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冬のお花見 海辺の一家6
風もなく、暖かな日差しにほっとする冬の日だった。
早めのお昼をすませた清ばあちゃんと
お嫁さんの さちこさん なっちゃん 大吾君の四人は、
なっちゃんの運転する車で、近くの公園にお花見に出かけた。
ここは河津桜の名所で、道路沿いに桜並木が続いている。
まだ二月半ばだが、明るく華やかなピンクの花は もう満開に近い。
この桜は、特別に開花が早いので知られている。
お弁当を広げるには寒い季節なので
ゆっくりとそぞろ歩きをしてから、街中のお店でお茶にする予定だ。
大吾君がついて来たのは、花より団子がお目当てだった。
突然、大吾くんが駆け出した。
サッカー少年はじっとしていられない年頃だ。
「こら 待て〜」 なっちゃんが追いかける。
なっちゃんと、弟の大吾くんは、いつもこんな調子だった。
まだ小学生の大吾くんは、小さい頃から面倒を見てもらったお姉ちゃんに
あたまが上がらないのである。
ばあちゃんが目を細める。
「あの子らは、仲がいいねぇ」
さちこさんは
「あの子は、夏美が育てたようなもんやから…」
「そうやなあ、あん時は、あんたも大変やったものな」
二人が、沈黙すると
すぐそばの枝で、桜の花をついばんでいた小鳥がさえずり始めた。
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お花見を楽しんだ後、一行は国道沿いのカフェに向かった。
隣にある和菓子屋さんで 出来立ての温かいお団子を買って、カフェに入る。
カフェでは、和菓子持ち込みで 日本茶のティータイムを楽しめるのだった。
海が見える窓辺の席に落ち着いた四人に、さっそくお茶が運ばれてきた。
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つるんとした食感で まだあんこが熱いお団子を、はふはふしながら頬張る。
やっぱり団子は出来立てが一番おいしい。
三つ目が欲しそうな大吾君に、清ばあちゃんが笑ってうなづいた。
お団子はまだたっぷりある。
窓の外に広がる砂浜を、凧揚げの少年が駆けてゆき
追いかける女の子たちの賑やかな声が響く。
海は穏やかで、小さな白波が連なり
はるか水平線で空と溶けあって、どこまでも青い世界が広がっていた。
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