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「火とガス」を使わない火入れ-熊谷成弥:タンパク質を操る60℃の遠赤外線加熱
「実は、火もガスも使えないんです...」
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セパージュは名古屋市にある高級フレンチレストランで、JRセントラルタワーズの51階に位置しています。
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高層ビルの厳しい安全規制の中で、火やガスを使うことができないため、料理法に一線を画す必要があると言います。
IHやプランチャといった代替の調理機器を活用しながら、火入れには、特に「赤外線温蔵庫」を駆使しています。この機器を使うことで、料理の保温だけでなく、微妙な温度調節を行いながら食材をじっくりと加熱することが可能です。
通常は直火で調理する料理に対して、IHやプランチャを使うことで、全く新しいアプローチを試みています。
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また、世界各国の銘醸ワインも楽しむことができ、料理とのペアリングを楽しむことが可能です。
リニューアルオープンしたばかりで、更に充実したサービスとメニューを提供しているため、特別な日の食事や大切な接待、友人や家族との食事にも最適です。予約はオンラインでも受け付けており、詳細はセパージュの公式サイトで確認できます。
熊谷成弥シェフへのインタビュー
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—料理人になったきっかけ
小学3年生の時、両親に振る舞った料理が「美味しい」と評されたことがきっかけで料理に興味を持ち始める。その後、小学6年生の時に友人たちに料理を振る舞い、彼らの喜ぶ様子に喜びを感じ、料理人を目指すことをその時に意識したと言う。
—食材選びについて
現代の食材豊富な世界では、単なる味付けに留まらない深い満足を料理に追求しています。熊谷シェフは、食材の熟成度を精密に指定することで、そのポテンシャルを完全に引き出しています。
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しかし単に美味しいだけでなく、その土地固有の食材を選び、料理に独自の物語を織り交ぜることが大事だと語ります。
自分の環境でしか手に入らない食材を使い、独自の料理を創造し、料理にストーリーを紡ぎたいと考えています。
—将来料理人として「目標や着地点」はどこか?
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熊谷成弥シェフは、農家を営む実家がある長野県出身です。彼はレストランで使用する食材を地元農家から直接仕入れる「farm to table」コンセプトのレストランを構想しています。このアイデアでは、地元産の新鮮な食材を活かして、持続可能かつ高品質な料理を提供することを目指しています。
“火を使わない”火入れ
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熊谷成弥シェフは、熟成肉の取り扱いに関して独自の方法を採用しています。彼の技術と経験に基づく熟成方法がインタビューで明らかになりました。
ー熟成肉のやり方
熊谷シェフは、肉の酸化を防ぐために可能な限り肉を丸ごと一塊で保管することを好みます。これにより、肉が空気に触れる面積を減らし、熊谷シェフは「酸化を最小限に抑えることができる」と言います。
空気の流通を良くするためにも、ラップを使用せずに肉を保管します。特に胸側の皮がある場合、これを乾燥させることが重要です。
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✅可能な限り肉を丸ごと一塊で保管
✅酸化を最小限に抑える
✅ラップを使用せずに肉を保管
ースペースの制約と吊るし熟成の代替
理想的には吊るし熟成を行いたいところですが、スペースの制約からバトー(大きな肉のカット)におろして熟成を行うことが多いです。
バトーで熟成する場合、肉と骨の間に隙間ができてしまいがちですが、これが蒸れて腐敗の原因になり得るため、1週間ごとに肉をひっくり返して両面の乾燥を促進し、腐敗リスクを低減します。
✅スペースの制約からバトー(大きな肉のカット)におろして熟成を行う
✅1週間ごとに肉をひっくり返して
ー熟成期間とその影響
熟成は最低2週間から始め、この期間を経ることで肉の味と見た目に顕著な変化が生じます。熊谷シェフの経験によれば、3週間の熟成が最も風味を引き出す期間であるとされます。
✅熟成は最低2週間から始め、この期間を経る
✅3週間の熟成が最も風味を引き出す
骨を通じた”熱伝導”による調理法
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「骨を通じた熱伝導による調理法」は、特に骨付きの肉を調理する際に有効な手法で、骨が持つ熱伝導の特性を活用して、肉の内部まで熱を均等に伝える方法です。この調理法は、骨が熱を効率的に吸収し、その熱を肉の深部に向かって伝えることで、外側だけでなく内側からも肉を加熱します。
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骨付きで肉を調理すると、骨が熱源として機能し、肉の内部まで熱が均等に分散します。これにより、外側が焦げることなく、内部が適切に加熱されるため効率よく優しく火入れができると言います。
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動物や人間の骨の熱伝導率については、いくつかの研究があります。一般的に、骨の熱伝導率は比較的低いです。これは、骨が主にコラーゲンとミネラル(主にハイドロキシアパタイト)で構成されているためです。
具体的な数値としては、骨の熱伝導率は約0.3~0.5 W/mKとされています。これは、水の熱伝導率(約0.6 W/mK)よりも低い値で、骨が体内での温度変化を緩やかにし、急激な温度変化から体を保護する役割を果たしています。
実験結果は、ウシ皮質骨に対して0.64±0.04W/mK、ヒト皮質骨に対して0.68±0.01W/mKを提供しました。海綿骨では、熱伝導率の骨体積分率に対する線形依存性が見出されました[R二乗 (R2) = 0.8096、推定値の標準誤差 (SEE) = 0.0355 W/mK]。骨髄の熱伝導率は0.42±0.05W/mKと推定された。
The thermal conductivity of cortical and cancellous bone - PubMed (nih.gov)
骨自体が保有する水分や脂肪、骨髄からの風味の移行や、熱が骨によって分散されることによる均一な加熱の効果も示唆されます。
赤外線加熱による「明確なメリット」
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赤外線加熱は電磁スペクトルの一部で、800nmから1mmの波長を持ち、可視光の赤い部分のすぐ外側に位置します。
この赤外線を利用した加熱では、エネルギーが食材の分子に直接作用し、これにより分子が振動して熱が生成されます。赤外線は空気を介さずに食材に直接熱を伝えるため、対流や伝導に依存する従来の加熱方法(ガス火やフライパン、オーブン使用時)と比べて、食材が均一にかつ迅速に加熱されます。
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従来の方法では空気や調理器具が熱源となり、熱は食材の外部から徐々に内部へと伝わりますが、赤外線加熱では内部から同時に熱が発生するため、外側が焦げることなく内部が適切に調理される利点があります。これにより、調理時間の短縮とエネルギー効率の向上、さらには食材の風味や栄養の保持(水分など)が可能になります。
つまり赤外線加熱は、食材に含まれる「水分子」や「タンパク質」と共振しやすい周波数で作用するため、これらの分子を直接励起して熱を生成します。このプロセスにより、食材は内部から効率的に加熱されます。
✅「水分子」や「タンパク質」と共振し内部から熱が発生する
✅電磁スペクトルにより分子を直接励起
✅電子レンジは内部の水分をマイクロ波で急激な振動
赤外線加熱は、電磁波が照射されるという文脈において、正確には内側から加熱されるというよりも外側から、より内部に浸透して共振する熱源ですが、電子レンジは内部の水分をマイクロ波で急激な振動をさせる局所的な高温加熱の為、電子レンジは温度調整が難しいという欠点があります。
つまり、可能性として「食材内部の温度センサーリミットが付いた、低出力の電子レンジ」があれば、赤外線加熱と同じようなより効率的な電子レンジを作れる可能性はあります。
新しい火入れの完全解説
—温度設定や状態の詳細
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