幸せの尺度
わたしの定規は短い。
望みがない人間なのだ。
物欲は無いし生で見たい景色もそんなに無い。旅行は貧乏旅が好きだし、ブランド物は興味が無い。スポーツカーに魅力を感じはするが、所持するよりもプロの運転の横に乗ってサーキットを走ってくれたら一生の思い出になるな…と思う。質の高い機材で音楽を聴こうだとか、いい酒とシガーを嗜むだとか、そんな望みもない。
本当に平凡でつまらないと言われればそれまでなのだが、わたしはベランダの隅のプランターで育てた小さな皮の硬いプチトマトを太陽のめぐみだと言って頬張るのが好きだし、釣ってきた新鮮な魚が食べられたら嬉しい。サイゼリヤでヘロヘロに酔っ払うのも楽しいし、ドライブに行かずとも散歩で十分に楽しいのだ。
世間では安い人間だと言われるのだろう。でもわたしの幸せの尺度は安いものなのだ。
それでいいし分相応だなあと思う。
何もいらない。ささやかな幸福と安寧が欲しい。
それらはとても安く済むモノなのだから、誰もわたしから奪わず笑わず、放っておいてほしいのだ。
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