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愛していた、

あの人以上に好きになれる人などいないのかもしれない。

未練なのか執着なのか、見分けのつかない思いを抱えたまま、それなりに時間が過ぎたけれど。
私は今でも、あの人のことをそんなふうに思う。
ずっと、あの人は私の心の奥のどこか深いところに住んでいる。
忘れさせて、くれない。

他の誰かを好きになっても、違う恋をしても、消えることはない。
格好悪くて、だけど格好良かった彼のこと。

この人は私のことが好きなのかな?
でも確信が持てなくて、もどかしくて。告白する前はあの人の後ろ姿ばかり見ていた。
想いが通じた時、あんなに嬉しかったのに。
もう過去形でしかあの人のことを語れないことが、あの頃の自分に、申し訳ない気持ちだ。

あの頃。学校で、公園で、何時間も話した。
隣に座って、手を繋いで、たまに肩に寄りかかってみたり。
名前付きのジャージの上着を交換したり、お揃いのものを持ったり、一緒に同じものを食べたことも、沢山したデートも。
誰もいない放課後の階段で手を引かれて、振り返ったらキスをされた。
色褪せてはいるけれど、今も思い出せる。
いつも、少しだけ胸がきゅっとなるよ。

何度も、優しいその目の奥をじっと見つめた。
そうすると、言葉にしなくても、言葉でも、好きだよと伝えてくれたね。
暑い日は、一緒にアイスを食べた。
手汗ごめんねって言いながら手を繋いでいた。
寒い日は、ずっとくっついて話していた。
ぎゅっとされると、あったかくて幸せだった。

私、あなたと幸せになりたかった。
そしてあなたを、幸せにしたかったな。
そう思うよ。今でも。

もう好きじゃないのに、遠い過去のことなのに、不思議だよね。
私は最近、あの人に対するこの気持ちは、恋でも、未練でも執着でもないってことに気づいた。
それくらいに『愛していた』っていう、ことだ。

「愛してるよ」
その言葉を私は、あの人以外に言われたことも、言ったこともない。そういえば、そうだ。

間近の恋人とも、交わしていない言葉。
それが何を意味するのか、考えたくないけれど考えてしまう。私の不甲斐なさ、未熟さ。ひどく痛むから蓋をする。彼に勝手だねと言ったけれど、私だって人のことを言えないのだ。

話がそれた。
その言葉は、きっとお互いに心から想い合っていたから、言えた言葉なんだろう。

あの恋がずっと忘れられないのは。
きっと、愛していた、からだ。

これからも、それなりに人生は続いていくと思うけれど、私はあの人じゃない他の誰かを、あの人以上に愛してしまえるのだろうか。
あれから、誰かを好きになっても、恋をしても、あの人と比べてしまって。あの恋のような熱が感じられない気がして。

私、あの人のことをそろそろ『大切な思い出』から『懐かしい過去』にしないといけないんだと思う。

あの人がいつまでも私の中で生きているから、今もいるみたいに思えてしまうから、前に進めないままなのかもしれない。
忘れなくてもいいけれど、思い出である限りあの人に対して何かを考えてしまうから。

過去にしよう。
あんなことがあったなと、ふと思い出す程度の。
あの人を過去にできたらその時は、もっと素敵な恋をしよう。
そんな相手を見つけるまで、もう簡単に誰かと付き合ったりしない。

私、ずっと寂しかったんだ。
他の誰かを好きになったような気がしていたのも、他の誰かと付き合ったのも、自己満足でしかなかった。
相手にも失礼だ。そんなものうまく行くわけがない。

もう、本当の恋しかいらない。

あと二ヶ月でまた1つ歳を重ねる。
20代中盤、駆け抜けよう。



『幾億光年』を聴きながら。
過去形にならないアイラブユーが、私にもありました。
またあんな恋がしたいな。だから。
一旦深呼吸して、次に行こうと思います。

それにしてもいい歌だな~

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