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大企業イントレプレナーが「うちの経営幹部は新規事業の経験がないから、わかっていない!」と言うことの違和感について

はじめに

2010年代後半から、いわゆるデジタルマーケティング、そして現在ではDXや新規事業といったラベルが付けられるような仕事に関わるようになりました。転職後も、クライアント企業の新規事業に関する仕事に携わることが多く、様々なお話を伺う機会があります。
(僕のキャリアについては下記にて )

その際によく、今回の投稿のタイトルのようなコメントを耳にします。
しかし、最近この言葉に対して違和感を覚えるようになりました。

「日に新た」と大企業経営幹部 

松下幸之助創業者の言葉に『日に新た』という言葉があります。このタイトルの書籍が昭和38年(1963年)に出版されています。

仕事は過去の発想やこれまでのやり方に囚われず、常に新しい視点で物事を見て対処することで、それぞれの成功に繋がると語られています。この言葉通りに仕事をすれば、『毎日が新規事業』になる、と言えるかもしれません。

新規事業といえば、『0→1』、つまり無から有を創り出すことが強調されがちですが、『日に新た』の精神に基づけば、必ずしも『0→1』である必要はありません。少しずつでも新たにしていくことで、それもまた新規事業と呼べるのではないでしょうか。

アンゾフのマトリクスで言うと、『現在の象限から少しずつズラして境界を越える』というアプローチでも、十分に新規事業と捉えられると思います。

引用:カール経営塾 経営用語集…

経営幹部と新規事業 

仮にこれが正しいとすれば、大企業の経営幹部は少なからず『新規事業を経験してきた人材』だと言えるかもしれません。このような経験を経て、責任あるポジション=経営幹部に就いているのです。そして、経営幹部になってからは、『事業ポートフォリオ戦略』や『選別と集中』の方針のもと、数字が悪ければ、自部門の事業がクローズされる、譲渡されるリスクを背負い、数千人の部下の雇用を守ることも視野に入れて、仕事をしているのです。


大企業イントレプレナー は「逃げてはいけない」

経営幹部に対して、『うちの経営幹部は新規事業の経験がないから、自分たちが取り組んでいることなんて理解できない』というのが、大企業イントレプレナーのよくある意見です。しかし、最近私は『それでも、大企業の新規事業家・イントレプレナーは、新規事業に理解のない自社の経営幹部から逃げてはいけない』と思うようになりました。

・彼らを説得するのが難しいと感じるなら、外に出る
・そうではなく、大企業の中で安定した生活を確保しながら、新規事業に取り組むという特権を享受していくなら、経営幹部の思考・嗜好を理解し、彼らが納得するものを提供する

…他責にするのではなく、いずれかを選ぶしかないと思います。

『彼らは新規事業をやってきていない』と言いますが、前述のように、日に新たを積み重ねたからこそ、今の地位についているかもしれません。
また、彼らは大きな事業の責任を背負い、自部門の生存と発展のために意思決定を行っています。それ相応の覚悟を持っているのです。

外部の投資家に対して『あなたは私の新規事業の良さがわかっていない』とは言わないでしょう。おそらく、投資家の基準に自らの新規事業が合致しなかったと反省し、改善に取り組むはずです。同じように、イントレプレナーは、どうすれば社内の経営幹部が、自らの取り組みに興味を持ってくれるかを真剣に考えてみる必要もあるのではないでしょうか。

何をもって経営幹部の支援を得るか

最もシンプルな支援の得方は、売上です。売上を上げるのは非常に難しいことですが、スケールしない『0→1』に取り組むよりも、アンゾフマトリクスの『境界線のズラシ』を狙い、今の大企業が既に持っている10や100の売上を拡大していく方が、一策となるでしょう。例えば、文房具メーカーのプラスが新規事業部門として展開したアスクルは、元々売り先であったSOHO(Small Office, Home Office)向けに翌日納品の通販を開始し、従来見えていなかった『真空マーケット=国内SOHOのオフィス需要という巨大な市場』を顕在化させました。

引用元:ECZineアスクルに学ぶEC:中小企業向け即配サービスから個人生活用品まで豊富に展開

また、売上だけでなく、ブランド価値、人材採用や育成といった『将来の価値』を創出できることを、明確に説明できれば、期待を持たせることができれば、経営幹部からの支援を得ることができるのではないでしょうか。

…異論・反論は多々あると思いますが、最近このようなことを考えています。僕は大企業を卒業し、スタートアップに転身した人間ですが、日本の大企業の成長に、スタートアップ=ビザスクのサービスを通じて貢献したいと考えています。

ですので、今回書いた内容も日々の業務を通じて、ブラッシュアップしていきたいと思います。

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