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天然パーマについて思うこと
僕は生まれつき、いわゆる「天然パーマ」だ。
そこまでキツいカーブではなく、「あ、少しパーマかけた?」と、たまに言われる程度のものだ。
だが自分が天然パーマだと自覚して以来、この「天然パーマ」というネーミングが腑に落ちていない。
この「天然パーマ」というネーミング、本当に適切か。
(以降、少し複雑なロジックじみたものが交錯するので、頭の中で咀嚼しながら読むことをお勧めする。うっかり適当に読むと「あ”---!うるせぇ!黙れ!」となると思うので。)
まず、『パーマ』の意味から。
パーマネント‐ウエーブ
毛髪に熱や化学薬品を用いて、長期間崩れない波形をつけること。また、その髪形。電髪。パーマ。
とのこと。
「電髪」が多少気にはなるが、一旦スルーさせて頂く。
この先、入り組んでいくので、下記のように呼称する。
生まれ持った髪質が真っすぐで、何かしらの施術をしない状態では髪がストレートな状態の人。いわゆる直毛。
→ストレート族
生まれ持った髪質が波打っており、何かしらの施術をしない状態では髪にウェーブが掛かった状態の人。いわゆる天然パーマ。
→ウェーブ族
美容の歴史など全く詳しくはないが、ストレート族がかけるパーマ技術の誕生と、ウェーブ族の誕生はどちらが先なのか。
まず間違いないと思うが、ウェーブ族だろう。
ストレート族が、「波打ったように見せかけるために薬剤や熱を駆使してわざわざ擬似的に作った虚構の髪質」こそが「パーマ」であるとされている。
なぜ熱もクスリも使っていないウェーブ族に対し、「天然パーマ」などと、無理矢理「パーマ」の名を冠するのか。
我々は由緒正しきウェーブ族だ。
何もしていないのに、望んでもいない「パーマ」という呼称を与えるのか。
ストレート族のパーマありきで、頭に「天然」をつけて我々をもパーマであると言い張る。
普通に平穏に暮らしていただけのネイティブアメリカンに、後から土足で侵入してきた西洋人が、勝手な理屈で「インディアン」などという、本人達には関係無い、よく分からない呼称を与えた愚かな所業と同一である。
そしていま一度、『パーマネント‐ウエーブ』を細分化して考えてみる。
permanent wave
permanent(形):永続する、(半)永久的な、耐久の、常置の、終身の
wave(名):(頭髪などの)ウェーブ、ちぢれ
要するに、(半)永久的な、(頭髪などの)ウェーブ、という意味だ。
これどちらかというと熱もクスリも使っていないウェーブ族が「パーマ」なんじゃないか?
もっと言うと、「パーマ」という略称、意味としては「(半)永久的な」の部分だろう。
残すべきは「ウェーブ」の方だったんじゃないか?
ストレート族のパーマなど、永久とは程遠いものだろう。
美容師「今日はどうなさいますか?」
客「パーマかけようかと思っててー」
美「どんな感じのパーマにしましょう?」
客「前回すぐパーマ取れちゃったんで、しっかりめにパーマかけたいなと思ってて…」
ありふれたこのやりとり、本来の意味にするとこうなる。
美容師「今日はどうなさいますか?」
客「(半)永久的なやつかけようかと思っててー」
美「どんな感じの(半)永久的なやつにしましょう?」
客「前回すぐ(半)永久的なやつ取れちゃったんで、しっかりめに(半)永久的なやつかけたいなと思ってて…」
すぐ取れちゃう(半)永久的なやつ。
支離滅裂である。
本当に(半)永久的に持続するならば、美容院は商売あがったりだろう。
せめてウェーブの方を残していれば、
美容師「今日はどうなさいますか?」
客「(頭髪などの)ウェーブかけようかと思っててー」
美「どんな感じの(頭髪などの)ウェーブにしましょう?」
客「前回すぐ(頭髪などの)ウェーブ取れちゃったんで、しっかりめに(頭髪などの)ウェーブかけたいなと思ってて…」
ほら。
ほらな!
こう考えていくと、「ストレートパーマ」など、もってのほかである。
「ストレートパーマ」を略さず言えば、「ストレートパーマネントウェーブ」なのだろう。
真っすぐで《straight》(半)永久的な《permanent》(頭髪などの)ウェーブ《wave》
言葉が崩壊しすぎてどんな髪質にしたいのか、もはや意味が分からない。
「縮毛矯正」の方がよっぽど意味も本質もしっくりくる。
「ストパーかけたんだー」
より
「縮毛矯正したんだー」
の方が的を射ている。
カッコつけて変に英語など使うからこんなことになるのだ。
※ただし「縮毛かけたんだー」は逆の意味合いになるので、これは崩壊事例。
結果的に波打った髪質になっている。
何でもかんでも略すものではない。
話を戻す。
真の「パーマネントウェーブ」を頭髪に宿しているのは、むしろ我々ウェーブ族なのだ。
ストレート族がうねらせている頭髪は、偽りのうねり、ウェーブ族を模しただけの偽物、所詮は物マネなのである。
思えば我々ウェーブ族の歴史は、迫害の歴史であった。
20世紀の終盤当時、J事務所所属の男性アイドルの大多数がそうであったように、モテる男の必須条件は「サラサラストレートヘア」だった。
あの頃、学生という身分のため縮毛矯正をかける財力を持っていなかった我々のような底辺のウェーブ族は、暗い地下の小部屋に閉じ込められ生活しているような状態だったのだ。
幼少期、家の前の小さなスペースで、「ここでローラースケートを頑張っていれば光GENJ〇の加入のスカウトが来るはず!」と信じてトレーニングしていたが、とうとうJさんが来ることはなかった。
そう、僕がウェーブ族の血を引く者だったからだ。
ただ、それだけの理由で。
色気づいたウェーブ族の中高生が、万が一美容院に行ってサラサラストレートのD本光一氏の写真など見せようものなら、美容師から罵詈雑言を浴びせられ、石を投げられ、100年早い、天パ野郎は縮毛矯正かけてから出直して来やがれ…などと、この世の全ての暴言を浴びせられ、追い出されるような時代であった。
現代の若者には想像もつかないだろうが、1990年代の終わりとはそういう時代だったのだ。
天然パーマの略称である「天パ」も、どことなく馬鹿っぽい響きを持っているので、これは恐らくストレート族が悪意を込めて付けた蔑称だろう。
別の角度にはなってしまうが、「天然ボケ」などという言葉のせいで、「天然」という2文字すらも馬鹿にしている感が滲み出ている。
本来、魚などに付けられるように「天然」はポジティブな単語であるはずなのに。
養殖よりも良いとされる天然なのに、だ。
一風変わった人物を「天然記念物」などと少々嘲笑気味に呼ぶように、「天然」にはネガティブなイメージが生まれてしまった。
「天然パーマ。略して天パ。」
ほら、ネガティブに聞こえてきただろう。
時代は移り変わり、男女共に髪をうねらせオシャレを楽しむように世界は変化してきた。
そして「多様性」などという耳触りの良い言葉が使われ、ウェーブ族も迫害されにくい時代になってきた。
頼んでもいないのに「えー、天パなんだー!いい感じにパーマかけてるのかと思ってたー!」などという上から目線の評価をしてくる友人(ストレート族)すら出てくる始末だ。
平和な世の中になったものだ。
それでも僕は忘れない。
我々ウェーブ属が、天パ、くせ毛、うねり、チリチリ、などと罵倒されてきた歴史を。
「ストレートもパーマもどっちも良いよね!」などと平和主義者の皮を被ったストレート族が、かつては我々を迫害し続けてきた過去を。
過去においてウェーブ族を「天パ」呼ばわりしたことを忘却し、今さらパーマをかけたいなどと言うストレート族に言いたい。
「パーマネントウェーブ」は我々ウェーブ族のものである。
今後、あなた達が美容院で頭髪をうねらせたい時には、下記の呼称のいずれかを使って注文して頂きたい。
・偽パーマ
・人工パーマ
・偽りのうねり
・人工のうねり
・電髪
美容師「今日はどうなさいますか?」
ストレート族の客「電髪にしようかと思っててー」
美「は?」
客「いや、偽パーマにしようかと」
美「偽?」
客「私の頭髪に人工的な偽りのうねりを施して頂きたい」
美「はぁ…」
となればいい。
注文を素直に受けてもらえない場合は、上記の解説を丁寧に行い、正しさとは何か、何も考えずに適当に名前を付けるとどんな悲劇が起きるのか、を布教して頂きたい。
過去の過ちを繰り返し、未来に受け継いではならない。
これまでの多くのウェーブ族の犠牲を無駄にしたくないし、争いはもういらないのだ。
というようなことを、先日髪を切りに行った時の待ち時間に妄想していた。
美容院内に貼られた「パーマ」のPOPを眺めながら。
noteに何を書こうかと考えていて良い案が浮かばない時には、こうして何かに無理やり噛み付いてみるしかないのだ。
敵対心など特に無い。
光GENJIに憧れたローラースケートのくだりは事実だが、天パの件で誰かを憎んだこともなければ、迫害されたこともない。
僕は自分の天パをわりと気に入っているのだ。
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