ノベルゲームを作ろうと思ったら15年かかった話【第39話】フリゲ公開編⑥仮想空間にダイブせよ!〜バーチャルフェスの歩き方〜
Nscripterで人生初のノベルゲーム作りを始めた落柿(らくし)。7年の休止期間を経てティラノビルダーで制作を再開。ノベルゲームの祭典・ティラノゲームフェス2021に参加することを目標に制作を続け、無事締め切りまでに「ホラー編」を公開。フェスを満喫する落柿は自作の感想書きやフェス作のプレイに勤しむのだった。
「いよいよ! バーチャルフェスが! やってくる!」
2021年12月。
落柿はノベルゲームコレクションのサイトを開くと目をきらきらと輝かせた。
バーチャルフェス。それはティラノゲームフェスの目玉企画。
そして参加できず物陰からひっそりとその賑わいを見ていた2020年のフェスで落柿がいちばん「羨ましい」と思っていた企画だった。
バーチャルフェスとは、その名の通り仮想空間で楽しめるノベルゲームの祭典である。ノベルゲームコレクションのアカウントがあれば、作者・プレイヤーを問わずそのお祭り会場を練り歩き、人々との交流を楽しむことができる……らしい。
バーチャルフェスは、ティラノゲームフェス開催日と同時に始まるわけではない。開催日は後日ノベコレ運営から通達される。12月を迎え、ついにその開催情報が解禁されたとあって、冒頭の落柿は興奮していたというわけである。
「何々……まずはアバターが必要と。なるほど」
落柿はティラノゲームフェス常連らしい作者様たちのツイートから情報を収集した。仮想空間のためのガワ、いわゆるアバターは運営からデフォルトのものも用意されているらしいが、多くの作者様は自前のものを作成するようだ。
そして作者様も自作品のキャラクターをアバターにすることが多いらしい。多くのキャラクターを抱えている作者様は気分によってアバターを使い分けることもあるとか。
「立ち絵……ないんだよなぁ」
落柿はあごに手をやり考え込んだ。自作「アカイロマンション」は全画面サウンドノベルタイプのゲームである。立ち絵というものは存在しない。
「いっそかまいたちの夜風のシルエットでも作るか? でも作中には出てこないし今さらなぁ……」
考えた末、落柿は自分のTwitterアイコンをアバターに流用することを決めた。このアイコンは以前に知り合いのイラストレーター・フナヨイ氏に描いてもらったものである。
「じゃあこの柿でいくか! バリエーションあるし」
そうなのだ。この柿アイコンを作るに当たって、フナヨイ氏には表情のバリエーションをいくつか作ってもらっていた。Twitterアイコンは渋柿の表現として渋い顔をしているが、この無愛想さは交流の妨げとなるかもしれない。
ハレの場であるバーチャルフェスには別の顔で参加しよう。落柿はアバターに使うアイコンを選び始めた。
「これ……は余計マズいか」
「じゃあこれは? ……うん、パクり疑惑をかけられたらアレだな」
「ほんならこれでどうや?」
「ええい、じゃあもう、これで行く!」
こうしてバーチャルフェスのアバターは決定した。あとは時を待ち、仮想空間にダイブするだけである。
「よし! いざ参加! バーチャルフェス、ログイン!」
「ふぉぉぉぉぉう! 自作のブース出来てる!!」
「周辺のブース、気になってた作品ばかり!」
早速おのぼりさんと化し、写真撮影をしまくる落柿。
自ブースではゲームがそのままプレイすることができる他、いただいたコメントを閲覧できるコーナーまであった。これは興奮する。
きょろきょろと周りを見渡すが、以外に人少なである。自分がログインする時間帯が悪いのかもしれない。しかしたとえ同時にログインしている相手がいなくてもバーチャルフェスは楽しむことが可能だ。
「探すか……宝箱を!」
バーチャルフェス会場は、ジャンル別ブースに別れている。そのブースごとに何が入っているかわからない宝箱が設置されているのだ。それを回収するのもまたバーチャルフェスの楽しみのひとつである。
「だいたい人に話しかけるの緊張するしな……。まずはひたすら宝箱回収しよっと」
開催を心待ちにしていたというのに、ここに来て小心者ぶりを発揮する落柿。さすが兄に勧められて始めたドラクエXを誰にも話しかける前に辞めた
猛者である。ひたすら宝探しのソロプレイに勤しんだ。
宝箱探しをしていると、たまに高速で移動していくアバターを見つけた。どうやったらあんなに早く動けるのだろう。そしてそのアバターもまた宝箱探しに精を出しているようだ。
そうやってソロプレイを楽しんでいた落柿だったが、Twitterでどうやら他の人たちはエントランスのあるブースにいることが多いという情報を得る。
「行ってみるか? エントランス……」
ドキドキしながらエントランスのあるブースにログインする落柿。そこには情報通り多くのアバターがひしめいていた。
チャットで会話が飛び交う。しかし何をどうしていいのかわからぬ落柿。とりあえずデフォルトでついていた「拍手」機能を使ってお茶を濁す。
「こんにちは」
そしてついに自分相手に発生した会話。落柿はあわあわしながら返事を打ち込む。
「こここここんにちは、っと……。あ! そういえば名刺! バーチャルフェスって参加者同士で名刺が渡せるって書いてた!」
このバーチャル名刺は、渡せば後でもらった人がその人の作品ページを見ることができるという優れ物である。ここは自作アピールのためには是非渡しておきたいところだ。
「名刺……名刺……えええええええとどうやって渡すんだ?」
全然わからん。
ってなってたらSherlock氏が名刺の渡し方を教えてくださった。神作品の作り手はやはり神……。バーチャルフェスの半分はやさしさで出来ている。
こうして落柿は、無事初のバーチャルフェスデビューを果たすことができたのだった。
「はー、楽しかった、バーチャルフェス!」
ん?
ところで制作はどうしたかって。まだ「アカイロマンション完全版」はちっとも完成していないだろうって?
「フフフ……。聞きたいか?」
時はバーチャルフェス開催直前。実は制作に支障をきたすとんでもない事件が起こっていたのである。
「アカイロマンション完全版」の完成まで──あと3年。
そんな落柿が15年かかって作ったゲームがこちら。
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ティラノゲームフェス2024年に参加しています。PLiCyゲームコンテストでは準敢闘賞をいただきました。
プリシー版はこちら
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