先生、マインドフルネスのやり方は、これであっていますか?
この前の診察室での、
患者さんからの質問を、シェアさせていただくことにします。
「そう、このまえ先生に教えてもらった、
マインドフルネス、調べてみました」
「思考を観察して、呼吸に戻って、こんなふうにやってみました」
「このやり方で、あっていますか?」
・・・
さてさて。
この患者さんは、重度の不眠症で最近来られた男性です。
かかりつけ医さんで、睡眠薬をたくさんもらっても、眠れないのです。
お話しをうかがうと、
大切なご家族に、突然の病気が発病して、
それをきっかけに、元々の心配性がぶわーっと、出てきて。
仕事や日常生活も、ままならないほどです。
記憶と感情、居ても立ってもいられない焦り、
あれやこれや、思考や対策行動が増えます。
結果、病気のご家族にも、もちろん良い影響は与えない。
失礼な言い方ですが、もはや、、、
「下手の考え休むに似たり」(笑)
そして、患者さん自身も、自分でそれに気がついてはいるのですが、
どうにもこうにも、止められるものではない。
元々、神経質で、心配性なところがあるとのことです。
とても几帳面に、日常生活を記録したり、
管理されたりしています。
治療にも、とても熱心で、意欲的でした。
幸いなことに、
薬物療法と精神療法で、
もう、かなり改善してきましたよ。
ご家族を過剰に心配することが減り、
とらわれなくなってきたのです。
最近は、杉山登志郎先生のTSプロトコルから着想を得た、
パルサーを使った簡易のEMDRがマイブームで、
精神療法が格段に楽になった気がします。
結果的にお薬も、だいぶ減ってきました。
でも、また浮かんでくる、心配性や不安、
過去の記憶から起こってくる、否定的な未来予測、、
そのような考えは、どうやったら、
止められるのでしょうか。と。
そう言えば、前回2週間前の診察室で、
そんな、話の流れから、
「マインドフルネス」って、聞いたことありますか?
っていう、話になった気がしました。
・・・・
「考え」や「感情」は、自分の意志で、
考えろ、とか、考えるなとか、止まれ、とか、
楽しめ、とか、反省しろ、とか、前向きにしようとか、
できない性質のものです。
生理現象であり、電気信号であり、
それは、自然現象と同じ。
脳内で吹いている風や、流れる雨雲に、
止まれ!とか、晴れろ! とか、
文句を言っても、不毛な戦いなのです。
そんなふうに、自分の自然にあらがうのは、疲れます。
むしろ、余計に、「考え」や「感情」はつのって、
圧は高まっていくことでしょう。
一見、抑え込んだり、無視したり、
自然を支配したつもりになっても、
せき止められたエネルギーは蓄積され、
もっと大きな土砂崩れや災害となって、
いずれ破綻してしまうだけです。
まぁ、それが心身の病なのですが。
マインドフルネスや瞑想では、
そのような思考や感情は、
かき消そうとしたり、逆らったりするのではなくて、
誤魔化したり、無視したり、我慢するのでもなくて、
ただ、流れる雲を観察するように、
流れる川の流木を眺めるように、
流れていくのを、流れていくままにしましょう、
すると、ちゃんと自然は流れて、
必ず落ち着くところに落ち着く、
と、いったような、考え方です。
まー、僕も専門の講師でもないし、
そういったお勉強のノウハウや、実践練習は、
診察室でするには時間がとても足りませんので。
「You Tubeとかで、たくさんいいやり方が出てるので、
調べて見てみてください~~」
ってな、感じだったように思います。
はい、確かに言いました。
だんだん、思い出してきました。
で、今回の、冒頭の質問になるわけです。
患者さんは、真面目に、かなりちゃんと調べて、
実践までしてくださってきたのです。
「マインドフルネスを練習してみました」
「このやり方で、合っていますか?」
とてもいい質問ですよね。
・・・・
やり方や、実践を一緒に考えてみる時間にしてもよかったのですが、
You Tube先生より、上手に説明できるわけもありません。
そして、方法論やアドバイスは、答えにならないことも、
よくわかったのです。
僕は、逆に、こう訪ねてみました。
「やってみて、自分ではどう感じたのですか?」
え?
「よい感じ? あまりいい感じじゃない?」
うーん。。
「しっくりこなかったのですね。
…はい!
「それが大事ですね」
あ! そうです。
いままでにない、明るくスッキリした表情。
じゃあ、マインドフルネスはやめておいたほうが、いいですね。
今まで良くなってきたやり方、散歩や活動を続けます!
と、とても納得されたのでした。
やれやれ、よかったです。
どんな、偉い先生が、どんな立派な方法で、
感動する人生訓や、感心するメソッドを持ってきたとしても。
いまの自分に合うか合わないかは、
自分の中だけにしか、正解はないのです。
誰かの意見や考えに合わせることはないのです。
むしろ、知らずに、周りに合わせ過ぎてきたことが、問題。
誰かの立派な正解を聞いても、
自分の正解以外は不正解です。
・・・・
急に、話が変わりますが、
「君たちはどう生きるか」
観てきたんですよ。
意味ワカラン系の映画でした。(^_^;)
解釈や考察は、色々できるかもだけど。
わからんけど、なんか色々感じた。
これがいまの自分の正解。
それは、なかなかいい感じに思えたのでした。
そんなことを思っていたら、
今日は、この診察室のエピソードを、
ふと、書きたくなったのでした (*^^*)