180日で外国語をマスターする方法
今回は言語学者のクリス・ロンズデールが心理学研究に基づく5つの幻想句を守り7つの実践を行うことでわずか半年で誰でも流暢に外国語を使えるようになる。という事を語った様子をまとめます。
How to learn any language in six months | Chris Lonsdale
何かの疑問をあまりにも長く抱き続けたために、自分の思考パターンや人格の一部のようになってしまった。
そんな経験はありませんか?
私は実に長い間ある疑問を抱いてきました。
「どうしたら学習をスピードアップできるか?」
興味深い疑問ではありませんか?
スピードアップできれば学校の時間を短縮できます。すごく早く学べたら多分学校に行かなくても済むでしょう。
子どもころ学校は嫌いではありませんでしたが「学校の勉強は邪魔だ」と思っていました。だから思ったんです「どうしたらもっと早く学べるんだろう?」
それもすごく小さなころからです。11歳の時ですが、ソ連の研究者に手紙を書いて睡眠学習について聞いたことがあります。これは枕元にテープレコーダーを置いて夜中眠っている間に再生することで眠りながら学習できるという話でした。
いい発想でしたがうまくはいきませんでした。でもそれが他分野の研究へと扉を開くことになり、あの疑問に始まる学習に関するすごい発見へとつながったのです。
私はそれ以来心理学に興味を持ち続け、今に至るまで様々な形で心理学にかかわってきました。
1981年に私は中国に行くことになり、その時決心したんです。
「2年以内に中国語でネイティブ並みになってやる!」
ここで1981年当時のことを考えてほしいんですが、中国語はとても難しく西洋人が習得するには10年以上かかり、しかも大してうまくなれないと考えられていました。
また私は独自のアイディアを持っていました。心理学で蓄積されてきた研究成果を語学学習プロセスに応用するという事です。
そうしたらたった半年で中国語を流ちょうに使えるようになりました。ネイティブ並みになるにはもう少し時間がかかりましたけど。
でも周りから見ると様々な国から来た人たちがみんな中国語を学ぶのにひどく苦労していました。中国の人たちもまた英語やその他の外国語を学ぶのにひどく苦労していました。
そこで私の疑問はより具体的なものになりました。
「どうすれば大人が外国語を早く・簡単に・効率的に習得する手助けができるか?」
これは今日の世界においてとても重要な課題です。環境問題や社会的混乱や紛争など。世界にはあらゆる問題があふれています。
もし互いに意思疎通できなかったらこうした問題の解決は困難でしょう。
だからお互いの言語を話せる必要があるんです。
これは非常に重要なことです。
でもどうすればできるのでしょうか?
その答えは簡単です。周りで既にできている人やうまくいっている状況を見つけて観察し、その原理を突き止めて実践すればいいんです。
この手法は「モデリング」と呼ばれていますが、私はこのモデリングによる言語学習について20年近く研究してきました。
そしてある結論にたどり着きました。
「どんな大人でも半年で外国語ペラペラになれる」
こういうと多くの人は思うでしょう「そんなわけないこいつ頭が変だ」と、
そこでひとつ私と一緒に人類の進歩の歴史を振り返ってみましょう。
それは限界を押し上げていく過程でした。1950年には1マイルを4分で走ることは不可能とされていました。
しかしロジャー・バニスターが1956年に達成しそれ以降タイムはさらに短縮されています。100年前重いものは空を飛べないと思われていましたが、そうではないことは今やだれもが知っています。
重いものがどうやって空を飛ぶのか、自然界から学んだ原理を使って再構築するんです。飛行機の場合「鳥」がお手本です。
そして現在ではさらに車も空を飛べるようになりました。20万ドルほどで空飛ぶ車を購入できます。今や車が空を飛ぶ時代なんです。
またムササビに習って空を飛ぶ方法もあります。ムササビの飛び方をまねればいいんです。ウィング・スーツを着ればムササビのように飛べます。
ところで皆とは言いませんが多くの人は自分が絵を描けないと思っています。しかし、絵を描くための5つの原則を実践すれば絵は5日間で描けるようになります。
誰でも5日間で絵が描けるようになります。
同様の方法、同様の理屈で外国語を誰でも半年で身につけられます。
その方法が
5つの原則と7つの実践
です。
他にもあるでしょうが、これが基本です。それを説明する前によくある2つの誤解を解いていこうと思います。
1つは才能が必要という誤解です。
ゾーイの話をしましょう。
オーストラリア出身のゾーイはオランダでオランダ語を学んでいましたが言語の習得にものすごく苦労していました。
周りの人も見限って「君には無理だよ」「才能がないんだ」「あきらめたら」「時間の無駄だよ」という始末でした。
彼女は落ち込みました。しかし、その後彼女はこの5つの原則に出会いブラジルに渡ってそれを実践しました。
すると半年でポルトガル語を習得できたんです。才能は関係ないんです。
もう1つの誤解は、外国語を習得するにはその国にいって外国語だけで暮らす必要があるというものです。
でも香港にいる西洋人をごらんなさい。10年住んでもいっこうに中国語が話せるようになりません。
アメリカにいるイギリス、オーストラリア、カナダに住んでいる中国人をごらんなさい。10年、20年住んでも英語が話せるようになりません。
環境に浸るだけではダメなんです。おぼれている人は泳ぎ方を学びはしません。外国語に関しては大人も赤ん坊と一緒です。
もし周りの大人が赤ん坊に対し、全然わからない難しい話ばかりしていたら言語の習得はできないでしょう。
それでは心掛けるべき5つの原則を説明しましょう。
第1の原則
第1の原則はこの4つの言葉
注意力・意味・関連性・記憶
この4つにはとても密接な関係があって学習において特に重要になります。森でハイキングしていると想像してください。
森の中を散策していると、こんなものを目にします。木にある小さなしるしのようなものです。
別に注意を払わないかもしれません。
もう50メートル進むと何か大きな足跡があります。
これには注意を払うべきでしょう。もし注意を払わずにさらに50メートル進むと
こうなると全力で注意を払うでしょう。
あの木にあった傷は恐ろしい熊を示すので自分にかかわり重要なものなんだと学ぶわけです。
どんな情報でも自分の生命にかかわるなら注意を払うでしょうし記憶にも残るのです。同様に自分の目標達成に役立つ情報なら注意を払うし、記憶にも残るのです。
これが外国語取得のための第1の原則です。
言語の自分にかかわる部分に集中すること。
これは次の原則である「道具」にも関連します。道具というのは使うことによって学ぶものであり必要な道具ほど早く覚えるものです。
第2の原則
1つ例を紹介しましょう。キーボードというのも一種の道具です。中国語の入力には特殊な方法があり、この道具の使い方を覚える必要があります。
だいぶ昔のことですが同僚がこれを学ぼうと、火曜と木曜の夜間学校で2時間ずつ、それに家でも練習していました。
しかし、9ヶ月が経っても中国語が打てるようになりませんでした。それがある夜ちょっとした問題があって48時間で中国語の研修マニュアルを完成させることになり、彼女にその仕事が託されたのです。
彼女はその48時間で中国語が打てるようになりました。関連と意味と重要性があったからです。彼女は価値を生み出すために道具を使ったのです。
というわけで外国語習得の第2の原則は、
その言語を最初から「コミュニケーションの道具」として使うことです。
第3の原則
子どもがするように、初めて中国に行ったとき私は中国語がまるでできませんでした。到着して2週目に夜行列車に乗ることになったんですが、食堂車で8時間にわたって警備員とおしゃべりました。
どういうわけか私に興味を持ったみたいです。一晩中中国語を話していたんですが、彼は絵をかいたり身振り手振りや顔の表情を使って伝えようとしていたので私は徐々にわかるようになりました。
その2週間後に素晴らしいことが起こりました。周りで中国語が話されていた時に部分的に理解できたのです。
中国語を学ぶ努力すらしていなかったのに、あの夜列車で中国語を吸収していたんです。
これが3番目の原則となります。
伝達内容を前もって理解していれば言語は無意識のうちに身に付く。
ということです。
このことに関しては多くの報告があります。「理解によるインプット」と呼ばれていて20~30年にわたり研究されています。
先駆者のスティーブン・クラッシェンは関連する様々な研究結果を発表していますがこの図もその1つです。
この棒グラフは様々な外国語テストの点数を表しています。
紫の棒は学校で文法中心に習ったグループの成績。
緑の棒は理解不能なインプットで学習したグループの成績です。
つまり実践的な理解が習得のカギになるという事です。外国語の学習というのは知識の蓄積とは違います。
多くの点で外国語学習は肉体的トレーニングに近いのです。
第4の原則
私の知っている台湾の女性は学校で英語の成績が優秀で常にAを取っていました。優秀な成績で台湾の大学を卒業しアメリカに渡りましたが彼女は周りの人の話す英語がまったくわかりませんでした。
ついては「耳が聞こえないの?」と聞かれるくらいでした。
彼女には英語が「聞こえなかった」のです。
私たちの頭の中にはフィルターがあってなじみのある音だけを通し、なじみのない音は通さないのです。
言葉が聞こえなければ理解もできず、理解できなければ学べもしません。音を聞き取れなければ始まらないのです。
聞き取れるようになる方法は肉体的トレーニングです。話すという行為は筋肉を使います。
顔には43もの筋肉があり、それらを連動させて使うことでほかの人が理解できる音声を作り出すのです。
新しいスポーツをやり始めて何日目かに体はどうなりますか?筋肉痛になりますよね?
外国語学習も同じで顔が痛くなるようでなきゃいけません。
第5の原則
そして最後の原則は外国語を学ぶときは心理状態が重要という事です。
もし悲しみ、怒り、不安などネガティブな感情があると学習はうまくいきません。
一方、楽しくリラックスし脳からアルファ波が出て好奇心を感じるなら言語を早く学べるでしょう。特に不完全なことに対する寛容が必要です。
100%理解しないと気が済まないというタイプなら外国語を聞くのは耐え難いものでしょう。
完璧に理解できないことに終始いら立つことになるからです。逆にわからなしことがあっても気にせず。
わからない部分に注意を傾けるならリラックスして速やかに学べるでしょう。
7つの実践法
次にこれら5つの原則に基づいた7つの実践法を説明します。
①たくさん聞く
1番目はたくさん聞くことです。私は「脳を浸せ」と言っていますが学習している外国語をとにかくたくさん聞くことになる環境を整えてください。理解できるかどうかは問題ではありません。言葉のリズムや繰り返されるパターン目立つ部分に耳を傾けるのです。その言語に脳を浸すんです。
②意味を知る
2番目の実践は言葉より先に意味を知ること。単語も分からずにどうやってか?人間のコミュニケーションの多くの部分は身振り手振りで行われます。ボディー・ランゲージから多くのことが分かります。理解不能なインプットによって理解しているのです。また既に知っているパターンを利用することもできます。もし標準中国語と広東語のできる人がベトナムに行ったならベトナム語日常会話の6割は理解できるでしょう。なぜならベトナム語の3割は標準中国語で3割は広東語だからです。
③単語を組み合わせること
3番目の実践は単語を組み合わせる事。考えたことないかもしれませんが動詞10個と名詞10個と形容詞10個だけで1000の異なる文章が作れるんです。言語を使うというのは創造的な行為です。赤ん坊の時はどうやって話しますか「ボク オフロ スグ」などと言います。そうやって意思伝達するんです。組み合わせ創造的になり楽しみましょう。完璧でなくとも伝わればいいんです。
④核の部分に集中すること
4番目の実践は核の部分に集中することです。頻繁に使われる部分を覚えるということです。英語の場合1000語で日常会話の85%をカバーできます。3000語あれば日常会話の98%をカバーできます。3000語知っていれば英語は話せるという事です。それ以外はおまけのようなものです。
⑤言い回しを覚えること
外国語を習い始めるときは「道具箱」から始め、1周目には学ぶ上で必要な言い回しを覚えてください。
「それはどういうんですか?」「わかりません」「もう一度言ってください」「どういう意味ですか?」
学ぶ言語で言えるようにし、それを役立つ道具として使ってそのほかのことを学んでいくんです。
2週目にはこんなことを言えるようになってください。
「わたし」「これ」「あれ」「あなた」「あげる」「あつい」
簡単な名詞、代名詞、動詞、形容詞を使って幼児のようにコミュニケーションするんです。
そして3,4週目には「つなぎ言葉」を練習します。
「だけど」「しかし」「だから」
文をつなげてより複雑な意味を表せるようにするものです。その時点で「話している」と言えるでしょう。
またこのとき「外国語の親」を見つけておいてください。子供と親のやり取りを見たことがあれば私の言う意味が分かるでしょう。
小さな子供が話すときは簡単な単語と簡単な単語の組み合わせで話します。文法や単語が変なこともあります。
家族以外の人には意味不明かもしれませんが親は理解します。
だから子供は安心できる環境で話し自信を持つことができます。親は身振り手振りを使い、子供にわかる優しい言葉で話します。
理解可能なインプットのある安心できる環境を手に入れるんです。この方法はうまくいきます。でなければ誰も母国語を身につけられないでしょう。
「外国語の親」となる人はあなた個人に関心があり、対等な立場で接しあなたが理解できるよう気を遣ってくれるような人です。
「外国語の親」の条件は4つあります。配偶者はあまり適格とは言えません。
その4つの条件とは
第1にあなたの言うことが全然変であっても理解しようと努力すること
第2にあなたの間違いを無理に訂正しないこと
第3にあなたが言ったことをどう理解したかフィードバックを返し、あなたが適切な受け答えや正しい言い方が分かるようにすること
第4にあなたにわかる単語を使うこと
⑥顔の動かし方を真似ること
筋肉を正しく動かす必要があります。その外国語の話者にわかる発音ができるようになります。ここで心掛けるのは、顔の動きに対する音を聞き聞いた音で顔の動きを直すということ。これで顔を使ったフィードバックループができます。ネイティブ話者を見る機会があったら顔の動きをよく観察してください。ルールというのは無意識が呼吸すれば自然に使えるようになります。もしネイティブが近くにいなければ教材を使うこともできます。
⑦直結
7番目の実践することは私が「直結」と呼んでいるものです。外国語学習者の多くがやるのは母国語の単語と外国語の単語を対応付けて記憶するまで何度も繰り返すという事で非常に非効率です。知っているものにはすべて心の中にイメージや感覚があることに気付いてください。例えば「火」について話すとき煙の臭いがしパチパチと音が聞こえ炎が見えるでしょう。つまりイメージやそれに関する記憶から入って別の経路から出るんです。「同じ箱 別の道」と私が呼ぶ所以です。この経路は時間をかけて形成されます。新しい音をもとからある自分の内部イメージに関連付けるのがだんだんうまくなっていきます。何度も繰り返すうちにこの作業に上達し無意識にできるようになります。
以上 外国語を習得するための5つの原則と7つの実践でした。
1つやるだけでも皆さんの外国語は上達するでしょう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?