『1日集中! 速読力トレーニング』(06)眼先で読むのではなく、身体全体で読む
速読の一般的なイメージとしては、「眼の動きのトレーニングを行う」というものがあります。しかし、身体の姿勢、フォームが悪ければ、いくら眼の動きを改善しようとしても無理があります。良いフォームで、読書を行ったならば、それ自体が速く読むトレーニングとなり、より良い眼の状態を作っていくことになります。
「良い眼の状態を掴む」 (最終的に目指すこと)
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「頭を動かさないようにする」
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「背筋を伸ばし、上半身を固定させる」
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「足を前に出し、下半身を安定した状態にする」
速読というものが、「良い眼の状態を掴む」ことが大切であることに異を唱えるわけではありません。問題は、そのために、何をどのように行えばいいか、ということです。
読書フォームを、軽いものだと考えるか、速読の本質がここにあると考えるか。どのように考えるかで違ってくる話です。
本を読むという行為は、眼だけで行われるものではなく、身体全体で行われるものなのです。
・フォームの例① 書見台の存在
書見台という本を読むツールのあることをご存知でしょうか? 意外と知らない人もいたりします。ブックスタンドとも呼ばれます。数多くの書見台が存在し、愛用者は多くいるのです。書見台が有効だというポイントがあります。「活字がブレることなく良く見えるようになる」「視野が広くなる」「頭が下がらなくなり肩が凝らなくなった」「疲れなくった」などです。どうして書見台が読書に有効なツールと言えるかは、実際に「最適な読書フォーム」を取っていただければ、すぐにわかります。書見台の本を読もうとするならば、このフォームになるからです。
書見台という存在は、今の時代だけではありません。テレビなどを見ていると、時代劇の中に書見台が登場します。江戸時代の武士が本を読んでいる場面を想像してみてください。今の時代のような椅子はありませんから、本を読む場合、まずは正座をします。正座をすれば、当然のように背筋は伸び、頭が真っ直ぐになります。書見台は、ちょうど読みやすい位置にあるのではないでしょうか。
昔話をもうひとつすると、戦前の学校教育において、小学生の本を読む姿勢というものも、厳しいものがあったようです。当然のように背筋を伸ばし頭が真っ直ぐです。両手で本を前に出し、理想的な読書フォームで本を読んでいました。
周りの人がどのようなフォームで本を読んでいるか、ぜひ、見てください。本を速く読むにはフォームが大切です。しかし、フォームに対し全くといっていいほど意識が向けられていないのが現実なのです。
・フォームの例② 自動車を運転するフォーム
フォームというものは、特別なものではありません。何にでも共通するものです。
身近なもので、自動車を運転するフォームというものを考えてみてください。「良い運転フォーム」と「良くない運転フォーム」というものがあります。警察関係の資料などでも、イラストなどを使って、その違いが説明されていたりします。
「良い運転フォーム」のポイントは、シートに背中を預けるような感じです。ゆったりと上半身が安定しています。身体とハンドルと距離も、適度な感覚に保たれ、余裕のようなものがあったりします。
では、「良くない運転フォーム」とはどんな状態か。運転に慣れていない人の場合、どうしても身体が前に倒れてしまいます。前を良く見よう、という焦りからか、シートから背中が離れてしまうこともあります。身体が前に出ることで、逆に視野は狭くなってしまいます。ドアミラー、バックミラーなど、確実に見え難くなります。余裕が無くなれば、判断力というものも、鈍ってしまいます。
最適な読書フォームというものは、良い運転フォームと、ほぼ同じようなものだと考えてください。
・フォームの例③ スポーツでのフォームの重要性
自動車の運転フォームだけでなく、スポーツでも同じです。野球、バレー、バスケット、特に球技では、身体の真ん中で受ける、というのが基本になるでしょう。上体を起こす、左右対称も、スポーツで汗を流した人であれば、身体で感じていることです。良いフォームを追求していくことが、そのスポーツを極めていくことでもあります。
ゴルフ、テニス、スキーなどでも、自分のフォームをビデオでチェックする、ということを練習として行っているかもしれません。
テレビのスポーツニュースでは、プロ野球選手の好不調がじっくりと解説されることがあります。それは、ほんの僅かなフォームの違いだったりします。メジャーリーグでは、日本と違うマウンドでの足の位置の違いが問題となったりしていました。速く、コントロールされたボールを投げるには、下半身が重要だということは良く言われることです。
一流のプロと呼ばれる人ほど、最後には基本となるフォームの重要性を語っていることが多いように思われます。
スポーツだけでなく、他のことでも同じようです。例えば、良いデッサンを描くことはフォームと強く関係していると言われます。真っ直ぐな線を正確に引くには、真っ直ぐなフォームであることが必要なわけです。書道や算盤なども、フォームが重要です。「読み書き算盤」のように昔から物事の基本だと言われてきたことを、フォームという視点で考えてみると興味深いものがあります。