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思考することは無秩序に抗うこと

生命科学的思考(高橋祥子 著 News Picks社)を読んだ。

本書では、何故生命は死ぬのか、感情はどうして生まれるのか、情熱はどのようにして生まれるのか、どうすれば主体的に生きることができるのか、といった哲学的な問いに対して、生命科学的な見地から捉え直し、その答えのヒントを提示している。

内容は本質的で深いものだが、文章はとても分かり易く、すらすらと読むことができた。

本書を貫く中核的なメッセージは、

「生命原則を客観的に理解した上で、主観的に生きる」

ご自身が生命科学に関わる起業家として生きられているからこそ、「主観的」に生きるとはどういうことなのか、ということを恐らく徹底的に考え抜かれたのだと思う。

特に興味深かったのは、生命をはじめ世の中の物理現象というものは、全て

何もしないでいると無秩序の方向に向かう

という話だ。

スーパーで買ってきた肉も、放っておくとすぐに腐り始める。

我々人間は、それに対して、思考することで抗うことができる。

というのが高橋氏が本書で何度も訴えかけているメッセージだ。

生物学的には、思考するということはものすごくエネルギーを要する行為であるため、何もしないでいるということの方が効率的であるように見える。

しかし、何もしない、ということはエントロピーを増大させ、むしろ崩壊のスピードを速めてしまうのだそうだ。

思考するということは、この無秩序状態に抗うために、人間に与えられた貴重な財産であり、武器である。

とすれば、日々刻々と過ぎ去る時間の中で、いかに考えることができているか、動くことができているか、改めて見直してみる必要がありそうだ。

死に際になって、もう少し考えておけばよかった、と後悔したくないから。





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キダッチ
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