わたしと映画館
映画が好きだ。
特に洋画アクション。暴力的で胸糞悪さもスカッとするような映画。
ホラーも好きだ。ざわざわと心が騒ぎ、首元に何かいるような映画。
恋愛映画は少し苦手。ちょっと気恥ずかしくて観るのに勇気がいる。
映画館も好きだ。
今から楽しみにしていた映画を大きなスクリーンで観れる。
映画の広告ならいくらでも楽しめる。
次に出る新作の映画の広告をみて、来月絶対観ようと心に決める。
そんな私の映画館一人デビューは成人してからだった。
田舎なので、映画館に出るにも車が必要だし、電車でどこか一人で行くには行動力のない人間だったから(車を手にした今もだけど)初めて一人で映画を観たときは、映画とは別の緊張感があった。
一人デビューの前は家族とよく映画館に行っていた。
毎月、いや毎週に近いくらい。
両親が映画館に連れて行ってくれて、色んな映画を観た。
その映画館に行くたびに同じ施設のたこ焼きも食べた。
たこばやしのたこ焼きを2パック買って、それを4人で分けた。
そうして、たこ焼きを食べながら映画の感想を帰りの車の中で各々が言い合う。
「私はこう思った。」「お母さんはこう思った。」
一人で映画を観るようになってから思うのは、映画の感想を共有できない寂しさがあるということ。
同じものを見て受け取り方が違う、その人の興奮したシーン、横目に見えるびくっと体が震えたシーン、小さく聞こえた鼻をすすったあのシーン。
興奮冷めやらぬあの気持ちを誰かに伝えられないもどかしさがある。
家族の仲が割といいのは、同じものをたくさん共有したからかもしれない。
たくさん共有させてくれたからかもしれない。
歳を取り、今はもう家族揃って映画館にはいかなくなった。
母は暗くなると自動的に眠くなってきてしまい、父もヘルニア悪化で長時間同じ姿勢がきつくなってきた。
あの時、足繫く通った近場の映画館も取り壊された。
ふと思い出すのは、あの三半規管が揺れるエレベーター。所狭しと張られたポスター。赤い椅子、大きなスクリーン。
今思い返せば、あの映画館はそんなにきれいなものではなかったかもしれないけど。
代わりに、父が毎日のようにDVDをレンタルしてきては、それを一緒に観ている。
今後、私が私の人生を過ごしているうちは、きっと家族で通った映画館の記憶を忘れない。映画は、映画館は、私たち家族の大事な思い出なのだ。
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