【備忘】自動的にアイデアを量産するフレームワークたち
こんにちは👋
週末ということで実用的な記事を。
今回のテーマはブレインストーミング/ アイディエーションの方法についてです!私はあんまりアイデアを考えるのが得意ではありません。例えば、デザイン思考ワークショップでペルソナを定義して、ジャーニーマップを考えたり、一通りユーザーのことを理解した後にアイディエーションに入ると思うのですが、ここで急に個人プレイみたいなかんじになってしまう印象があります。(参加者一人ひとりの発想力に任せる的な)あと「突拍子もないアイデアを考えましょう」という指示が出る場合がありますが、参加者目線では具体的にどうすればいいのかあまりイメージしづらいです。また、これだけのガイドだと大体AIがよしなに問題を解決してくれる、的なアイデアしか出ず、ファシリテーター目線でも収束に困ってしまうのではないでしょうか。
以前グロービスの何かの一般公開セミナーで、ID卒業生でもあるTakram佐々木康弘さんが「IDでは機械的にアイデアを量産するフレームワークをたくさん教わるんです」とおっしゃっていた気がするのですが、たぶんこのことかな?と思うフレームワークを春学期にいくつか学んだので、自分のためにここにまとめておきます◎便利そうだなと思ったら、是非ワークショップなどに取り入れてみてください!
前提
今回の記事はHow Might Weステートメントが完成されていることを前提としています。詳細はこちらの記事をご覧ください。
また、今日ご紹介する手法は全て3-5人のグループで30分程度行うエクササイズになります。
ソリューションを考える手法
1. Yes And
手順
How Might Weステートメント(アイディエーションのお題)を1つ選ぶ。
一人ひとり静かにアイディアを考える。(5-8分程度)イラストと簡単な説明文があるとよい。3-5つを目安にアイディアを考える。
一人が考えたアイデアのうち一つを選んで説明する。その発表を聞きながら、他のチームメートはそのアイデアに乗っかる形でYes, andから始まる提案を手元のポストイットに書く。
アイデアの説明が終わったら、チームメートが手元のポストイット(Yes, and…)を説明し、アイデアを説明した人にポストイットを渡す。
次の人へバトンタッチ。全てのアイデアが発表されるまで繰り返す。
ポイント
Yes andを考えるメンバー(発表者以外)はアイデアを批判的な観点で見るのではなく、建設的にグループでアイデアを共創することを意識する。
抽象的な方針(ex: オンラインで簡単に注文できるようにする)ではなく、具体的なアイデア(ex:ワンクリックで注文できるようにする)に集中する。
具体的なアイデアの特徴例(以下ができるくらい具体的なアイデアである必要がある)*すべてに当てはまる必要はない。
プログラミングなどで実装可能であること。
ユーザー体験のフロー(サービスブループリント、ジャーニーマップ)を描くことができること。
実装をする上で必要なポリシーやルールを考えることができること。
一つのアイデアに対してできるだけ多くのYes, andポストイットを集めることを目的にする。
2. Round Robin法
手順
How Might Weステートメント(アイディエーションのお題)を1つ選ぶ。
一人ひとり静かにアイディアを一つ考える。(5-8分程度)イラストと簡単な説明文があるとよい。今の技術・社会通念上ありえないアイデアを考えるようにする。
アイデアが書かれた紙を隣にいる人にわたす。渡された人はまず記載されているアイデアを理解し、批判的な目でなぜそのアイデアがうまくいかないか、考えられる欠点をすべてリスト化する。(5分程度で)
紙を隣にいる人にわたす。渡されてた人は、最初に書かれたアイデアと批判の両方を見て、オリジナルのアイデアで想定されていた当初の目的は果たしつつも、批判をクリアするアイデアを考える。
みんなの作業が終わったらグループでシェアする。
ポイント
一番最初の人がアイデアを考える時にできるだけクリエイティブな(それこそ「突拍子もない」)アイデアを考える。
4番目のステップが一番むずかしいが、1人目のアイデアのゴールを達成しつつ、2人目の批評(ルール)に従うことを意識する。
発散で終わるだけではなく、きちんと批評を取り入れ地に足がついたアイデアに収束するので、個人的にはこの方法論は一番役に立ちそうだと思っています。
この方法論とYes, Andを組み合わせ、ステップ5の後にYes, Andでアイデアを多少ふくらませるのもよいかもしれません。
また、4人目のアイデアがまた突拍子もない可能性があるので、全体シェアの場では批判的な目でフィードバックを集めるのがよいかも。
ビジネスアイデアを考える手法
以下2つは、具体的なソリューションを考えると言うより、より抽象度の高い戦略やサービスのグランドデザインにおすすめな手法です。
1. Flipping Orthodoxy法
デザインではよく、「ルールを破れ、しかしうまく破れ」と言われています。これは人々が無意識に持っている常識、固定概念に焦点を当てて、敢えてそれを覆そうとするアイデア発散法です。
例えば
金融業界
常識:人々は物理店舗で実際の人を介する取引しか信用しない。
反常識:ATM、アプリをベースとした取引サービスの普及。(←こっちがもう常識化していますが。。。)
高等教育
常識:生徒は教室で先生と対面で講義を聞く。
反常識:オンラインでの非同期授業。(← これもコロナで常識化しましたが。。。)
航空業界
常識:複数のキャビンクラスが必要であり、効率的な方法はハブ&スポーク・モデルのみである。
反常識:Southwest Airlinesでは一つのキャビンクラスしか存在せず、Point-to-pointネットワーク(毎回ハブ空港を経由せず、直接拠点から拠点に向かうことにより、コストカットを実現)を運用している。
手順
自分が好きな会社、よく知っている会社を思い浮かべる。(ex: Walmart)クライアントと全く関係の無い業界の会社を選ぶのがポイント。
1で挙げた会社が自分の会社/クライアントの会社を買収した場合、どんなサービスが展開されうるか考える。例えばWalmartがInstitute of Designを買収した場合:
・Institute of Designのグローバル展開?
・クラスのモジュール化+安価で提供できる?
・オンライン授業と対面授業両方提供?
・ありとあらゆる領域のデザインの授業が受講可能?
・他大学の授業も受講可能?
・入試の廃止、誰でも授業が受けられる?
・デザインに必要な材料を安価で届けてくれる?
などなどInstitute of Designを取り巻く常識、ルール、誤解の中で変えられる可能性がある要素を考える。例えば:
a. Institute of Designの授業はInstitute of Designの教授によってのみ提供される。
b. Institute of Designの教授の専門領域しか学ぶことができない。
c. シカゴにいないと授業が受けられない。
d. 敷居が高い。(入試、高価な学費etc)
などなど3を覆す方法を考える。例えば:
・Instutite of Designの教授以外の、世界中のデザイン系大学院の教授の授業をオンサイト/オンラインで受講できる。オンラインの場合は学費を多少抑えられる。(a, b, cの固定概念を覆す意図)
・学生が大学に来るのではなく、大学が学生に赴く。例えば、シカゴに限らず、全米の地方自治体とタイアップして、職員にデザインを教える&Co-creationを目指す。(cとdの固定概念を覆す意図)
・既に実施された授業を録画して、それを安価で配信し、誰でも受講できるようにする。(c, dの固定概念を覆す意図)
などなど
ポイント
主観ですが、他の方法論と比べて少し実践が難しい気がするので、お客さんを集めて初めてこのアクティビティを試すのはおすすめしません。Step2はクライアントヒアリングのような形でアイデアを集めつつ、Step3はこの方法論にある程度なれているデザイナーがリードするのが良いと思います。Step4はもしかしたらクライアントを巻き込んでも面白いかもしれません。
Step1で参考にする会社が思いつかない場合は、みんな知っているGAFAMのうちのどれかを選ぶのがいいと思います。
2. Strategy Table
この方法は、クライアントのビジネスを形作る要素を分解し、その要素ごとにあり得るアイデアを全量洗い出した上で、アイデア同士を組み合わせて新しいビジネスアイデア、サービスを考えるフレームワークです。
少し分かりにくいと思うので授業で提示された例を交えながら手順をご紹介します。
手順
新しいビジネス、サービスアイデアの目的を定義する。(ex: 簡単に作れて、普段とは違う食事をデザインする)この目的にはHMWステートメントがそのまま使えます。
そのお題(食事)を構成する要素を洗い出す。(ex: 肉、野菜、サルサ、スパイス、トッピング、主食、etc)
各要素ごとにあり得る選択肢全てを洗い出す。(ex: 肉なら豚バラ肉、合い挽き肉、鳥もも肉、鳥ひき肉etc…)
各要素からアイデアを選択し、戦略を考える。一つの要素から複数の選択肢を組み合わせてもよいし、全ての要素を含めなくても良い。(ex: 下の例ではGreen ChiliがSpicesからは何も選んでおらず、SalsaからJared salsa, Safrito, Tomatillosなど複数選んでいます)
最後に戦略に名称をつけ、メリット/デメリットを記載します。
ポイント
Step2で要素分解する時、またStep3でアイデアを洗い出す時に、MECE(漏れ・重複がない)状態を目指す必要があります。少し難しいので、不慣れなクライアントも交えて一緒に考えるというよりは、デザイナーがリードしたほうがよいかもしれません。また、できるだけ既にあるフレームワークをそのまま使うのがおすすめです。
例えばアメリカのデザインコンサルティングファームのDoblinはBusiness Model(Profit Model)は今の所以下のような種類があるとしています。長いので一部のみ。
Premium
優れた製品、商品、経験、サービス、またはブランドに対して、競合他社よりも高いマージンで価格を設定すること。Cost Leadership
変動費を低く抑え、低価格で大量に販売すること。Scaled Transactions
単位コストが相対的に固定されている場合、大量かつ大規模な取引を追求することで、利益率を最大化する。Micro Transactions
多くの商品を1ドル、あるいは1セントでも安く販売し、大量に衝動買いをさせる。Forced Scarcity
需要 / 価格を押し上げるために、需要量、時間枠またはアクセスによって、利用可能な提供物の供給を制限すること。Auction - オークション(説明割愛)
Subscription - サブスク(説明割愛)
Membership
有料会員の人のみが利用できる場所やサービスを提供する。
などなど21種類。
Business Modelの他にもBrand、Channel、Serviceなども洗い出されているのでこれを参考にするとよいと思います。
どのStrategy Tableでも、ビジネスアイデア/サービスアイデアを考える場合はBusiness Model(Profit Model)は含めること。Doblinのから丸々引用でOK。
https://doblin.com/dist/images/uploads/TenTypesInnovation.pdf
例
以下私たちのグループが授業中につくったStrategy Tableの例です。お題は新しい美容院を考えるというものでした。参考までに。
番外編
メルローメソッド
まさかとは思いましたが、名前の通りワインのメルローを飲みながらアイデアを考えるという手法です笑 Institute of Designの元教授Dale Fahnstromによって提唱された手法(?)で、飲めば飲むほどいいアイデア生まれやすいヨということのようです。ほんとかな。
まとめ
今日は、前回のHow Might Weステートメントを元に、そこからどのようにして独創的なアイデアを考えるかInstitute of Designで教えているフレームワークをご紹介しました。個人的にはRound RobinとStrategy Tableが面白いアイデアが生まれたので気に入っています。🙌
時と場合によって適切な手法を選ぶ必要がありますし、どの手法でもデザイナーがしっかりと舵を取って議論が脱線/大幅に発散しないようにコントロールする必要があります。実際にワークショップなどで使えるようになるまでに何度か練習が必要かなとは思いますが、是非皆さんのお役に立てると幸いです。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
スキ・フォローなどいただけると励みになります🕊💐
次のnoteでは、量産されたアイデアからプロトタイピングに進むアイデアを選定する意思決定プロセスについてご紹介していますのでこちらも是非!
では👋
いただいたサポートは怒涛のインフレ&円安で圧迫されつつある留学軍資金の足しにさせていただきます…!😂