Google Meetを用いたオンラインHRの提案~エンカウンター編~
こんにちは、おのれーです。
休校が延長し、これまでネット環境のことなどを考えて保留にしていたオンラインホームルーム(HR)でしたが、生徒たちにとっての「つながる場」を大切にしたいということから始めてみました。
勤務校ではG Suite for Educationと契約していることもあり、Zoomなど他の媒体も候補にあがりましたが、セキュリティや連携のことも考えて、原則としてGoogle社が提供している「Meet」(元Hangout Meet)を利用することにしています。
今日は実際に、エンカウンターとして行ったプログラムと、やってみて感じたことををこの場でご紹介できたらと思います。
■準備したこと
今回は新しいクラスで初めて交流をするということで、自己紹介を中心としたエンカウンターを考えました。また、できるだけ多くのクラスメイトのことが知れるような流れを考えました。
このような目的のもと、先にプログラム全体の流れを決め、その上で次のような準備を行いました。
・Meet の最低限の使い方をまとめた資料の作成、使い方の練習HRを実施
→資料はあらかじめClassroomに配信し、事前に生徒に見ておくように伝えました。
[内容]
・Meetへの入り方(Classroomに配信されたリンクをクリックする)
・カメラとマイクをON・OFFにする方法
・退出の方法
・チャットの使い方
→練習HRでは、上記の使い方を実際に一斉にやってみることに加え、オンラインの場合は若干オーバーに動いてみるなどの工夫が必要ということを伝えました。
・Meet の会議室を1 クラスにつき、班の数+1つ用意
→今回は1クラスを6班に分けたので、全体の会議室+小会議室A~Fを用意しました。
→全体の会議室は、Google Classroomに紐づいている各クラスのMeet会議室を利用、小会議室はGoogleカレンダーを使って作成しました。
→ちなみにZoomだと「ブレークアウト・ルーム」機能があるので、1つの会議室だけ用意しておけば大丈夫という利点があります。
・進行用のスライドを作成
→全体の会議室で共有し、生徒に指示するためのスライドをGoogleスライドで作成しました。
・白い紙と太めのマジックを用意しておくように生徒に伝える
・Classroomの「授業」→「質問」から、振り返りのための質問(記述式)を、HR終了予定時間にあわせて配信予約しておく
■実際、どのように進行したか?
互いに慣れていないこともあり、実際にはもともとプログラムしたものではなく、時間を調整したり、内容を若干削ったりしながらの実施となりました。ここでは、実際に行った流れを書いておきたいと思います。
1.「全体の会議室」「会議室A~F」のURL をClassroom で配信し、指定された時間になったら「全体の会議室」に入るように指示
→担任はパソコンを2台用意し、1台は全体の会議室に入ってスライド画面を共有、もう1台は会議室A~Fにすべて入り、混線防止のためスピーカー、マイク、カメラのすべてをOFFにしておきます。
2.「全体の会議室」で、出欠確認と全体概要の説明 (5分)
→会議室に入ってきた生徒に声掛けをし、参加メンバーの一覧を見ながら名標にチェックをしていきます。
→「今日はお互いが知り合うために、自己紹介をグループに分かれてやる」ということを伝えます。
→全体で開始するまでの間は、次のスライドを共有しておきます。
3.自己紹介セッション
①手元の紙を四分割し、それぞれに記入する(5 分)
→次のスライドを見せながら、手元の紙に自己紹介を記入します。
→画面越しなので、できるだけ濃く、太く、見やすくを心がけるように伝えます。
②グループワーク(1)についての説明
→まずどの会議室に、どの出席番号の生徒が入るのか、スライドを見て確認してもらいます(班分けは本来学校で出席番号順に座った時、席が近くなる予定のグループにしています)。
→グループに分かれてから、どのように自己紹介を進めるのかを説明します。
→グループに分かれたら、カメラとマイクは必ずオンにするように伝えます。
③グループワーク(1) 班ごとに自己紹介を行う(全体で6分)
→全体の会議室を退出し、スライドに指示されている6 班(出席番号順のクラスの席)に分かれて、指定された会議室に入ってもらいます。
→①で書いた紙を互いに見せ合いながら、自己紹介をし、聞いている人はメモを取ります。
→担任は、その都度各部屋を回り、生徒一人ひとりのビデオやカメラがONになっているか、自己紹介を始められているかなど、声掛け(音声もしくはチャット)をします。ただし、音声は同時に6室分が聞こえてくるので、小会議室に入っているPCのスピーカーはずっとOFFにしておき、生徒のマイク入力レベルや表情などを見て反応を判断をします。
→時間の1分前くらいになったら、担任が各部屋のチャットに「あと1分くらいで全体の会議室に戻ってきてください」とメッセージを送ります。
④全体の会議室に戻ってきて、グループワーク(2)の指示を出す
→戻ってこない班があったら、担任が呼びに行きます
→まず、何をするのかを説明します。ここでは、自分のことも含め、最初の半の仲間の紹介をメモをもとに行うように伝えます(ねらいは、これで一応クラス全員の情報を共有することになるということです)。
→新しい班を発表して、またそれぞれの会議室に入室することを伝えます。
⑤グループワーク(2) 班ごとに自己紹介+他己紹介を行う(全体で12分)
→全体の会議室を退出し、スライドに指示されている6 班に分かれて、指定された会議室に入ってもらいます。
→最初の班のときにとったメモを見ながら、自分の班にいたメンバーの紹介を簡潔にしていきます。
→担任は、その都度各部屋を回り、生徒一人ひとりのビデオやカメラがONになっているか、自己紹介を始められているかなど、声掛けをします。
→時間の1分前くらいになったら、担任が各部屋のチャットに「あと1分くらいで全体の会議室に戻ってきてください」とメッセージを送ります。
⑥全体の会議室に戻ってきて、グループワーク(3)の指示を出す
→戻ってこない班があったら、担任が呼びに行きます
→まず、何をするのかを説明します。ここでは、最初の班に戻って、今日の感想をそれぞれ一言ずつ言ってみるように伝えます。
→新しい班を発表して、またそれぞれの会議室に入室することを伝えます。
⑤グループワーク(3) 班ごとに感想を言い合う(全体で10分)
→全体の会議室を退出し、スライドに指示されている6 班(出席番号順のクラスの席)に分かれて、指定された会議室に入ってもらいます。
→今日クラスのメンバーと話してみての印象をそれぞれ話してみます。
→担任は、その都度各部屋を回り、生徒一人ひとりのビデオやカメラがONになっているか、自己紹介を始められているかなど、声掛けをします。
→時間の1分前くらいになったら、担任が各部屋のチャットに「あと1分くらいで全体の会議室に戻ってきてください」とメッセージを送ります。
⑥全体の会議室に戻ってきて、HRを閉じる
→戻ってこない班があったら、担任が呼びに行きます
→退出後、Classroomに配信される「今日の振り返り」に応えるように伝える。
→担任から一言いって、退出を促す。
■生徒の反応は?
HR終了後、振り返りとして書いてもらった一言には、次のような感想が書かれていました。
・緊張してなにも話せなかった
・沈黙が続いてどうしたらいいか分からなかった
・はじめての人ばかりで感想のときも沈黙になってしまいました。
・少しずつ話していると次第に緊張感が溶けていくことができた。
・知らない人ばかりで不安だったけれど、自己紹介を通じて少し柔らかくなった気がしました!これからまだまだ仲良くなりたいです!
・緊張したけどクラスの人としゃべることができたので良かったです
・同じ班の人と話すことができてよかったです。
・久しぶりに友だちの顔を見れて良かった!
・自己紹介では、自分と同じ趣味の人も見つけられたので良かったです。
・楽しかったです!学校早く始まってほしいなと改めて思いました。
・みんなと話せて知らない人のこともしれたので早く学校に行きたくなリました。
・顔が見えるといつもと違って、不思議な感じがしました。
・人伝いに他の人の紹介を聞いたけれど次は顔を合わせて聞きたいです。
・直接会ったほうが話しやすいなと思いました。
・面と向かって話すより結構疲れました。
グループで話している時の様子を見ると、笑顔でしゃべっているグループもあれば、なかなかカメラやマイクをONにできないグループなどいろいろでした。それでも感想を読んでみると、多くの生徒は、緊張しながらも、初めて同じクラスの仲間の顔を見たり、声を聞いたりすることで、少し「今年のクラスはこんな感じなのかもな」とほっとしてくれたのではないかなと思います。
■実施してみて、自分が感じたこと
ただでさえ、初めてのクラスに足を踏み入れることは、緊張するものです。私も気づけば20年近く教員をやっていますが、毎年4月の始業式の朝、教室に足を踏み入れる時の緊張感は半端ないです。
ましてや、今回はそれがオンラインで行われたわけです。画面の中にいる友達の姿はどこか見慣れないものだと思いますし、空気感も読めなくて、「初めて会う緊張感」と「オンラインという未知への領域への緊張感」で、かなり緊張した生徒も多かったことと思います。
さらには、家庭のインターネット環境によってはネットにつながらなかったり、音声が聞こえなくなったりと、技術的なトラブルが少なからずあり、全員が落ち着いた状況で参加することはできなかったため、残念な思いを持たせてしまった生徒が出てしまったことは大きな反省点です。ビデオ通話は通信容量もそれなりに多いですし、家庭内(共同住宅内)で同時にネット回線をたくさんの人が使っていたり、家族でPCを共有して使っていたりする場合、必ずしも決められた時間に安定した環境でできるとは限らないので、全部の授業を双方向で…というのはまだ厳しいのかなとも改めて思ったりしました。このあたりは直後のフォローに加えて、学校再開後のフォローを丁寧にしなければと思っています。
また、ちょうど中高生の頃は「自分の姿」というものにセンシティブな年齢だったりもします。直接話しているならまだしも、オンラインだと自分の顔も表示されることから、「相手にどう見えているだろうか」というところもすごく気になる所だと思います。
それだけに、グループに分かれた後、それぞれの会議室を巡回し、生徒の表情を見て、声掛けを丁寧にしていくことが担任には求められます。もちろん、これは普段のHRでも気をつけなければいけないことですが、目の前に生徒たちがいない分、教室でやっていることの10倍以上は丁寧に見て、声掛けをしていかないと、悲しい思いをする生徒をつくってしまうことになりかねません。
その後、毎朝のHRで「最近印象に残ったこと」を生徒にしゃべってもらったりしていますが、少しずつカメラをONにすることには慣れてきた様子はあります(たぶん私がしつこいから、というのもありそうですが)。
この状況下、オンラインは積極的に活用していくべきだと思いますし、コロナ禍が去ったとしても、リアルとオンラインのバランスを取りながら、目の前の生徒たちにとってよい方法を探していく必要はあると思います。ただやはり、オンラインでのコミュニケーションは、文字ならまだしも、ビデオ会議というのは、まだまだハードルが高い面もあるようです。
どのようなアイスブレイクがどのくらい必要なのか、どのくらい教員がファシリテーターとして関わっていけるか、そうしたことも含めて考え、腕を磨いていかなければいけないなと思いました。
今、学校の役割について世の中では様々なことが言われています。
教員一個人ではどうしようもならないこともたくさんあると思います。
私もオンラインの良さを感じつつも、限界も感じています。
でもとりあえず、自分ができることを考えて、今は「よい」と思ったことは片っ端からやってみることなのかなと思っています。
生徒にしてみたら「またうちの担任空回りして」と思っている生徒もいるかと思いますが、空回りでも1周して何か生徒自身がつかんでくれるように、これからも頑張っていこうと思います。