
ベンゾジアゼピンの減薬方法_21_減薬スケジュールの変更基準
(この記事は、私自身の減薬の経験に基づき、減薬スケジュールの変更基準について書いたものです。ベンゾジアゼピンの減薬に対する反応には個人差がありますので、全ての人に当てはまるものではありません。ご自身の減薬スケジュールについて考えるための参考としてご覧いただけましたら幸いです。)
先日、「不眠の症状と減薬スケジュールを変更する離脱症状の基準」についてご質問を頂きました。
そこで、離脱症状が出た時に減薬スケジュールを変更するかどうかの判断基準や、不眠について私が考える事について、ご質問の答えには当てはまらないものもあるかと思いますが、いくつか一般論的な記事を書いていこうと思います。
コメント・ご質問を頂きありがとうございます。私の経験が少しでもお役に立てましたら幸いです。
不眠についてご質問を頂きましたので、主に不眠について書かせて頂きますが、不眠以外の症状についても、この記事を読んでいる方ご自身が困っておられる症状に置き換えて考えてみることで参考になる部分があるのではないかと思います。
それではまず、ベンゾジアゼピンの減薬時に予想される不眠の原因やその際に考えるべき事について列挙してみます。
ベンゾジアゼピンの減薬時の不眠の原因としてまず以下の3つが考えられます。
①減薬が不眠という離脱症状の直接的な原因になっている。
②不眠以外の離脱症状が間接的に不眠の原因になっている。
③ベンゾジアゼピンで治療していた不眠がベンゾジアゼピンの減薬によって顕在化している。
これらは、どれか一つだけの場合もありますが、一人の人の中で混在している可能性もあります。
つまり、①のみ、②のみ、③のみ、①+②、①+③、②+③、①+②+③のパターンがあり得ます。
これに加えて、
④減薬した時にだけ症状が起こるのか、常用量離脱のために減薬しなくても症状があるのか。
という区別もあります。
さらに、減薬スケジュールを考える時には、
⑤症状が日常生活に対してどの程度の影響を及ぼしているか
を考える必要があります。
さらに実際には、
⑥ベンゾジアゼピンの離脱症状や、それによって起こった環境の変化、減薬がうまくいかない事などについて色々と考えたり、それらに伴って様々な感情を感じるなどの精神的なストレスが原因で不眠になっている。
という場合もあり得ます。
そしてもう一つ、
⑦睡眠に対して自分が持っている観念によって不眠が気になっている
という場合もあるかもしれません。
これらの中で、自分がどのパターンなのかによって対応は変化することになります。
私の場合、眠れない日が確かにあったのですが、原因の割合としては②の「不眠以外の離脱症状」の影響が突出して大きい状態した。また、⑥の精神的なストレスの影響もありました。
①と③については、少なくとも自覚はできませんでした。これだけ沢山の離脱症状が出ていながら、①の不眠の離脱症状がまったく無いとは考えにくいので、不眠以外の離脱症状によってマスクされていたのかもしれませんが、吐き気・腹痛・息苦しさ・めまい等で朝まで一睡もできないことは多々ありましたが、ただただ目が冴えて一晩中眠れないということはありませんでした。
そして、④の常用量離脱があり、減薬しなくてもすでに症状がありました。
⑤については、生存するために最低限の活動ができるかどうかを考慮する必要がありました。
また、⑦の睡眠に関する観念に向き合う必要もありました。
例えば、風邪で39℃や40℃の熱が出た日に、気が付いたら朝から夕方まで眠っていたという経験がある方もいらっしゃるのではないかと思います。よく眠れたと言えばそうかもしれませんが、症状が重すぎて気絶していたとも表現できるような状況でもあります。また、一方で、風邪の時に、よく眠って治したいのに咳やのどの痛みなどの症状が気になってまったく眠れないという時もあると思います。このような状況下における睡眠時間を、「1日8時間が適切な睡眠時間です」などと議論するような睡眠時間としてカウントすべきかどうか疑問です。
私の場合、これまでアップした記事に書かせて頂いた症状に加えて、まだ記事にできていない症状もあり、それらの症状が入れ替わり立ち代わり、繰り返し繰り返し、何らかの形で24時間・365日続いていました。なので、上記の風邪の例と同様に、不眠以外の症状が原因となってまったく眠れない日もあれば、朝になってもしんど過ぎて起きられない日もありましたし、朝から晩まで気絶していたこともありました。このため、純粋に睡眠時間のみについて議論できるような状態だったことが一度もありません。
ですので、「減薬をした時に限って不眠の症状のみが出る」というシンプルな離脱症状のパターンの方には私の経験はあまり参考にならないかもしれません。
ただ、シンプルなパターンに比較して、より減薬に苦戦するのは、私のように複雑なパターンを経験されている方であろうと思われます。そのような方にとって少しでもヒントになる部分があるかもしれませんので、この記事自体も複雑になってしまうかもしれませんが、書いてみたいと思います。
まず、私は減薬を始める前に何らかの「減薬スケジュールを変更する判断基準」を設けていたわけではありません。
悪く言えば行き当たりばったりで、毎日毎日、今日は何ml減らそうかと迷い続け、悩み続けていました。
ただ、私が当初のスケジュール通りに何の変更も無く1か月に0.1mlずつの減薬を続けていたとしたら、今も断薬できていませんし、寿命よりも長い期間減薬を続けているはずでした。ですので、良く言えば臨機応変に減薬を行っていたと言えるかもしれません。
では、あらかじめ判断基準が無い中でどのように日々の減薬量を決めていたのかということになりますが、一言で言うと「減薬や離脱症状を悪化因子の一つと考えて対応していた」と言えます。
ベンゾジアゼピンを減薬することは、言わずもがな、脳神経細胞のGABAに対する反応性を変化させ、離脱症状を悪化させる要因となります。
さらに、この悪化した離脱症状そのものが、さらに離脱症状を悪化させる因子の一つになります。
例えば、どこかが痛かったり、咳がずっと続いたり、お腹をこわして何度もトイレに行ったりしていると、それ自体が体の負担になったり、精神的なストレスになったりした経験をお持ちの方も多いのではないかと思います。離脱症状もこのような痛みや咳などと同じように、心身、ひいては脳神経細胞への負荷となりますので、結果的に離脱症状自体が、離脱症状をさらに悪化させることになります。
減薬と単独の離脱症状(例えば不眠だけ)が一対一対応で存在していて、減薬以外に離脱症状が悪化する要因が何も無いというパターンの方もいらっしゃると思いますが、私の場合には、光・音・臭い・振動・圧迫・気温・湿度・飲食・空腹・体動・運動・排泄・体位・外出する事・人に会う事など様々な事象が複数の症状を悪化させる要因になります。私にとっては、これらの事象が感覚神経や自律神経への刺激となり、神経細胞の過剰な興奮を誘発して強い症状を起こすのだと思われます。
これらの要因は一つだけでも程度が強ければ、症状が発作的に著しく悪くなる原因になりますし、一つ一つの刺激が大きくなくても、複数の要因が重なることで、やはり症状が悪化します。
私は、減薬と離脱症状、そして生活の中にある上記のような様々な事象がそれぞれ一つの悪化因子であるとカウントして、トータルとして症状を著しく悪化させる事が無いように、日々の減薬量や減薬のペースの判断を行っていました。
例えば、私は気温や湿度が高いと症状がとても悪くなるので、夏は気温・湿度とそれによって悪化する症状という要素を考慮して、減薬という悪化因子は他の季節よりスローダウンするという考え方ができます。
また、歯科治療に通っていた時は、通院などによって複数の悪化因子にさらされることになりますので、減薬についてはステイを選択しました。
さらに、「昨日は比較的体調が良かったので0.3mlの減薬にしたけれど、今日はなぜか離脱症状が強く出ているので0.2mlにしておこう」というような日々の細かい調整も同じように行います。
この離脱症状の程度の変化は、減薬し過ぎたことによる可能性もありますが、例えば、たまたま近所でやっていた工事の音や振動が影響しているかもしれませんし、離脱症状自体の自然な変動によるのかもしれません。
色々な可能性が考えられますが、完全に原因を突き止めることは実際には不可能ですし、そもそも原因が一つとは限りません。
ですが、いずれにしても離脱症状が悪化しているという事実があります。これは、離脱症状を悪化させる何らかの負荷が心身にかかっていた可能性を示唆していますし、悪化した離脱症状自体が追加の悪化因子になってしまうわけです。ですので、結局のところ私が行う行動は、減薬という悪化因子を減らす、つまり減薬量を少なくしたりステイしたりするという選択をすることになります。
これによって、減薬量やペースの判断が比較的単純になりますし、結果的に、減薬し過ぎて症状が著しく悪化してしまうという事態を回避することもできます。
ただ、この考え方や方法は私が短時間型のベンゾジアゼピンを内服していたために小回りが利いたことで機能していた部分もあると思いますので、長時間型の場合はそれぞれの半減期に合わせた工夫が必要になってくるだろうと思います。
減薬量の判断はこのようにある程度単純に行っていたものの、一方で、症状が悪化した時は、原因についてもしっかり検討はしていました。
例えば、睡眠について言えば、私は強い吐き気が発作的に起こることで中途覚醒をすることがしばしばあったのですが、この時の自分の状態を観察していると、お腹が空いていて、暑く感じていることが分かってきました。
つまり、空腹と熱がこもる事を防ぐことで発作を抑え、中途覚醒を予防できる可能性があると考えました。このため、食事、寝具・パジャマ、部屋の温度を工夫し、実際に発作と中途覚醒の頻度を減らすことができました。
具体的には、夕食後にお餅を食べると夜中に空腹になりにくく、発作が起こりにくくなることに気付いたので、毎日夜にお餅を食べるようになりました。(薬の吸収などに食事が影響するのを避けるため、薬を内服する時間は2時間以上あけていました。)
寝具・パジャマに関しては、化学繊維の物を使うと熱がこもる事に気付いたため、全て、綿・羽毛・羊毛などの天然素材100%の物に変更しました。天然素材でも、吸湿発熱など熱を発する機能のある物は寝ている間に温度が上がって発作の原因になるので、発熱機能の無いものにしています。
寝る時の部屋の温度でも発作の起こりやすさが変わるので、エアコンを積極的に使って細かく部屋の温度を調節するようになりました。
例えば、ある日に発作が起こったら、次の日は布団を少し涼しいものにするか、服装を少し涼しくするか、エアコンの温度設定を0.5℃下げるか・・という感じで日々工夫しています。
私は、離脱症状が出るようになる前は、適当な時間に適当にご飯を食べても何の不都合も起こりませんでしたし、化学繊維の服や寝具で何の不便も感じずに生活していました。むしろ、化学繊維の方がシワになりにくいし、早く乾くし、価格も安いので、積極的に化学繊維を選んでいたぐらいです。冷暖房は光熱費がかかりますから、我慢の限界に達した時に使うものだと思っていました。
今までと同じ生活を続けることを最優先にするのであれば、それに合わせて減薬をスローペースにする、あるいは減薬しないという選択をすることになることもあると思いますが、逆に、減薬以外の生活上の工夫によって、減薬できる余地が生まれる可能性もあります。
減薬しなければ今までと同じ生活ができるとしても、減薬がしやすくなるような生活に可能な範囲で変えることで、ステイしなくても良くなったり、減薬のスピードが上がったりすることがあり得るのです。
これが、少しの減薬で症状が出る人でも工夫次第で減薬できる可能性があると私が考えている理由の一つです。
なので、減薬以外に症状を起こしている要因が無いか、その要因が取り除けるものかどうかについて考えてみることも一つの方法だと思います。
症状が悪化する要因は人それぞれですので、自分に集中し、自分に意識を向けることが大切です。私を含めた他人の事例に囚われ過ぎることなく、自分の場合はどうだろうと観察してみて頂けたらと思います。
ここまでとりとめ無い感じになってしまって分かりにくくて申し訳ないのですが、まとめると、私は、症状が悪化する原因のうち、減薬以外の要因があって、それが取り除けない場合には、減薬をスピードダウンするかステイして症状の悪化を防いでいました。また、減薬以外の悪化因子を可能な範囲で取り除く工夫を行い、より症状が起こりにくくすることで減薬を進めやすい環境を作るようにしました。
つまり、除去できる悪化因子は除去し、除去できない悪化因子がある時は減薬量を調節することで、全体として症状が悪化し過ぎることを防ぐことで、バランスを取りながら減薬を進めました。
ここで私が一つ提案したいのは、長期にステイしてみて、減薬とは無関係な症状の変化を観察することです。
ベンゾジアゼピン離脱症候群は多彩な症状が入れ替わり立ち代わり出現することが一つの特徴です。なので、減薬しなくてもすでに症状がある人の場合、減薬とは無関係な症状の変動が存在する場合が多いと思います。
自分の症状が変動する範囲を知っていれば、減薬とは無関係な症状の変動なのに、減薬量が多すぎたのかもしれないと考えて悩んでしまうこと等を防げるかもしれません。
なので、減薬しなくても症状が出る方の場合には、一度、長期間ステイしてみて、減薬しなくても起こる自分なりの症状の揺れについて観察してみることが役に立つ可能性があると思います。
さて、ここまで主に、私のケースのように、常用量離脱が有って症状が多彩で複雑な場合について述べてきましたが、一方、減薬をした時にだけ特定の症状のみが出るというシンプルなパターンの方の場合には、ありきたりの方法かもしれませんが、毎日の睡眠時間などを記録して、どのくらい減薬するとどの程度の影響が出るのかという自分のパターンを探っていくことで、「減薬スケジュールを変更する離脱症状の基準」を見出すことができる可能性があると思います。
この際、内服されている薬の半減期にもよりますが、ある日の減薬が当日あるいは翌日の症状のみに影響を及ぼしているとは限りませんので、長期的な視点での確認も必要だと思います。
なお、睡眠時間は数値で表すことができますが、その他の症状は可視化しにくいため評価が難しい場合もあると思います。そのような時には、症状の程度を5段階や10段階で評価してみたり、100%のうちの何%かという数値にして表現して記録してみたりすることで、減薬との関連を把握しやすくなるかもしれません。数字が苦手という人は、症状が最も強い場合を「しかめっ面」、症状が無い場合を「笑顔」で表現するようなフェイススケールという方法もありますので、自分に合うものを探して一度試してみると良いと思います。
ちなみに、私自身いくつかの症状について数値化して記録してみたのですが、私の場合は症状の種類とパターンがあまりに多彩であったために、あまり役に立ちませんでした。しかし、症状の種類やパターンが限定している人には有用な方法だと思います。