🍎偏差値45の教員。先生になる

チャイムが鳴る。3分前には、生徒は教室に入り自分の席に座るように徹底的に指導されている。

最初の国語の授業は、授業の説明をして、ワークやファイル等を配布する。
そして、丁寧に成績の付け方も説明をした。上谷先生に「定期テストで友達と同じ点数なのに評定が違うのはなぜか、みたいな問い合わせが多いから気をつけて。」と、釘を刺されていたからだ。
成績をつけたことがないのに、成績の説明をしたせいで説明しながら自分でもわからなくなった。

途中あまりにも白けてしまったため、私に対する質問コーナーを作ってみた。

「彼氏いるんですか。」
「5人ぐらいいます。」
「何で先生になったんですか。」
「ある朝、寝て起きたら先生になっていました。」
「学生時代何部でしたか。」
「帰宅部でした。」
「何歳ですか。」
「１８歳です」

男子の、全然本当のこと言わねーじゃん！の声にクスクス笑いがおきる。最後に振り返りで生徒に授業の感想を書かせて授業が終わりになる。

笑いもあって良かったのではないか、と、思っていたら授業後に授業を見学していた上谷先生に呼ばれた。
「耳が痛くなること言うけどね、」の枕詞がすでに痛い。
「生徒に媚びすぎ。友達みたいな教員になってはだめだよ。大事な説明はきちんとしなさい。」
と言われた。正論すぎる言葉に普通にへこんだ。ぐうの音も出ない。
「わかりました。ありがとうございます。」
と、言い職員室の自分の席に戻ろうとした。
「あと」と、続いて体がビクついた。
「授業中に話すぎ。先生が１時間の中で話すのは15分ぐらいと思っとくといいよ。」
と教わった。

授業は先生がつまらない話をベラベラするものだろ、と思っていたが今は学び合いの生徒が主体的な活動をするのが主流らしい。
教育現場も日々進化しているようだ。

外から見たら何も変わらない世界なのに、内にいると少しずつの変化に敏感になる。授業だけではなく、生徒もだ。目まぐるしく変わる世界に着いていくだけで精一杯だ。

その日の帰り下校指導をしていたら、生徒から
「ギャル先やん。」と、次々に言われた。早速、私にあだ名がつけられたようだ。「化粧が濃いからギャル先。」とのことだ。ケラケラ笑って、何だこいつら。

その日の授業の振り返りに、
「これから国語の授業が楽しみです。」と書かれていた。それを見て、何とか今日も生き延びられた。