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☆「俺たちの箱根駅伝」(池井戸潤)リアル感と爽やかな読後感。 やっぱり駅伝はすごい、池井戸潤はすごい!
1 はじめに ~2024年10月 19日(土)に行われた 現実世界の「箱根駅伝予選会」について~
本の話の前に、現実世界の話を。
今年も箱根の「予選会」が行われた。テレビ中継で予選会を見た。本戦でシードに入れなかったチームは、この予選会で10位以内に入らなければ、翌年年始におこなわれる「箱根駅伝」に出場できない。レースはハーフマラソンの距離で、各校14人のエントリーから12人が走る。上位10人の合計タイムで順位が決まる。
今年もドラマがいくつもあった。だから駅伝は面白い。
立教は今年予選会をトップで通過した。去年、予選会前に監督が解任される一件があり、選手は大変だったと思う。新監督のもと着実に力をつけ、それを発揮した。そういう姿を見るのは嬉しい。
その一方で、例年にない暑さの悪条件下のレースだったために、脱水症状で棄権する選手が出るなど、ランナーたちにとっては過酷だった。東海大は順当にいけば予選会を通ると思われたが、チームで8番目にゴール近くまで来た選手があと数メートルというところまで倒れながら来たところで、レースを続けるのは危険と判断され棄権となった。彼にとっては、ゴールまでのわずかな距離が果てしなく遠かった。彼は今年1月の本戦で、最終区を走ってシードを逃し、悔しい思いをした選手だった。今回、残念ながらチームは本戦出場を逃したが、来年に向けてぜひ頑張ってほしいと心から願っている。
東京農大は予選会11位で惜しくも本戦を逃したが、10位との差は、僅かに1秒だった。たった1秒が明暗を分ける厳しい世界。熾烈な予選会を勝ち抜いたチームがシード校とともに競う、来年1月2日、3日の箱根駅伝が今から楽しみだ。
そして、予選会にはもう一つの選抜がある。それは、本戦を逃した大学から、学生連合チームのメンバーが選ばれることだ。「俺たちの箱根駅伝」には、この学生連合のことが、実にドラマティックに描かれている。
「関東学生連合チーム」というのは、単独校として箱根駅伝に出場を果たせなかった大学の選手で編成される選抜チームのこと。実は、2023年、2024年の過去2大会は、学生連合が編成されなかった。2025年1月の第101回箱根駅伝では、2年ぶりに関東学生連合が編成され、オープン参加することが決まっている。(第102回大会以降の編成については未定) もしかしたら「俺たちの箱根駅伝」の影響で、学生連合チームへの注目度はグッと上がるのではないかと密かに期待している。個人的には、学生連合チームが今後も継続されることを強く希望している。過去に連合チームで箱根を走った選手の中に、川内優輝や、パリ五輪マラソン代表の小山直城ら、その後も大きな活躍をしている選手がいる。 チームとしては箱根に届かなかった大学の選手にも、箱根を走れるチャンスがあってもいいのではないだろうか。
前置きが長くなりました。 (駅伝となると、つい熱くなる癖が、、、失礼しました)
2 「俺たちの箱根駅伝」(上)
古豪、明誠学院大学陸上競技部が舞台になっている。この大学は本戦出場を2年連続で逃している。主将の青葉隼斗はじめ選手たちは予選会で… はたして本戦への出場は成るのか?
各大学の監督たちの個性や考え方がぶつかるシーンもリアリティーを感じさせる。
一方で、箱根駅伝の中継を担う「大日テレビ」スポーツ局の人間模様、苦悩と奮闘も描かれる。
リアルに描かれているので、読みながら、映像を見ているような錯覚に陥る。細かいところまで実によく描かれている。テレビ局の人間たちも、それぞれの立場や人間性がリアルに描かれ、面白い。
現実世界の箱根駅伝そのものが、まさにドラマなので、それを小説として描くことは、難易度が高いのではないかと思ってしまう。現実を上回る感動の物語をつくりあげるのは並大抵のことではないだろう。作品の中には実在の大学名も出てくれば、架空の大学名も出て来るし、監督名も一部は実名を使っている。そんなところもリアルを感じさせる理由のひとつになっているのだろうか。著者は巧みに読者をリアルなフィクションの世界に引き込む。私も、すっかり引き込まれてしまったひとりだ。
3 「俺たちの箱根駅伝」(下)
大学駅伝ランナーたちの1番の晴れ舞台、箱根駅伝は、1月2日に始まる。寒い中、沿道に応援に行く人たちも多いが、家のテレビやネット中継で観戦する全国の駅伝ファンはいったいどのくらいいるのだろうか。お正月の風物詩と言える熱い戦いだ。青春とプライドと母校の誇りをかけた競い合いは見る者を惹きつけて離さない。毎年、いくつものドラマが生まれる。
「俺たちの箱根駅伝」の物語の中には、選手、監督、選手の家族の苦悩と喜び、それとともに中継を担うテレビ局のスタッフたちの駅伝中継にかける思いが描かれている。監督の甲斐、明誠学院大学の主将青葉隼斗、そして隼斗とともに闘う仲間たち。活字を読んでいるのに、同時に映像を見ている自分がいる、不思議な感覚だった。選手たちを思い切り応援している自分がいた。登場人物たちの駅伝にかける思いが熱く伝わって来た。
読み終えて、とても爽やかだった。そして心が熱くなった。駅伝というのは、やはりすごい力を持っている。駅伝てやっぱりいいな、としみじみ思いながら、奇しくも現実世界の予選会の日に、下巻を読み終わった。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました☺️
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