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【連載小説】百日草 ②

とある個人病院に到着した留美と理恵。
そしてその叔母の春子達は足どり重く母親明子の入院している病室に入った。

そこには点滴の管等、医療機器を全て取りはずされ、息をしていない母が横たわっていた。手の先から足の先まで全身にわたって多数の注射の痕が痛々しい。

留美は母親の枕元に近づいて、

「母ちゃん」

とひとこと言って 明子の右手を握った。その手には血が通っていなかった。

次女の理恵も母親の枕元に近づき、その途端に大声で泣きだした。

「母ちゃん 母ちゃん 母ちゃん・・・」

理恵の方が留美よりひとつ幼い分 素直だった。
留美は理恵の手をとって

「理恵、泣いたらだめ!しっかりして」

と お姉さんぶった。

留美の背後にはたくさんの親戚たちが集まっていた。皆、ハンカチで静かに涙を拭っている。

そこには 父親の 武夫のすがたがない。
留美は武夫を探しに廊下に出た。

病院の薄暗い廊下では知らない女性が一人すすり泣いていた。白衣を着たおそらく若い看護婦であろう。



※ このお話は実話をもとにしていますが、作者 鈴蘭の記憶がうすい分 創っているところが多々あります。













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