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分断と、融和と、けじめと、再会と、ノブリス・オブリージュ ~ この3年間の人のありさまに思う
ノブリス・オブリージュ
この言葉を知る人は多いでしょう。
高貴さは義務である - 色々な見方ができますが。
社会の中、高い地位に、調和のもとに。
留まるためには、これは必然。
ひとまず、この解釈を前提としましょう。
…
2020年からの3年間。
世界は苦しいときを過ごしました。
歴史のうねりを思えば、
これはまだ決して終わってはおらず。
大きな地殻変動の序章と捉えるほうが、
私はふさわしいと思いますが。
小休止とでも呼びましょうか。
2023年の初夏、現在。
後ろを振り返るぐらいの余裕はできました。
ですが。
戻りません。
決して戻れません。
この間に、引き裂かれた人々の心は。
この世界で起きていることの解釈。
苦境の中でとるべき態度。
あるべき立ち振る舞い。
実際に取った行動。
価値観の違いに端を発した対立は、
埋めがたい亀裂を生みだしました。
人を想い。自らの命を想い。
大事な誰かを、守ろうとしていた。
未来を見据え、今を生き、明日に繋ぐ。
最初は皆、同じだったはず。
しかし。
一度違えた道が、再び交わることは。
最初から、思うべくも、なかったのかも、しれません。
少数派へと追いやられた、
心もあり、知性もある人々は、迫害され続けた。
それでもなお、彼ら彼女らは、懸命に皆に訴えていた。
情報をよく咀嚼し、自ら調べ。
一方的に流される情報を、鵜呑みにせず。
慎重な、賢明な、判断を。
自らの命。
死力を尽くして、大事にしなさい、と。
そう訴えていたのです。
中には声が届く人もいました。
けれど。
その主張を攻撃とみなし、いっそう敵対的になる者も。
事の重大さも分からず、ただ喚きたてる者も。
ただただ、対立に疲れ、目を背ける者も。
私は多く目にしました。
最初は皆、同じだったはず。
望みは皆、同じだったはず。
時が下るにつれて。
起きていることのおかしさに。
世界では、気づく人が増えていった。
ここ日本でも。
少しずつではあったものの、増えていった。
でも。
それはもう。
人々の体が、心が、痛めつけられた後のこと。
今なお少数派である、声をあげていた者たちは。
今も、心ない声を浴びせられて戦っています。
なのに、他でもない。
そのような、志のある者たちこそが、言うのです。
「分断されるようなことをしてはならない」
「私たちは対立を水に流し、許します」
そう。
それは、確かにその通りなのです。
私たちの敵は、同じ立場であった民ではない。
元々は、日常の細かな衝突はありながらも。
同じ世界で協調して、今日まで生きてきた、
同じ民であるはずがない。
人々を分断し、集団の力を弱める。
それは、集団に敵意のあるものが好んですること。
集団に属する者が自ら、それをするなど。
そうですね。
本来は、あるべきではない。
本来は、ね。
情けは人のために非ず
私はこの言葉に「ノブリス・オブリージュ」と。
同じ含意を感じます。
社会に生きる人々の、心のありようを思うなら。
それは義務なのです。
自分が、よく、生き延びるためには。
人によくしなければならない。
決して、美徳だとか、奉仕の精神だとか。
そんなものではない。
人心の前提を踏まえたうえで。
ただ、利己的に考えていくだけで。
必然として導かれる結論です。
An eye for eye only ends up making the whole world blind.
これを言ったのは、ガンジーでした。
復讐の果てにあるのは、誰一人立つことのない ― 闇。
3年間、声を挙げ、一人でも多くを救おうとした人々も。
あるいは、同じ考え、気持ちなのかもしれません。
前に進むためには ー
許し、手を取り合うしかない。
ええ。
そうでしょうとも。
私もそう思います。
…頭では、ね。
私にはもう一つの声が聞こえます。
いいえ、それはきっと叫び。
それは、嘘だ。
一体、どれだけ傷つけられて。
自らに敵対するものを。
なお、許せというのでしょう?
許し許されるような関係性で。
なにをもって。
手を取り合って、融和しろと?
これを言った時点で。
私たちは、もはや対等ではない。
心に渦巻く怒りを、自らの意思によって。
心のうちにとどめ、抱えていく。
それを強いる相手に。
どれほどの敬意が持てると言うのです?
それを飲み込んだとき。
まさにそのとき。
貴族と、平民は、二つに分かれ。
ここに顕現する。
心の内側に生まれる、その溝の名は ― 蔑み。
そんなことを許すと?
自らの意思をもって、自らの心に背くと?
どうして、あなたがたが。
心あり、見識あり、勇気のある。
あなたがたが。
そうしなければならなかったのでしょう?
…
埋めがたき溝が。
元にもどるその日まで。
その代償に適う、未来のため。
高貴なる心にふさわしい、輝かしき未来のため。
ノブリス・オブリージュ。
いつかまた、人々が出会う、その日まで。