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ピンクゴールドとピンク

「えいがさき」こと『映画 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 完結編 第1章』を観てきました。

『スクールアイドルGPX(グランプリ)』に参加した虹ヶ咲のみんな、映画でもみんなすてきだったんですけど、この映画ではランジュがほんとうに、よかった。

だからみんなえいがさきを見ようね。

今回はそんなことを書きます。

たどり着きたい世界を拓くランジュ

ランジュは最終的には『PHOENIX』という曲でスクールアイドルGPXのステージに立ちます。映画でそこにたどりつくまでの顛末はそれこそ映画を見ていただきたいわけですが、ランジュについていえば、その前日譚であるアニガサキを視ていると、ランジュの成長がさらに解像度高く見えてくるので、後追いでもいいので履修することをお勧めします。アニガサキを通して視ると1話30分×13話×2期=13時間、ランジュが登場する2期1話からを通して視るとその半分の6時間半がかかってしまいますので、2〜3日ほど見る時間が必要になってしまいますが。

あちこちで語られている通り、最初のころのランジュは人間関係の不器用さがゆえに空回りが目立ち、虹ヶ咲の他のメンバーとの関係もこじれてしまい、ランジュはいったん、自身の夢と友達を諦める寸前まで追い込まれてしまいます。

PHOENIXは英語で「不死鳥」を意味します。ランジュは明らかに自分をその不死鳥、つまり蘇る鳥としています。

「最初のころのランジュは人間関係の不器用さがゆえに空回りが目立ち」と書きましたが、物語で語られる以前からずっとそれに苦しんできたことをランジュは語っていますし、ランジュにとって虹ヶ咲は最後の望みだったことも語られています。

ランジュにとって、虹ヶ咲での挫折は死に等しく感じていたのでしょう。ですから、ランジュがもし虹ヶ咲にもいられなかったら、自身の夢と友達をあのまま諦めてしまっていたらランジュは、それが肉体的な意味なのか精神的な意味なのかは置いておくとしても、そのまま死んでいたのかもしれません。『PHOENIX』という題ひとつをとっても、それが伝わってくるように感じます。

一方で、虹ヶ咲のみんなもまた、その「世界」にはたどり着いていません。注目を浴びているとはいえ、まだスクールアイドルとしてのスタートラインに立ったかどうかというタイミングです。これからみんなで、たどり着きたい世界を拓いていく、ランジュにとってスクールアイドルGPXはそういう舞台でしたし、ランジュにとっては競い合うみんなの笑顔こそが見つけた奇跡そのもので、ランジュはそんな「みんな」を無限色の表現で歌っているのです。

それにしても。

ランジュが「みんな」を歌っている!

アニガサキのランジュの歌は『Eutopia』。最高を見せてあげる!という彼女の理想の世界を歌ったこの曲を聴き込んで、それから『PHOENIX』を聴くと。

何もかもが違う。

「私はここでみんなを感じて飛びたい」

と歌い上げるランジュを、「みんな」という語を口にするランジュを、アニガサキ2期1話を視たときに、誰か想像できたでしょうか?

この曲を聴いたときに思ったのは

「ランジュが『みんな』を歌っている!」

最高を目指すランジュの執念が消えたわけではないのです。

ランジュは、どこまでも飛んでいこうとしているからです。

ランジュは虹ヶ咲に出会って、望まぬ孤高から解放されました。そして、孤高ゆえに見えていた「最高」は、もはやなくなりました。それまでのランジュは、「最高」にたどりつかなければならず、みんなを魅了しなければならなかったともいえますが、虹ヶ咲のランジュは心奪われて、ただ高く、みんなを感じて、飛んでいくのです。

『PHOENIX』を歌うランジュは、『Eutopia』以上の力強さを見せつけながら、なんと、ステージの上でおどけて舌を出してウインクさえします。圧倒的な解放感。

『Eutopia』のころにはなかった圧倒的な解放感に満ち溢れて「みんな」を歌っているそのランジュが挑んでいる相手は、これはなんと、おそらくはただひとり、歩夢です。

歩夢を目指すランジュ

アニガサキの実質的な主人公は歩夢ですが、幼馴染のためにスクールアイドルをはじめた彼女は、彼女が見積もっている以上に多くの人がスクールアイドルである歩夢を見ていることに、イマイチ気づいていないところがあります。

ランジュは、そんな歩夢を目指す多くの人の代表でもあります。

ランジュがどれくらい歩夢を目指しているのかは、多くのところで語られています。少々ネタバレではあるのですが、アニガサキ2期1話で、ランジュは来日するなり、歩夢を見つけて、彼女めがけて駆け寄ります。また、これも少々ネタバレではあるのですが、映画では、ランジュがライバルとして歩夢を名指ししたことに、歩夢がとまどっていることが描かれています。

物語の中で、ランジュは一貫して圧倒的なパフォーマーとして描かれていますが、それに対して、歩夢は等身大の存在として描かれています。歩夢にしてみれば、ランジュのような圧倒的なパフォーマーが、なぜ自分を目指すのかが分からないのも無理はないのでしょう。

もちろん、ランジュが歩夢を目指し、歩夢に挑む理由は、映画の中でしっかり語られます。そして、映画ではランジュのステージと歩夢のステージが、対決として描かれます。

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歩夢がステージで披露したのは『Stellar Stream』(「恒星ストリーム」の意味)。

スクールアイドルGPXである以上、歩夢とランジュとは対決する関係にありますが、歩夢もランジュも、自分のことではなく、対決する相手も含めた自分たちのことを歌っています。

虹ヶ咲では、歩夢とランジュは最初と最後ですが、「最初」の歩夢が「最後」の歩夢を動かして、また、「最後」のランジュが「最初」の歩夢を動かす、そんなふうに、想いを贈り合う構造があることも、心を揺さぶります。ピンクをイメージカラーとする歩夢に、より輝く存在としてピンクゴールドをイメージカラーとするランジュが立ち、ピンクゴールドをイメージカラーとするランジュによって、ピンクをイメージカラーとする歩夢の色がより鮮やかになる。

虹ヶ咲はその名の通り「虹のような」作品世界が魅力なのですが、虹のように近くもあり遠くもあるそれぞれの色がお互いをより輝かせて「私たちの」虹を作っていく、そんなことをもまた、ランジュと歩夢は、この映画の中で表現しているのかもしれません。

ちなみに、今回は私の推しである果林はあまり出番がなく、多少は心穏やかに見られるのではないかと思っていたのですが、それは大間違いでした。公開日の9月6日に見に行って以来、暇を見つけては見に行っているのですが、人生で3回以上映画をリピートするのは、虹ヶ咲が初めてです。

で、果林はというと、ミニ色紙で無事回収できました。

『映画 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会 完結編 第1章』入場者プレゼントのミニ色紙朝香果林

第1章だけでも感情が溢れ出してしまいましたが、第2章が楽しみです。

みんなえいがさきを見ようね。