
「創舎わちがい」の和デザート「水ゼリー」は、清らかな水が奏でる極上のハーモニー

1 水の恵み〜清く尊い水ゼリー〜
私たち母娘が通されたのは、趣のある落ち着いた部屋の窓から庭越しに通りが見える席だった。
「水ゼリーでございます」
お盆にのせられた「水ゼリー」は、持ち手のついたカップに入って、透明なゼリーから、その下のピンク色が透けて見える。ゼリーの上には、ブルーベリーがふた粒。清らかなゼリーにしばし見惚れた。
「ゼリーは甘みは加えずに水だけで作っております。その下は、果肉までピンク色をした特別なりんごで作りましたコンポートでございます。ここのお水は「男清水」と申しまして、北アルプス白沢の湧水で、とてもおいしいお水です。通りを隔てた向こう側は「女清水」と言われ、東山の湧水になります。お水のゼリーと甘酸っぱいコンポートを混ぜながらお召し上がりください」
女将の説明を聞き、目の前の水ゼリーの奥深さを知ることができた。
「ごゆっくりどうぞ」
女将がそう言って戻ったあと、まず、娘がゼリーをひと口食べ、感動の声をあげた。
「水だけなのに甘みがある。おいしい」
私もゼリーをひときれ口に入れてみた。ほのかな甘みを感じた。でも、たしかに水だけの味だ。ゼリーは軟らかすぎず、ちょうどよい硬さで、食感とのど越しが絶妙。りんごのコンポートはきれいなピンク色をしていて、甘みと酸味のバランスが良い。水ゼリーとコンポートのバランスも申し分ない。そしてブルーベリー2粒が見た目のアクセントになっている。
「おいしい」
私も思わず声が出た。ひと口ひと口を大切に味わいながら、極上の水ゼリーをいただいた。

2 琥珀糖はもうひとつのお楽しみ

ひとり分の「水ゼリー」を、お菓子付きで注文した。添えられたお菓子は「琥珀糖」。水ゼリーを食べ終えた後、二人で仲良くひとつづついただく。琥珀糖は見た目もかわいく、水ゼリーと一緒にお盆にのっている姿は見ているだけで心が清らかになるようだった。味、食感とも期待通りで、水ゼリーを食べ終えたあとの、もうひとつのお楽しみだった。
この琥珀糖は、6個入りで売っていたので、帰りがけに思わず買ってしまった。「北アの雫」と名前がついていて、地元の菓子司の製造。透き通った水色、白、無色の琥珀糖が2個ずつ計六個お花のような形に並べられ、包まれている。

3 ゆったりと時が流れる「創舎わちがい」
ゆったりと時が流れる非日常の空間、歴史を感じさせる建物。町の中心地にありながら、ゆっくりと過ごしたくなる雰囲気。接客も、とても感じがいい。
私たちが入ったのは11時ごろだったが、昼食時間の予約は満席とのこと。奥の席には、食事前のセッティングが既にすまされ、私たちが帰るころには外国人のお客様が来られていた。間違いなく外国からのお客さんにも喜ばれるお店だと思う。
わちがいについて
「わちがい」とは、室町時代から長野県大町市の中心地に佇む「栗林家」の屋号。代々この地に大庄屋を務めたこの屋敷は、明治時代からの造りをそのまま残し、現在では地元に伝わる郷土料理をお楽しみいただる「創舎わちがい」として時を刻み続けております。
輪が連なる「わちがい」の屋号のように、訪れた方との出会いの輪が繋がる願いを込め安らぎの空間としてよみがえりました。
雰囲気の違うそれぞれの客室は全てお庭と面し、喧噪を忘れさせてくれる静かでゆっくりとした時の流れを感じます。
http://www.wachigai.com/
「わちがい」の通常営業時間は、10:00~16:00(LO15:30) 終日予約制(電話による予約)
私たちは予約なしで行ったが、昼食の予約時間まで時間があるからということで入ることができた。
「北アルプス国際芸術祭」に行き、信濃大町駅周辺の作品を見たあとに寄った。芸術作品も素晴らしかったが、ここの水ゼリーも、芸術作品のひとつのようだった。
4 「女清水」と「男清水」の物語
大町には「水」にまつわる話があり、名づけて「女清水と男清水」の物語といいます。
「昔のこと、町の中央を南北に割って走る通りの東西で、人々の飲む水が違っていて、東側は東山の居谷里という池の湧水を、西側は北アルプス白沢の湧水を使っていました。ところが東の集落では女の子ばかりが、また、西の集落では男の子ばかりが生まれてくるのです。いつしか人々は、居谷里の水を女清水(おんなみず)、白沢の水を男清水(おとこみず)と呼ぶようになったといいます。
困った人々は町の真ん中に川を作り、両方の水をひとつに合わせ流すことにしたのだそうです。それからは、更においしくなった水の流れる川の両側で、人々は幸せに暮らすようになったとのことです。めでたし、めでたし。」
https://www.city.omachi.nagano.jp/index.html?d=202410
おいしい水を飲んでもらうための「水飲み場」は「創舎わちがい」の中庭、道を隔てて向かいにある塩入家具店さん前をはじめとして、街の9か所に設けられている。
「水ゼリー」はおいしい水があってこその極上和スイーツ。大町においしい水があってよかった。この街で、素敵な和スイーツに出逢えてよかった。
いいなと思ったら応援しよう!
