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20.言葉の奥にあるもの

これまで縦なり横なりいくつかの教内報の編集に携わってきた経緯があり、また、いずれのどの誌面でも私がコラムを担当していたこともあって、それに目を触れた方々から時々お褒めの言葉を賜ることがあった。

「ピーナッツ君は本当に文章がうまいよね」
「文才あるよね」
「いつもいいこと書くよね」

…と。

褒めていただくことそのものは別に悪い気はしない。
だけど、ただ闇雲に“文章がうまい”という安直な表現をされると、正直そこに複雑な感情が芽生えてくる。
 

どういった媒体にせよ、またいかなる姿勢であったにせよ、そこに何らかのこだわりがあって言葉を紡がれている方々ならきっとおわかりいただけるのではないかと思う。

うまい文章を書こうだなんて、そもそも別になにも思ってなどいない。

ということを。

込み上げて来る様々な思いを文字におこして表現し、文章という形にして書き連ねることがこどもの頃から好きだったこともあって、半ば趣味的にそういった営みを積み重ねてきた。だから随想することに何の苦痛もなく、むしろ定期的に内側で渦巻いている思念をアウトプットする機会を得ていたことが、精神衛生上の健全さを維持するサイクルをいただいていたような気さえしている。

私は日々、常々、視界にうつるあらゆる物事を観測しては思索し続けてきた。きこえてくる何事かをキャッチしては、様々な仮説を打ち立て、自分自身の中でそれを思考し、納得のいく答えに辿り着かんと絶えず試み続けてきた。

そういった無数の思念に、それに的確であろう“言葉”を与えようと、そうやって真理に一歩でも近づこうと螺旋階段を昇り降りするが如く深く深く掘り下げ、自身の感情を、そしてあらゆる現象を見つめてきた。


文章における表現とは、それらの絶え間ない営みのひとつひとつを飾った、いわば衣装のようなもので、表現したいことの核心はよりその奥にある、言葉にし得ない、スピリチュアルな何かなのだと私自身は感じている。


だから「文章がうまい」という褒め方は、仮にたとえるなら、
真理を極めんと日夜苦行に勤しむ求道者・修行者に対し、
「あなたの僧衣はとてもセンスが良いね」
という、ただ上辺の衣装だけを見て高く評価しているという、どこか的外れな物言いだと感じざる得ないのだ。

本当のところ、受け取ってもらいたいのは、
言葉そのものではなく、言葉の奥にあるものだ。
アンテナを張って受信して欲しいのはそういう衣装をはぎ取り、裸の、もっと更に奥深くの、魂に根差したものなのだ。


多くの教会長さん、婦人さん、布教所長さん、ようぼくさんなどに原稿を依頼し、携わっている会報誌面に掲載することも繰り返してきた。時には青年会層・女子青年層という若い方にも原稿をお願いしたこともあった。
味わい深い文章を書かれる方がいて、またあまりそうでない方も少なくはなかった。

そうやって気づかされてきたことがある。
後者の方々にはある一定の共通するものが見られた。

それは、文章を上手に書くことが苦手なので、下手に書かないようにお道の教え通りセオリーな、金太郎あめのようにどこから切っても同じものが出て来る書いているその人そのものの個性がまるで見えない、そういうのっぺりとした原稿になりがちだということだった。おかしなこと、間違っているかもしれないことを書かないように気をつけ過ぎると、その文章そのものにさほど意味のない、つまらない内容になってしまいがちなようなのだ。

反対に、書いている方の人間味があらわれている原稿は、表現の上手下手に何ら気をとられることなく、味わい深さがにじみ出て、読後に余韻が感じられることが多々あった。これがベテランの先生方よりも、かえって若い方や、信仰歴の浅い方に割に見られる傾向で、そう考えると、役職や肩書をもったり、年齢を重ねるということが、結果的にその人の心に大なり小なりの鎧をまとわせてしまうことに繋がってしまうんだなという印象が残った。


“文章を書く”というテーマであれこれ好き勝手言及してしまったが、要は、私達信仰を胸に抱いて日々を暮らす者にとって、うわべの着飾りだとか、まとまりの良いきれい事、見栄えの良さよりも、むしろその奥にある“その人そのものの芯からくるあたたかさ”だとか、“魂に結びついた本心”、あるいは“無垢”“純真”…そういった中身の方が大切な気がするし、誰か(親なら子、教会長さんなら信者さん)に伝わっていくことってそういうところから発しているもののような気がするわけなんです。ハイ。

間違っても、“間違わないように”なんてことを念頭において行動したくはない。それこそ、結果的に間違いに繋がりやすい気がするもので。

あと、上記の大切であろう中身に“素直”ってワードがお仲間入りする気が全くしないのは、一体全体どうしてなんでしょう…(。´・ω・)?(。´・ω・)?


“ザ・駄文”にここまでお付き合いくださりありがとうございました!
それではまた(^O^)

【2024.6.22】


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