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🍎偏差値45の教員。先生になる
12時に部活が終え、職員室に戻ると眠気で頭がグワングワンして、耳奥では甲高い音が聞こえてきた。すこしでも瞼を閉じると意識を失いそうになる。
部活を終えた先生達が次々と職員室に戻ってくる。土曜日の部活終わり、何をすれば良いかがわからず様子を伺う。先生達が汗を拭きながら、おもむろにカバンからコンビニのおにぎりを取り出して職員室でむさぼり始めた。
うわ。まじか。この人達。普通ではない。土曜日のボランティアに参加して、昼ごはんを食べてまだ仕事をする気だ。もちろん無給でだ。このまま職員室にいないといけないのかな。しかし、私は限界をとうに迎えていた。周りの先生達の目が気になるが帰宅をすることにした。バレないようにか細い声で「お先失礼します。」とだけ言って。
何とか、家までたどり着くと空腹と眠気で吐き気に襲われた。時間を待たずにカップラーメンを胃に流しこみ、ソファで横になる。この生活が最低でも1年間。絶対に体を壊す。目を閉じると自然に涙が溢れてきた。いつか青井先生がファミレスで言っていたことを思い出した。職員室の中をみわたすと、病気休暇明けの先生や離婚している先生、子供が全員不登校の先生が多いと言っていた。
仕事のために自分を犠牲にする先生が多すぎるのだ。しかも、それを美徳だと言わんばかりの職員室の雰囲気にゆとり世代の私は馴染むことができない。今のままだと就職活動は、できるはずもない。ソファの上で声を出さずに泣き、そのまま寝落ちした。
目を覚ますと、もう日も落ち、辺りはすっかり暗くなっていた。両親もデパートから帰宅したようだった。携帯を開くと1時間前に地元の友達から夕飯の誘いのラインが来ていた。集合場所は、地元の馴染み深い創作料理が有名な居酒屋だった。家からすぐの場所だ。母親に行ってくる、と、伝え化粧もせず、髪の毛もボサボサのまま私は居酒屋に向かった。店主とも昔から仲が良く、もうかれこれ7年の付き合いになる。久しぶりの全員再会に足取りも軽くなる。
赤提灯が灯されている居酒屋に着くと、すでに梨花や美玲が店主と一緒に飲んでいた。もう三杯目ぐらいのようで、テーブルの上には空のジョッキが置かれていた。私もすぐにビールを流し込み、体にエンジンをかけ、少し冷めている揚げ出し豆腐を手に取った。今日はとことん楽しもうと、冷えた塩トマトに誓う。