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9割の社会問題は〇〇で解決できる!

ソーシャルビジネスというものをご存知だろうか?

ソーシャルビジネスとは

一般的なビジネスは、人びとの不満や不便を解消することで、つまりマーケットのニーズを満たすことで、利益を上げることを目的としている。

それに対してソーシャルビジネスは、マーケットから放置された社会問題を解決することを目的とする。貧困、難民、過疎化、食品ロスなどさまざまな社会問題を解決するのが、ソーシャルビジネスである。

一般的なビジネスは放っておいても誰かがやる。儲けがインセンティブになるからだ。

だが、ソーシャルビジネスは、儲からないから誰もやらない。

だから社会問題は、政治の問題とされがちだ。社会問題のラディカルな解決を目指すためには、政治によってさまざまな社会制度を改良・改変していくことが求められる。

しかし非常に残念なことに、それでは社会問題の一部が、長い時間をかけて改善される程度に止まるのが現状だ。

ソーシャルビジネスは、社会問題の解決を政治に任せっきりにするのではなく、ビジネスを通して社会問題を解決するという難題に挑戦しているのである。

社会起業家という挑戦

挑戦者を社会起業家という。

社会起業家は、儲かるからビジネスを立ち上げるわけではない。そこに解決すべき社会問題があるからこそ起業するのだ。

社会起業家である株式会社ボーダレス・ジャパンの代表取締役社長である田口一成は言う。

事業が成功するかどうかは、起業家本人がつくりたい社会像が明確か、そして本気でその理想の社会を実現したいと思っているか、にかかっています。

社会起業家にとってビジネスは手段に過ぎないのだ。

利益はなくてもいい?

とはいえ、赤字続きではビジネスそのものに継続性がない。

田口は、ソーシャルビジネスにとっての利益について、次にように説明している。

勘違いしないでおきたいのは、「社会起業だから儲けなくてもいい」と言っているわけではないということです。理想の社会は一朝一夕にはやってきません。継続的に活動を行うために、そしてより大きな社会的インパクトを出すためには、しっかり経営していく必要があります。本当に困っている人の生活や環境を変えようとする社会起業は、「儲からないから続けられませんでした」なんてことは許されません。
利益が出る仕組みをつくることは、社会起業家にとっての、いわば「けじめ」です。   -強調は引用者。

社会問題を解決するためのビジネスを継続させていくためには、利益は必要である。

利益を上げるためには、「非効率を含んだビジネスでありながら、『これ最高だよね』と生活者が買い続けたくなる商品やサービスをいかに提供していくか」が鍵となる。

この難しい、しかし、とても魅力的な活動に取り組んでいるボーダレスグループについて、応援の意味も込めて、もう少し詳しく紹介したい。

ビジネスそのもので社会を変える

ボーダレスグループは独立経営を基本とする社会起業家の集まりだ。その社会起業家を支援するプラットホームがボーダレス・ジャパンである。

ボーダレス・ジャパンの田口は当初、寄付するために稼ぐというスタンスで「事業内容は何でもいいと思っていました」と告白している。

「寄付するために稼ぐ」というのは、哲学者のピーター・シンガーの「効果的な利他主義」で有名になった考え方だ。

だが、「寄付するために稼ぐ」というのは、誰もが継続的に行える取り組みではない。また、稼げるビジネスというものの多くが、新たな社会問題を再生産し続けている現実もある。短期的に多くの実利は得られるのかもしれないが、社会問題を生み出す社会的な構造が変わるわけではないのだ。

一方で社会問題を生み出し、もう一方で社会問題の解決のために寄付をするといったマッチポンプシステムが、「寄付するために稼ぐ」というものであると、厳しい目を向けることもできる。

寄付を通じて社会貢献する会社から、ソーシャルビジネスを生業とする会社へ-。

このボーダレス・ジャパンの思想にこそ、大きな可能性と希望がある。

ボーダレス・ジャパンの宣言

ボーダレス・ジャパンの定款前文では8つことが宣言されている。

❶すべての事業は、貧困、差別・偏見、環境問題など社会問題の解決を目的とします。
❷継続的な社会インパクトを実現するため、経済的に持続可能なソーシャルビジネスを創出します。
❸事業により生まれた利益は、働く環境と福利厚生の充実、そして新たなソーシャルビジネスの創出に再投資します。
❹株主は、出資額を上回る一切の配当を受けません。
❺経営者の報酬は、一番給与の低い社員の7倍以内とします。
❻エコロジーファースト。すべての経済活動において、自然環境への配慮を最優先にします。
❼社員とその家族、地域社会を幸せにする「いい会社」をつくります。
❽社会の模範企業となることで、いい事業を営むいい会社を増やし「いい社会」をつくります。

ここで特に目を惹かれた二つの取り組みに触れてみたい。

報酬への考え方

まずは「❺経営者の報酬は、一番給与の低い社員の7倍以内とします。」について。

社会問題の解決をミッションとして掲げるNPOや組織であっても、経営者の報酬をオープンにしているところは少ない。報酬額そのものをオープンすることについては、そんなことしてもあまり誰の得にもならないから賛成しない。

けれども、表向きは貧困問題を解決しますと言っておきながら、社内格差は10倍以上もあるという組織はある。例えば、フルタイムで働いていながら、社員のいちばん低い年収200万円、経営者は年収3,000万円といったように。

だから経営者の報酬を一番給与の低い社員の何倍以内にするというルールを定めるボーダレス・ジャパンの姿勢は、格差社会や貧困問題の解決への身近な一歩を自ら実践しており、その姿勢には本気度が感じられる。

社員のいちばん低い年収が200万円であるならば、経営者の年収は1,400万円が上限となる。逆に経営者目線で考えれば、年収2,100万円欲しいというのであれば、社員のいちばん低い年収を300万円にすればいい。

ボーダレス・ジャパンでは、7倍以内ルールを5倍以内にという議論が行われているというから驚きだ。

ここで働く人びとのインセンティブは報酬ではない。生活に必要な報酬を得たら、それ以上は自らが解決すべき課題として掲げる社会問題の解決そのものが彼らのインセンティブとなるのだ。

貧困で誰かに隷従していた人が自由になる、笑顔になる。それが一人増えた、また一人増えた、100人を超えた、地域全体に広がった。こうした社会問題に与えたインパクトが彼らの報酬なのだ。

マーケットニーズがあるからやる、となるとソーシャルビジネスの本質から外れてしまいます。そうやって、いつの間にか売上や利益を追いかけるだけの商売に変貌しないために、ソーシャルインパクトを設定する必要があるのです。

マーケットニーズに着目するとき、得てして規模に囚われがちになる。

ニーズを大量に満たすことが必要だ。そのためにはみんなにたくさん効率的に働いてもらわないといけない。がんばれ!がんばったけど、思うように利益が上がらない。収益が少ないからだ。もっと働いてもらわないと!現場からは不平・不満が出るから、頑張ったものには報酬を弾もう!しかし少ない報酬のままの労働者はやる気をなくし生産性が低下する。そうすると働く人にもっと仕事が集中し、過労に陥る。

このようにインセンティブを与えて働かせるという外的動機づけは、どこかで必ず行き詰まる。内的動機づけに基づいて働く人を育成するモデルがここにある。

昨今の働き方改革においても、考慮されなければならない視点だ。もちろん「やりがい搾取」が論外であることは、言うまでもない。

株主配当の考え方

もう一つ目を奪われたのは、「❹株主は、出資額を上回る一切の配当を受けません。」というルールだ。

このルールについて、田口は次のように語っている。

資本主義は、最初にお金を持っていた人(資本家)が富み続ける仕組みです。「最初にリスクテイクしてお金を出した人は、それ相応の見返りがあっていい、そうじゃないと誰もお金を出さなくなる」という意見も正しいと思いますが、それが貧富の格差を引き起こしているのもまた一つの事実です。
富める者がさらに富むというスパイラルを断ち切るために、出資額を超えた分の受け取りを拒否してもいいのではないか。損をする必要はないので、出資額分までは戻ってきていい、だけどそれ以上はいらない。そんな価値観があってもいい-そう考えました。株主への配当分を、働く人の福利厚生と新たな社会事業への再投資に使えば、誰も損はしないし、「出したもの勝ち」の世界にもなりません。

グループの中には1億円以上の利益を出す会社もあれば、どんなに頑張っても数百万円しか利益を出さない会社もある。持ち株数に応じて利益が分配されることを認めれば、気持ちよく新たな社会起業家の誕生を支えることはできないと考えているのだ。

ただし、ボーダレスグループは株式制度の活用そのものを否定してはいない。株式配当による個人利益を否定しているのだ。

では、株式制度はどのような場面で活用されるのかといえば、「恩送りを実現するための手段」としてのみ活用されている。

恩送りとは、次の新たな社会起業家の誕生を支えるということに他ならない。

この殺伐とした資本主義社会において、誰かに受けた恩を次の人に送る「恩送り」でつながる関係性というのは、とても温かく、人としてすごく素直なあり方だと思います。

田口の言葉は、乾いた感受性に水を与えてくれる。

サービスを利用して貢献する

田口は、一人ひとりの小さなアクションで、世界は必ずよくなることを強調する。

その第一歩は、まずは一人ひとりが「ちゃんとした消費者」になることだ。みんながみんな社会起業家になる必要はないのである。

ぼく自身の小さなアクションとしては、ボーダレスグループのサービスを利用して貢献するということに取り組み始めた。

❶大手電力会社から自然再生エネルギー100%のハチドリ電力への切り替え

コミットする社会問題:地球温暖化


ハチドリソーラーの利用も検討中。


❷仕事で使用するレザーアイテムをBUSINESS LEATHER FACTORYで購入する。

コミットする社会問題:バングラデシュの就職困難者の貧困

その他いろいろなサービスを今後も試していきたい。

もちろんサービスの利用は、そのビジネスが社会問題の解決に貢献し続ける限りではあるし、価値ある商品を生み出し続ける限りではある。

ただ、日常生活で使用する同じサービスであれば、安いから使用するではなく、サービスの背景にあるストリーやナラティブに共感するから使用する。消費のシフトチェンジが必要だ。

ボーダレスグループの取り組みは、この思いを強くするには十分刺激的だ。

今後も注目していきたい。



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