【連載小説】百日草 ①
「お母ちゃん死んだよ」
叔母(母親の妹)が 旦那さんの運転する車の助手席から後ろを振り返って言った。
その目は泣きはらしたあとのように真っ赤だった。
時は昭和。
蝉の鳴き声が涼しく感じる真夏の朝の車のなかの光景だ。
後部座席に座ってはしゃいでいたふたりの姉妹、留美と理恵はまだ小学校低学年。
叔母の放った言葉の意味を長女の留美はなんとなく理解した。
理恵はどうだろう。
姉妹ははしゃぐのをやめた。
車は個人病院の駐車場へと静かに向かっていた。
※このお話は事実をもとに小説風に少しずつ創作していきます。
医療、医療ミス等に興味のない方はスルーしたほうが良いかもしれません。
楽しい内容ではないですので。
今や 医療ミスの訴訟、損害賠償等は当然のこととして扱われている時代。
しかし昭和の時代はまだまだ今のようにひらけてはいませんでした。