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『脳はこうして学ぶ』 読書録#1

『脳はこうして学ぶ : 学習の神経科学と教育の未来』
森北出版 2021
スタニスラス・ドゥアンヌ 著
松浦俊輔 訳
中村仁洋 解説

注意、能動的な関与、誤りフィードバック、定着。
著者はこの4つの因子を学習の4本柱に位置づけます。

そこでは乳幼児に備わる優れた脳機能と教育者として大人が取るべき態度なども合わせて、なぜ今のところ人間はAIよりも効率的に深く学習できるのかを最新の研究を元に解説しています。

その他、新たな仮説ニューロンリサイクル仮説や記憶を定着させるにはどのくらいの時間間隔が必要かなど個人的に興味深い内容となっています。

また、測定技術の向上、応用などによって古典的な定説を覆すような記述も散見されます。

たとえば、現在放送中のドラマ『ミステリと言う勿れ』の第三話バスジャック事件で、
主人公がバスドライバーの犯行の手口を説明する際に「子どもは物が視界から消えたとき、存在自体がなくなったと思うことがある」と言っています。

これは有名な心理学者ピアジェの発達段階理論の「対象の永続性」の未獲得に依るものですが、どうやら本書によるとそうでもなさそうなのです。

本書にとってのピアジェのように本書もまたのちに研究者やAIによって覆されるかもしれません。

原著英語版タイトルの最後につけられるfor Now(今のところ)はそうした脳研究の底知れなさを表しているように思えます。

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