【対談vol. 4】期中管理で電気をつくる!~発電所の監視・制御~
こんにちは!「再エネのアセットマネジメント」noteで管理人を担当しているオリックス・リニューアブルエナジー・マネジメント(以下、OREM)です。
このnoteでは、さまざまな課題が露呈している太陽光発電事業の期中管理において、これまでトライ&エラーを積み重ねてきたOREMが発電量向上に資するノウハウを皆さまと共有し
環境ダメージを与えて開発したからこそ、最良の状態で活用し続けたい
エネルギー自給率の低い日本の電気を最適な期中管理で増やしていきたい
という想いで、再エネのアセットマネジメントにおける理想を普及啓発しています。
このnoteでの普及啓発と、最適な管理体制で自然と共存し、発電ロスを抑制する取り組みが、環境に優しいクリーンエネルギーの普及促進に寄与することが私たちの本望です。
↓ 期中管理の基本的な考え方については初回の記事を参照ください。
はじめに
まずはじめに、少しでも関心をお寄せいただいている方に、本記事を読み進めていただけるよう、専門用語を補足しますので参考にご覧ください。
監視・制御の必要性
再生可能エネルギーの増大に必要な太陽光電源を、持続可能なものにするためには、既設発電所の安定稼働は欠かせません。
そして期中管理においては、設備の保全(守り)と発電量の最大化(攻め)、そのどちらも長期運用に必要な要素です。
四季のある日本においては台風による影響や自然災害などによる突発的なトラブルは避けられないほか、設備の経年劣化や内部故障はつきものです。
例えば、停電などで発電設備が止まってしまった場合、発電量が低下し、発電事業主の売電収入にも影響を及ぼしますので、そういった事象を早期に察知し、対処する必要があります。
特に改正FIT法により、発電設備の適切な保守管理・メンテンスの実施が義務付けられて以降、発電設備の稼働状況をリアルタイムに把握、モニタリングするための遠隔監視システムが、保守管理の有効な手段として普及してきました。
そこで今回は、このように太陽光発電事業に欠かせない遠隔監視システム、モニタリングについて、オーナンバ株式会社をゲストにお迎えし「発電所の監視・制御」をテーマにお伺いしていきます。
OREM:オーナンバさまは、カーボンニュートラルの実現に寄与するあらゆるソリューションを提供されていますが、太陽光発電事業の監視・制御に関してどのようにお考えでしょうか?
オーナンバ:はい、太陽光発電所の発電状況は天候に大きく左右されるため、一定の出力を維持することは容易ではありません。そのため変動する発電状況下で、発電に影響する事象にいち早く気づき、対処できるかが重要なポイントとなります。
OREM:発電に影響する事象には、どのようなことがありますか?
オーナンバ:具体的には以下のような事象です。
<発電に支障する事象の一例>
・ 系統異常(停電など)
・ 発電設備の故障
・ 日射量、気温の影響
・ パネルにかかる影 (樹木・障害物・雑草など)
・ パネルの汚れ
・ PCSの出力低下
・ 電力会社の制御指令
オーナンバ:太陽光発電所の多くは郊外に設置され、発電事業主や保守を担う主任技術者の拠点から距離があるため、現地の状況をタイムリーに把握することは容易ではありません。
そのため、リアルタイムに状況を監視・制御できる遠隔監視システムが役立ちます。弊社においては、太陽光発電所向けの監視・制御システム「PVU-Finder 」がこの役割を担っています。
遠隔監視システムで分かること
OREM:どのような情報を把握しておくと良いのでしょうか?
オーナンバ:具体的には以下の項目を把握しておくことが望ましいです。
・気象情報(日射量・気温・パネル温度など)
・売電電力量
・変電設備の警報
・PCSの発電データ/警報
・太陽電池ストリングの発電データ
・ 電力会社からの制御指令
OREM:全国各地でメガソーラーのO&Mを受託しているOREMでも、クラウドを介した自社開発の遠隔監視システム「モニタリング・AIデータ解析ソフト」で、故障状況や想定発電量をリアルタイムに把握しています。
アラート発報機能を有しているので、トラブル要因に応じてエンジニアが現地に駆け付け、適切な処置を施せるため、ダウンタイムを短縮することができ、発電ロスを最小限に抑制しています。
異常の検出・分類方法
OREM:実際にオーナンバさまの遠隔監視システムではどのように異常を検出、分類しているのでしょうか?
オーナンバ:はい、今回は弊社の遠隔監視システムにおける、ストリング計測データを用いた「電流寄与指数法」による分析事例をご紹介します。
オーナンバ:接続箱に接続された各ストリングは、概ね共通の条件で動作するように設計されています。そのため、各ストリングの電流のバランスは、天候、すなわちその時の発電電流の大小には依存せず、一定となります。
この設計に基づいた手法「電流寄与指数法」で、ストリングの発電電流のバランス値から不具合ストリングを見つけ出しています。
理想のバランス値はすべてのストリングで一定となりますので、それを「1」となるように表現すると「1」という水平直線からのズレで、ストリングの不具合状況を見える化できるというわけです。
例えば、バランス値が2割を切る場合は、発電電流が正常なストリングより概ね2割減っている、ということになるので、経営的にどのような損失につながるかも容易に判断できるため、電流寄与指数法はエンジニアだけではなく、経営者にとっても見やすく、分かりやすい手法です。
また、樹木や雑草の影など外的要因で一時的にズレが生じていても、その時間帯を避け、適切なタイミングでその値(代表寄与指数)を評価すると、そのストリングが内的要因(すなわち電気的要因)で劣化しているか否かも類推できます。
さらに代表寄与指数の長期的な推移を分析することで、ストリングが劣化傾向にあるか否かまで判断することができます。
このように、電流寄与指数法によるストリング監視システムでは遠隔地から「どの時間に」「どのストリングが」「どのようになっているのか」「長期的にどのよう変化しているのか」を視認性良く表現でき、ストリングの現状良否を客観的に評価できるほか、長期的な傾向の分析にも活用可能です。
OREM:不具合が見える化されていて、わかりやすい評価方法ですね。一つ一つは小さな発電ロスでも、それを長期間残置したり、それらが積み重なってしまうと、大きな売電損失となるので、細かいものにも目を配って留意したいです。
オーナンバ:その通りです。特に1台あたりの発電容量が多い大型PCS(セントラルPCS)を導入されている場合、PCSだけではストリング単位の細かい発電量を検知することが難しいため、ストリング監視をおすすめしています。弊社ではストリング監視の後付けも承っておりますので、お気軽にお問合せください。
メンテナンスの効果検証
太陽光発電所の期中管理においては、経年劣化を見据えた計画的・予防的なメンテナンスが、劣化を最小限に抑制し、コストダウンや、発電量向上、設備の長寿命化、中長期的な収益の最大化につながっていきます。
O&Mにはいくつか手法がありますが、発電量の最大化に有効な手段のひとつが「パネル洗浄」です。パネルには、ホコリや落ち葉、鳥糞や虫の死骸など、さまざまな汚れが付着します。
こうしたパネルの汚れを残置してしまうと、受光面積の減少や劣化を招き、発電量の低下や、パネルの故障要因になりえます。また、最悪の場合はホットスポット(周囲のパネル温度と比べて異常に温度が高くなる箇所)の発生を誘発し、火災につながりかねません。
そのため、定期的な洗浄でパネルを綺麗に保つことが重要で、発電量の維持向上に有効な手段となりえます。
OREM:OREMでは洗浄前に発電所の状態を確認し、汚損の種類に適した洗浄液と、パネルの設置状態に合った洗浄方法を選定しています。また、使用する水は、カルキなど水垢の要因となりうるミネラル成分が含まれる水道水ではなく、濾過機で精製した純水を使用しています。
オーナンバ:こうしたメンテナンスの効果は、遠隔監視システムでも確認いただけます。こちらのグラフをご覧ください。
一部、PCSに接続されたパネルのデータにばらつきがあり、発電量の低下していたため、物理的な汚れが原因とみて該当のPCSに接続されているパネルの洗浄を実施しました。
オーナンバ:その結果、データのばらつきが小さくなり、発電量が回復しました。このように遠隔監視システムは、発電量のモニタリングのみならず、メンテナンスの効果検証ツールとしても活用いただけます。
出力制御への対応
そのほかにも、既設発電所の期中管理において、法令で定められた「出力抑制」にも遠隔監視システムが役立ちます。
OREM:電力会社からの出力制御要請に応じない発電事業主に対しては、ペナルティとして接続契約を解除される(電力会社に電気を買い取ってもらえない)可能性があると言われているので注意が必要ですよね。
オーナンバ:昨今は、再生可能エネルギーによる供給電力の増加に伴い、電力会社による出力制御の指令頻度は増加傾向にあります。出力抑制対応に手動などオフラインで運用されている発電事業主へは、手間のかからないオンライン制御をおすすめしています。
こちらのグラフをご覧ください。オンライン制御ではPCS出力制御機能で、発電所全体の出力を最適化できます。現地対応の手間を省けるほか、発電ロスを最小限に抑制する効果も見込めます。
オーナンバ:このように、同じ日射量で比較すると、1MWあたり年間数十万円以上の差が出ますので、ぜひ切り替えをご検討ください。(FIT価格によって金額は異なります。)
OREM:一目瞭然!遠隔地から自動で対応できるオンライン制御であれば、人的な負担や発電ロスまで軽減する、高効率な運用を実現できますね。
対談を終えて
太陽光発電事業はその特性上、以下の観点で対策が必要です。
発電所の長期安定稼働と発電量向上・クリーンエネルギーの普及には、データの監視・制御が必要不可欠であり「予知保全」の心構えが重要となることが分かりました。
コストの面だけを考えれば、発電事業者が自ら設備の保全、維持・管理、メンテナンス・制御まで対応することができれば、人的な費用は抑えられるかもしれませんが物理的に、技術的に難しい側面があるのが現実です。
そのため、発電量が低下する要因はさまざまですが、遠隔監視システムやメンテナスサービスを利用するなどし、データをリアルタイムに把握・制御する体制を構築することが、発電ロスや社会コストの低減につながっていきます。
必要に応じて、規模や稼働年月、状態に合わせて各種サービス等を比較検討し、各発電所に合った最適な管理体制を構築、運用できるといいですね。
おわりに
今回の記事はいかがだったでしょうか?今後も発電所の事業運営に役立つ話題をお届けし、再エネに携わる皆さまと共に、産業を盛り上げていければと思います!
次回はエンビジョンデジタルジャパン株式会社さまをゲストにお迎えする予定です。
お楽しみに!!!
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