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コロナ禍日記

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コロナ禍と出会い直すためにあの頃の日記を載せていきます. ひとりで戦い続けた,面会制限解除までの道のり.
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2024年8月の記事一覧

2020年5月13日

悪疫の影響で,個人的な生活の満足度は高くなっているが,ナリワイについては,マズい方向へ流れている. 私のナリワイは,最期までの「美しき流れ」を整えることだと思っている. 外来で初対面の(患者と)家族に出会った瞬間に,相手の間合いに飛び込んで信頼を獲得し,関係性を築くことが業務上のMustである.ことばだけでなく,表情や佇まい,醸し出す雰囲気も「武器」であり,その妨げにしかならないマスクを悪疫以前は忌避していた.かつて属していた診療科ではあり得ない程の長い時間を対話に充て,相

2020年5月10日

GW明けあたりから,当地では「町中の個人洋品店(普段,ほとんど客がいない)」の店先にサージカルマスクが積み上げられ始めている. 価格は一箱2500-3500円くらい. その横には「ファッションマスク」という名の新商品が並んでいる.いわゆる手づくり布マスクのようだ. 当地では,街を歩くヒトのほとんどが何らかのマスクをしている.幕末の土壇場で新政府軍に寝返った土地柄もあってか,お上のご意向には絶対服従の模範的な社会なのだろう. 私にはマスクを手に入れる術がない.ドラッグストア

2020年4月25日

エラい人たちが「10万円」について喧々諤々の議論をしている. 己のために使うのが後ろめたいのであれば,己の「推し」のために使うことを提案したい. 悪疫で激烈な影響を受けた業界がある一方で,私のナリワイは影響を受けていない.以前は帰り道に小料理屋やBarへ繰り出したり,休日に野山を彷徨していたが,それらがテイクアウトやお取り寄せに,自宅での映画鑑賞や読書に変わった程度だ. 幼い頃,聖書で「ノアの方舟」を読んだ際,自分たちだけが生き残って,マンガもテレビもない世界で,生きてい

2020年4月8日

悪疫で最期を迎えた方の物語を報道で知ると胸が苦しくなる. 感染拡大を防ぐために、愛する家族すら患者本人に近づくことさえ許されない.液晶越しに別れを告げられればまだ良い方で,入院した後,最期まで会えぬまま,国によっては遺灰すら戻ってこないという. 私の職場でも感染拡大が日々深刻化するにつれ,「原則面会禁止」の「原則」が「鉄則」になりつつある. そして,私の目の前では,当然のごとく普段と変わらぬひとつひとつの死がある. この悪疫に対する考え方は,事ここに至っても個人差がかな