2020年12月30日
当直明けの眠い眼をこすりながら病棟へ向かうと,師長が誰かに電話をしていた.同じ内容を複数の相手にかけ続けている.
話の内容が耳に入ってくる.
「明日の12/31から年明け1/3まで,当病棟は完全に面会禁止となりました」
当地ではクラスターの発生の報道は殆どない.一体誰が,どのようなプロセスを踏んでこのような決定をしたのだろうか.
私の担当患者にとってはこれが100%最期の正月だ.正月を迎えることを目標にして頑張っている患者もいる.本人家族ともにそれを承知し,いろいろ「準備」をしていたに違いない.
個別の事案ごとであれば,私が感染管理者と交渉すればどうにかなるのかもしれないが,もう,私は「そういうこと」に一切関わらないと病棟スタッフに伝えた.休日にいきなり病院を訪れた家族の面会の可否を,私に電話でお伺いを立てるのももう止めてほしい.お宅らの指揮命令系統に従って処理してほしいと.
そもそも,ある患者の面会の可否について,私は判断をする基準を持たない.
「まもなく死にそうだから」
「家族がうるさいから」
「愛に溢れた家族だから」
「かわいそうだから」
そういうあらゆる言い訳に私は首をかしげる.「会いたい度数」,「会わせてもよい基準」とかあるのだろうか.人は会いたいときに人に会わねば意味がない.会いたいと思うことに理由はない.それを皆で議論するスタッフの姿には身の毛がよだつ.
「主治医として無責任だ」「ホスピスマインドがない」と糾弾されるが,そもそも面会禁止の意思決定に私は参画していないし,あくまでも「感染管理上」の院長命令である以上,一介のヒラ社員である私がそこに口を挟むことは越権行為だ.
私は煉獄さんのような強さも責任感も使命感も持ち合わせてはいない.この組織に属する以上、鬼になるしかないのだ.