップや進出企業の失敗の典型的なパターンを記する。

1、【人事編】

私の前職の会社がまさに失敗の典型であり、つい3日前も取引があった日系サプライヤーのベトナム拠点責任者が赴任5か月で退職した例である。

・日本の海外事業担当者(役員)が現場(海外拠点)を理解していない

・その為、数字だけで現場(海外拠点)を判断する

・拠点責任者は板挟みとなり、限界がきて爆発して退職

・事業は継続するが、資金と人材だけが流れていき、何の資産も蓄積されず

・同じことを数回繰り返し撤退

これは日系の企業には本当に多い事例である。

業種にもよるが、一般的に海外進出後3年で黒字化出来れば上々なのである。

しかしながら、知見の無い企業が勢いで海外進出を試みると当然ながら、見かけだけが素晴らしい無茶苦茶な売り上げ目標数値と事業計画を作り、役員会や株主へそのまま提出し、(海外でこれだけ売りまっせ‼)と進出を図る。

すると、海外現場では「適材人材の採用が上手く進まない。/現地政府機関が期限を守らず登記が遅れる。/採用人材がすぐ退職する。/思ったような予算が現地法人客が持っていない。/人材が全く育たない。」等々のあるある理由で売り上げが立たず、当初の計画が日に日に遅れてゆき、役員会で議題に上がり、担当役員は焦って現場を理解もせずに、(数字を上げろ)と具体的な策も出さずに、アホな指示だけ出す。

そうなると、現場は「それどころじゃねぇんだよボケ‼OKY‼(お前来てやってみろ‼)となり、日本本社と海外拠点のギャップが日に日に広がっていく。

このような状態の企業では、知見のある人材が社内に居ない為、現場の担当者は社内に理解が得られなく、孤立してゆく。

こうなった時点で事業は上手くいかない事は容易に想像できる。


2、【IT系広告系サービス】

今ではこれらの業種の海外進出が一番多いフェーズではないだろうか。

私は、以前タイで同業が入居するサービスオフィスで、幾度となく(こりゃだめだな)という会社をいくつも見てきた。

・日本で売れているから〇〇国でも売れるという勘違い

・サービスのクオリティが良く、効率が良いから現地で流行る

・〇〇系のメーカーは予算がデカいから現地法人で獲得すればイケる

まず、日本で売れていようが親日国であろうが、売れないものは売れないのだ。

そもそも、海外は日本ではない。一般的に日本のITサービスはアメリカの3年遅れと言われている。

自社開発した相当効率良い数値で獲得できるデジタル系広告サービスでも無い限りは現地の企業は採用しない。

例えば、現在1人当たり300円の単価で配信広告サービスからアプリダウンロードを獲得している企業が、1人当たり200円で獲得できる新サービスなら現地でも間違いなく売れるだろう。

しかしながら、進出する日系IT・広告企業はとりあえず現地の日系企業をターゲットとするが、現地の大手日系企業は日本やシンガポールの方で電通や博報堂が広告を管理している為、現地で提案したところで担当者は相手にもしてくれない場合が多い。

そこで、自社リソースで出来る事を考え、どこも同じようにSNS運用や小規模なデザイン案件を提案し始めるが、周りの競合も同じ事をしているので小さなパイの取り合いになる上に、予算も取れない。

そもそも自社サービスを持たない代理店等は、日本から進出時に客を引っ張ってこない限りは、現地法人予算で売り上げは立たないのだ。

人件費が安い東南アジアでは、絶対に現地の地場代理店に予算でかなわない

日本のCMや電車内で見かけるような大手メーカーも、現地法人の予算は桁が2つは低くなるのだ。

日本で一千万円の予算で提案できたような広告も、現地では数十万の予算しか出なく、代理店のサービス20%を乗せても高が知れた利益か、現地の代理店に価格で敗れて取れないかである。


3、【オフショア開発】

そもそもオフショア開発拠点を現地に設立する会社は、日本やシンガポールかのクライアントが確実に発注してくれるor日本本社から確実な発注がある以外では現地で営業をかけても全く売り上げは立たない。

ここベトナムでは地場の開発企業は500ドルでWebサイトを製作販売出来るのだ。いくらクオリティーを唄った所で、価格差が大きすぎて現地では提案できない。

人件費の安さを理由にオフショア開発拠点を試みると大抵失敗する。

理由として、東南アジアの様な途上国では、まともな技術を持ったエンジニアやプログラマー人材自体が少なく、各社取り合いになり人件費が想像以上に高くつき、よほど規模を大きくしない限りは価格メリットが出せなくなるのだ。

おまけに日本側のSE等と日本語でやり取りできる現場のSEを採用すると、人件費が跳ね上がり、ベトナム人の生産能力や勤務態度を考慮して、納期が大幅に遅れて収集が付かない状態になってから問題が発覚したり、急に担当が退職したりと、テンテコマイになることも頻繁にあるだろう。

それらを想定して、バックアップ人材を起用したり、日本では1人でまかなえる業務もベトナムでは2~3人体制で行う事となれば当然、開発に対しての価格メリットは無くなってくる。


上記は全ての企業に当てハマるわけでは無いが、よくある海外進出失敗あるあるなのだ。

5年間赤字でも問題ないような余程体力のある会社や、撤退ラインを明確に定めている会社でもない限りは安易に海外進出するより、日本の売り上げ低下を留める方にリソースを回す方が結果的に良い場合もあるのだ。


今から海外進出するのは基本的に中小企業位だろうが、重要な事として

1、必ず、海外に送り出すあるいは現地採用する海外拠点の担当者以外にも、担当役員は必ず知見のある人材か自分で行動できる人材の登用、それと日本側で専任もしくは兼任の海外事業部等を作り、海外拠点と密にコミュニケーションを取れる体制を構築すべきと考える。

少なくとも、立ち上げから数か月間は、日本本社の人事・総務・法務・経理とひっきりなしに、海外拠点とのやり取りを重ねる事となるだろう。

それらの立ち上げフエーズには、営業に行く暇など無い状況が続く事を考慮して事業計画を作成すべきである。


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GEN氏 (広告代理店CEO/海外ビジネスエキスパート)
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