見出し画像

イタリア・南チロルを歩く 第1回目 Neumarkt/Egna

こんにちは。イタリアの最北部アルト・アディジェ州、別名南チロル地方に住むranaこと、美波ラーナです。

今回から南チロルに点在する小さな村々を訪ね、ぶらり気ままに「南チロルの人知れぬ小さな村」を一つずつお届けしていこうと思います。

さて記念すべき第1回目の南チロルの小さな村は・・・・

Neumarkt【独】/Enga【伊】

Neumarkt/Egna

・・・・の前に、ここ南チロルの地名はドイツ語、イタリア語の2ヶ国語、場合によってはラディン語との併記が一般的です。したがって、これから紹介する村の名前は全部基本ドイツ語、イタリア語で記載していきます。

さて早速村の、いや私にとってはここは町かな?南チロル地方南部、お隣のトレンティーノ州との州境を接する「低地(Unterland【独】Bassa Atesina【伊】)」と呼ばれている地域の中心となっている村です。大体の村の人口が2000人から3000人の間なのですが、ここの人口は約5000人。州の一部の公共機関などもあるので、この地域では重要な村となっています。

村の中心には石畳を施した道が一本あり、建物にはポルティコ(Portico【伊】)と呼ばれるアーケードのようなものがあるのが特徴です。おかげで村の中心に入れば雨の日でも傘なしで買い物できます。南チロルでも私が知る限りポルティコのある村はここだけです。
実は「イタリアで一番美しい村々(i borghi più belli d'italia【伊】)」という地域活性プロジェクトに参加しているのです。うーむ、確かに観光ハイシーズンには観光バスが来て街を巡る(といっても1時間あれば充分回れる広さ)団体さんを見るな。そうか、そういう事だったのか!

ポルティコ(portico【伊】)

かくいう私はNeumarkt/Egnaには週1程度の割合で行く。目的はこの村にあるオーガニック店で買い物する事、もう一つは毎週金曜日に行われる青空市で新鮮な野菜やら、お隣のトレンティーノ州で作られたサラミ・チーズをはじめ、アドリア海の採れたての魚を乗せて南チロルにやって来る「移動お魚屋さん」で戦利品を入手する為だ。地元南チロルの農家さんのスタンドのなかには真冬になると「住んでいる山から降りられない」という理由で冬の雪の時期は自動的にお休みに。夏の時期にウズラの卵を売りにくる農家さんがいるのだが、大体8月に入ると「もうウズラは卵を産まなくなっちゃったから終わり。」と言われる。ウズラの卵で初秋の始まりを感じる生活になるとは思わなかった。青空市のスタンドも南チロル系とイタリア系に分かれる。もちろんどちらのスタンドでもドイツ語、イタリア語は通じる。時々「俺、イタリア語ちょっと苦手で・・・」「あー俺ここの人間じゃねーから、イタリア語じゃねぇーとな・・・」ということもあるが、それはそのときである。

おしゃべりオヤジがいるサラミ・チーズのスタンド


私はイタリア系の野菜果物スタンドで買い物をする。ここは活きたイタリア語の語学学校である。個性豊かなおばちゃんが色々説明しながら旬の野菜を勧めてくれる。曖昧に返事したなぁと思ったら、しっかり手提げ袋におばちゃんのオススメ野菜が入っており、お代もしっかり払っていたという事もよくある。おばちゃんのゴリ押しのおかげで知ることもなかったイタリアの野菜を美味しく食べられるようになった。

知らない野菜でもお店のおばちゃんが食べ方を説明してくれるので思い切って試しています。

この規模の青空市が通年行われているのは「低地」地域ではここだけである。観光シーズンにこの村を訪れた人々が各々のスタンドを覗き、売り手さんとのやり取りを楽しんでいる様子を見ているのも趣がある。大体の観光客がドイツ人だが、オランダ人、ベルギー、フランスなど主にヨーロッパから訪れる人が多い。目的は自然の中でのエクスカーションだろう。ハイキングやサイクリングをドロミテ峡谷の麓で楽しみ、南チロルのワインに喉を鳴らすといった具合だろう。日本人が思い描くイタリア観光旅行とは少し趣旨が違うのでピンとこないところもあるかも知れないが、休暇を自然の中でゆっくりと楽しむことが好きな(特にドイツ人)は、気候が良くなってくると一斉に南下してくる。私は冗談めいてこれを「ゲルマン人の南襲」と呼んでいる。しかし観光立国である南チロルにはドイツ人やスイス人をはじめとした観光客は大事なお客さんなので、夏場に避暑に来た浮かれ気分のイタリア人観光客にも親切に接客している姿を見かけては驚く私である。

地元の人と観光客が混ざって活気を生む

普段は実に穏やかな時間が流れる。カフェも地元の人が通うところだけが開いており、そこでのんびりコーヒーを飲んで一息つくといった感じだ。人ともそこまですれ違うことがなく閑散とした雰囲気であるが、妙にこれが落ち着くのだ。この静寂を楽しむために閑散期を狙って村を訪れるのも悪くない。

真冬の閑散期

村自体は何とか観光アピールを!と熱心に活動しているが、私は訪れる人の「秘密のお気に入りの村」になったらいいんじゃないかなぁと思っている。

村の散髪屋さん 何気ない日常のひと時

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?