学都石川の才知 無料公開講座に参加 その3:コミュニケーションとプレゼンテーション
石川県の一般向け公開講座「学都石川の才知」。
公益社団法人・大学コンソーシアム石川の主催により、県内の大学・短大・高専の教授による広範な分野の講座が、2017年5月から8月の毎週土曜日午後にしいのき迎賓館3階セミナールームで開講していました。
そのうち4つの講座を、ちょっとした興味の赴くままアポなし飛び入りで受講したという話。
第3弾は【13.コミュニケーションとプレゼンテーション】について、講義で汲み取れた内容と、思ったこと感じたことを紹介します。
永遠の課題
コミュニケーション。そして、プレゼンテーション。
これはもうおそらく、永遠の課題。
不特定多数の人々を相手にする仕事を本業として経験したことが全くない、かつ、2年ほど前まではプライベートの人間関係をほとんど必要最小限にし続けてきた自分にとっては、特に、常日頃から心許なさを感じること。
昨今は、人との対話や交流そのものが苦にならなくなってきました。あるいは落語に少しずつ親しむようになったことで、伝えかたにもいろいろな注意や工夫を瞬間的に引き出す力が強まってきていることを感じるようになってきました。
とは言え、それはあくまでも見様見真似、聴き様聴き真似、言い様言い真似(モノは言い様で…そういうことではありませんね…汗)。感覚的、直感的なものでしかありません。
そんなところにこの講座。
専門家の話を気軽にうかがえる恰好の機会でした。
金城(きんじょう)大学短期大学部で副学長を勤めておられる、同大学ビジネス実務学科教授の岡野さんによる講義。この分野を専門にされておられるだけあって、非常に物腰柔らかく聴き取りやすく、かつ受講者側のワークを中心とした、楽しみながら体得することのできた、おもしろい講義でした。
コミュニケーションとは
ものすごく簡単に言ってしまえば、「刺激」と「反応」のやりとり。
言葉を交わすことで意思の疎通をするわけですが、「言葉の内容」だけではもちろんありません。同じ言葉であっても、抑揚とジェスチャーという「刺激」の出し方の違いで「反応」がプラスにもマイナスにもなります。
表情やしぐさや口調など、言葉以外の要素で伝わる要素が「非言語」で、それが伝わり合うことが「非言語コミュニケーション」。
「言語」と「非言語」。両者が一致していると、発されている内容も、発信している人のことも信用できるし、一致していないと、どこか引っかかって信用しきれないということになります。
「いいね!」「すごい!」「そうだね!」と言葉では言ってても、実際に言葉通りに同意なり共感なりを寄せているのか、本当のところは、その瞬間の表情や姿勢や態度が見えてないと、せめてそれに近い形で想像できてないと確信しきれないものです(だからSNS上のコミュニケーションは…閑話休題)。
相手の話を聴いて合間合間に相槌を打ちつつ、身体の姿勢が前寄りになっていれば、ああ興味を持って聴いてくれてるんだなと感じるし…
ふんぞり返られていたりしたら、自分の話がおもしろくないのかな?言い方が悪いのかな?と不安にもなるでしょうし…
あるいは、何シブシブ嫌そうに聴いてんだこの野郎!と憤ったりもするというものです。
このような、相手の反応によって、その先の自分へなんらかの作用が及ぶことを『互恵性(ごけいせい)』というそうです。
コミュニケーションの本質
「刺激」と「反応」のやりとりを繰り返していくと、自分と相手との間に相通じるものを感じて気心が知れていきますが、そうなればなるほど「人は異なる存在である」「人は自分とは異なる」ことを感じるようになっていく。
多くを共有したいと願う気持ちとは裏腹に、そのことがどんどん明るみになっていく…が、実は、そこのところが、人との違いを知ることこそが「コミュニケーション」である!
それを端的に示す適切な言葉は、日本語にはないそうです。日本にはもともとコミュニケーションを(少なくとも意識的に)する文化がなかったということになります。
他人と同じ気持ちになるのではなく、話せば話すほど
他者との差異がより微細にわかるようになること
それがコミュニケーションだ
- 哲学者・鷲田清一さんの言葉 -
きく・はなす の3つのテクニック
人間は元来「ほめるのがニガテ!」マイナスの表現や言葉が出やすいもの。それをきちんと認めて、見据えた上で、どのように「あたたかさ」を伝えるか。「刺激」と「反応」を自己表現するテクニックがあります。
相手に「きいている」ことをわかってもらうための表情と姿勢:
1. きもち(ほんの少しだけ)前傾の姿勢で
2. 相手にまっすぐ相対して
3. ときおり浅くうなずく
いちいち速く深くうなずくと、むしろ会話を中断したいメッセージになってしまいます...「あーはいはいはいはい!」ってヤツですね!
ここに、相手のペースにあわせる「ミラーリング(相手が言った言葉を繰り返す)」という動作を絡めることによって、相手の言葉や表現を受け止めていることを明に示せば、相手にとってはより安心感が深まります。
プレゼンテーションとは
相手にものごとを伝えるという点ではコミュニケーションと共通して
いますが、コミュニケーションとは違うのは、
「聞き手優位」であること
時間管理があること(時間内で語り切らなければダメ!)
というところです。
プレゼンテーションで気を配るところ
とにかく「時間」を意識します。
原稿1枚あたりにかかる時間、話す内容によって適切な時間、両方の側面を把握した上で、伝える内容や伝えかたを定めていく必要があります。
実際には、相手に伝えるためには「間」や「抑揚」によるゆらぎも生じますので、そこも踏まえて余裕をみておかなければ、時間内で語りきれなくなってしまいます。
時間的な目安は、1分あたり300文字。
まずは字数を意識するのが基本。
自己紹介は30秒(150文字)。祝辞のスピーチは3分(900文字)。
プレゼンテーションでその他気をつけるところ。結構細かいです。
結論を先へ持ってくる。
聴き手に印象を与えたいところ(インパクト)の「出だし」をしっかりと頭に入れておく。出だしさえしっかりしていれば、あとは大概なんとかなる。
話しているときは「ジグザグ」で。
視線や向きを全体へ均等に向ける。
質疑のときは「うなずき」を忘れずに。
首だけではなくて上半身全体で動くこと。
おわりに
わずか1時間の講義時間の中で、大半の時間が受講者のワークによって、体感することに主眼を置かれて進行しました。
これだけの時間で伝え切るには奥が深すぎるのでしょう。講師の岡野さんも伝え足りないご様子でしたし、受講しているこちらとしても、もう1時間ほどあってもよかったと思わせる講義でした。
ワークでは、受講者が2人ずつペアになって、各自のアウトプットを確認し合ったり交換し合ったりしました。
このときたまたまペアを組んだのは、もうすぐ80歳になるという女性のSさん。せいぜい還暦くらいにしか思えないほど表情も目つきも明るい印象で、発する言葉もはっきり溌剌としていました。最終日に開催される予定のある講義の受講も楽しみとおっしゃっておられて、学び感じ取る気持ちや好奇心がとても旺盛であることを感じました。このような方とペアとなって触れ合えたこともとても幸運でした。
若々しさの源は、なによりも「学ぶ姿勢」なのだなあということも、そのときにひしひしと感じたものでした。
そして、講師の岡野さんが最後におっしゃっていたこと
他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる
→自分の刺激を変えることで世界を変える
ここで言う「世界」とは、自分の「眼前」であるとか「道」「未来」というほどの意味であると思いますが、このような認識もまた人の生きていく原動力になるのでしょうし、そのために必要不可欠である他者との「コミュニケーション」の原点でもあるのでしょう。
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