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土用だけに、動揺します


「土用に入って、からだがざわつく」
と言ったら、「土用って何? 今日は木曜だよ」と言われた。
そうだよな、いまどき「土用の丑の日」なんて、若い子は知らんか……。

土用というのは、中国の五行説由来。季節の区切りを表す言葉のひとつなんだ。ほら、立春とか夏至とか冬至……ってあるでしょ。その仲間。

土用は季節に合わせて4回ある。で、今は夏の土用に入ったところなんです。まあ、一般的には「土用と言えば夏、立秋前の約18日間のこと。
ちょうど季節の変わり目にあたるので、からだもメンタルも環境の影響を受けて土用の前はざわつきがち。まんざら迷信ではないだよな。

今年は7月20日に土用に入り、8月7日が土用明けです。土用が明けたら、夏のなかにふと秋の気配を感じてきます。えー?夏真っ盛りでしょ、って思うかもしれないけれど、海も変わるし、虫たちも変わるんですよ。自然界のリズムって面白いね。

夏の土用の時期におきる大きな波は〈土用波〉と呼ばれて、漁師に恐れられてきた。これは遠くで発生した台風の影響なんだけど、そう、土用に入ると台風シーズンも近づいて来るというわけ。
〈土用隠れ〉なんて言葉もある。夏の土用の時期には、水温が高くなって魚が深いところに隠れてしまう。釣り人が「今日は土用隠れだ」と言ったら、釣果ナシってこと。

〈土用灸〉って言葉もあるよ。

夏目漱石が季語として使っています。

土用にして灸を据うべき頭痛あり (漱石)

……夏目漱石は神経性胃炎で頭痛持ちでした。繊細な人だったんだろうね。きっと夏の土用の頃には胃も疲れて頭痛もしたんでしょう。そしてお灸をしてしのいでいたんだね。

そうなんで、土用の頃は季節の影響を受けて「身も心もへろへろ」になりがち。冷たいものの飲みすぎ食べ過ぎで身体が冷えて、肩凝り、頭痛が起きやすい。夏風邪をひきやすい。めちゃくちゃ暑いのに、季節は秋に向っている。バランスが崩れる時期なんだよね。

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伝統的東洋医学の知識や、見えない気の世界、また、さまざまな能力者の方がたとの交流から体験してきた、この世界と重なって存在する多元的な時空間についてのお話、鍼灸学校の学生生活を通して感じること、社会問題などを扱っています。また、田口ランディのクリエイティブ・ライティング講座や、イベント、講演会の情報なども掲載しています。現在は学校に行くため執筆は開店休業状態。ぜひ、noteで私の執筆を応援してください。

作家として約20年間、執筆活動を続けた後、60歳で東洋医学を学び始め一昨年鍼灸学校に入学。体験してきた見えない世界と「気」を使う伝統鍼灸が…

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