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サマータイムレンダ
タイムリープ+サバイバルホラー+伝奇サスペンス!!
コミックレビュー第5弾は田中靖規(たなかやすき)の「サマータイムレンダ(全13巻)」です。【※2巻位までネタバレ注意】
ここが面白い!
「タイムリープ」とは、自分の意識だけが時空を超えて、過去の自分の身体に乗り移る現象の事。対して「タイムトラベル」は、身体ごと過去に戻ってしまう事です。
タイムリープ物の傑作には「僕だけがいない街」(三部けい/実写映画化&アニメ化)
タイムトラベル物には「テセウスの船」(東元俊哉/実写ドラマ化)などがあります。傑作が多いのもこの分野の特徴かもしれません。
過去に戻った主人公は、過去に起きた殺人事件が起こる前に「ぼく街」では被害者を「テセウス」では冤罪で捕まる加害者を、助けようと頑張る、というのが基本のストーリー。
で、不測の事態が起こって何度か失敗し(被害者が別の方法で死んでしまう、自分が疑われて身動き取れなくなる、など)戻ってまた再チャレンジする。主人公の行動で未来が変わり事態が複雑化、もセオリー。
どちらもシナリオはパズルのように複雑で、予め決まっているスケジュールの中でどう工夫して事件を未然に防ぎ、犯人を特定するか。犯人との知恵比べと、思わぬ事態が次々と起こるハラハラ感が堪りません!
この作品はタイムリープですが、ループするキッカケになるのは主人公の死。
なので緊迫度合いが半端ない(笑)一昔前に「かまいたちの夜」というサスペンスホラーゲームがありましたが、あの感じが近いかも。
そして戦う相手は人間ではない何か。序盤は何が何やら分からないうちに殺されるのですが、何度か周回するうちに、敵の見分け方、闘い方、弱点を学習して、どんどん有利に戦えるようになっていくのが見どころ!
そして敵もまた、主人公のループを早々と察知してそのウラをかいてくる。そこが、上の二つの作品との最大の違いといってもいい。
読み出したらやめられない止まらない!まさしくジェットコースター状態!!
幼馴染の葬儀
和歌山県紀淡海峡の『日都ヶ島(ひとがしま)』。観光と漁業で成り立つ、のどかな離島。
主人公の網代慎平(あじろしんぺい)は、東京の調理師専門学校に通う学生。幼馴染で家族でもある小舟潮(こぶねうしお)の葬儀の為に、フェリーで帰省する所から物語は始まります。
葬儀会場で高校時代の友人、菱形窓(ひしがたそう)から、潮は小早川しおりという女の子を助けようとして溺れたこと、その場に居合わせながら、救命出来なかったことを詫びられます。
そしてその夜。慎平は窓との電話で『潮は殺害された可能性がある』と告げられます。
潮の妹、澪(みお)曰く、姉の死は島に伝わる『影の病』ではないか……潮が亡くなる3日前、自分は姉と共に「もう1人の姉」を見た、と言うのです。
影の病とは『罹患すると自分の影を見る。それを見たものは死ぬ』との言い伝えでした。
病を治すにはヒルコ様(日都神社)でお祓いしてもらう必要があるらしく。
葬儀の翌日、一家で行方不明になった小早川家のことを調べる為、慎平と澪は神社に向かいます。
そこで怪我をしている謎の女を発見。
女は慎平に何かを伝えようとするが、慎平の目の前で射殺される。撃ったのは……澪?↓
「澪の影」は澪を撃ち殺すと、銃を慎平に向け……
慎平は射殺されてしまいます。
二周目
気がつくと、何故か澪と慎平は、事故の当日、ぐったりした潮の救命措置をする窓の姿を海から見ていて。
次の瞬間、慎平は、葬儀の当日……島に向かうフェリーの上にいたのでした。フェリーには、最初の時と同様、前回(?)殺害された謎の女もいて。
島に上陸し、澪と会い、潮の葬儀に出席し……何もかもが前回と同じ。
葬儀の日の夜。実家近くの海岸で、海を眺めていた慎平。いつの間にか自宅前にいた澪が、通りすがりの凸村(とつむら)巡査を殺したところを、またまた目撃!!
あれは澪ではなく「澪の影」だと確信する慎平。
「澪の影」の『影』から、謎の「不明物体」が出現し……それは凸村の姿になるのでした。
影から出てきた方の凸村が死んでいる凸村に手を触れると……死体は焦げ付いたような跡だけを残して消滅↑
一部始終を見て混乱の極みにいた慎平は、影の澪と凸村に発見され、またも殺されてしまいます。
三周目
前回、澪の影に見つかって殺害されてしまった慎平と凸村。慎平は凸村に嘘の通報をし、自宅前から彼を遠ざけ、物陰にスマホを仕掛けて、「影の澪」の動画を撮る事に成功。
影は本体を狙うのではないか?↑
慎平は窓に全てを話し、協力を要請します。窓は動画を見て、慎平に力を貸してくれることに。
人の多いところにいる方が、澪の影に見つかっても危険が少ないだろう、と考えて、慎平達は島の祭りに参加する事にします。
祭りの喧騒の中、潮の姿を見かけた慎平は後を追いかけ↓
……これまでは、影の目的も分からず、ただ身を守る為に逃げ回っていた慎平。
しかし、この祭りの夜……。
どうやら影の「目的らしきもの」が見えてきます。
骸の山を呑み込み、島を覆いゆく巨大な影……これは最悪のバッドエンド。
これ以降、慎平達の目的はこのバッドエンドを防ぐ事にシフトします。
つまりこの物語は、22日午前中に慎平が上陸し、24日の夜にバッドエンドを迎える、その3日間を繰り返しながら、次第に慎平が敵の正体に迫ってゆく。そういう流れになってゆきます。
四周目に、慎平はフェリーで出会った謎の女「南方(みなみかた)ひづる」と、猟師の「根津銀次郎(ねづぎんじろう)」の協力を得る事に成功。二人は、影と戦う方法を知っており、慎平達にそれを伝授してくれます。
影との闘いはますますヒートアップ!!
果たして彼らは、影の正体を暴き、バッドエンドを止める事が出来るのか!?
↑南方ひづる(本業は小説家)と根津さん。
サマータイムレンダ(全13巻)
田中靖規
ジャンププラス 集英社
※2022夏 TVアニメ化決定