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ノベルゲームを作ろうと思ったら15年かかった話【第9話】制作編⑤〜キャラクター造形〜「立ち絵がないなら、キャラを濃くすればいいじゃない!」

これは、サウンドノベルの持つ魅力に取り憑かれ、「自分でもノベルゲームを作ってみたい」という思いを抱き、終わりのないゲーム制作に足を踏み入れた1人の個人ゲーム制作者の物語である。


Nscripterでなんとかタイトル画面を作ることができた落柿(らくし)。いよいよ本編の制作に取りかかり始めた。


クローズド・サークル
と化したマンションに閉じ込められた住民たち。そこで起こる怪異と人間ドラマを描くと決めたわけだが、問題はその住民——キャラクターだ。

「人数は7人。主人公であるプレイヤーを抜くと6人か……」


かまいたちの夜」では多数のキャラクターが登場するが、それを視覚的にわかりやすくするために生み出されたのがあの紫シルエットだ。


こういうやつね。


このシルエット、シナリオ担当の我孫子武丸先生からの提案だったらしいがまったく名案としか言いようがない。犯人当てが行われるようなミステリでは多数のキャラクターたちが登場するのがセオリーだ。


そのキャラクターを視覚的にグッとわかりやすくしてくれたのがこのシルエットだ。元々登場人物の名前を覚えるのが苦手な落柿はこの素晴らしい思いつきに感嘆したものである(その様子は第2話参照)。

特に海外ミステリ。横文字かつ長い名前なのに愛称も混じってくるものだから何度「登場人物紹介」のページに戻ったか知れない。なんで「ロバート」の愛称が「ボブ」だったりするんだよ。もう訳がわかんないよ!

しかし、これから自分の作る「アカイロマンション」にはシルエットは使わない。それは熟考して出した答えだった。


当時は素材のサイトも今のように充実していなかった。そのためシルエット素材を使うとどうしても画一的になってしまう。一応Illustratorは使えるから自分で画像を切り抜いて作るという手段もなくはないが……。


「そもそも『かまいたちの夜2』で本家のシルエットも進化しちゃったからなぁ……」


当然、個人制作の自分ではそこまでのクオリティを担保できない。初代「かまいたちの夜」風にするとしたって、そもそも背景画像(自分で撮ったものは一部使うとはいえ)の多くは背景素材に頼ることになる。


かまいたちのシルエットはただ立ち絵を切り抜いただけじゃない。シーンに合わせてポーズも変わるし、パーツのアップになったりもする。それを背景素材と合わせて自作するのは難しいだろう。


「まあ『アカイロマンション』のジャンルはミステリじゃなくてホラーだし、弟切草に準拠してシルエットなしでいけばいいよね?」


ただ、弟切草は登場人物が少ない。主人公である「ぼく」とヒロイン「奈美」の他に出てくるのはミイラ怪魚ヨロイくらいである(よく考えたら彼らにはシルエットはないがビジュアルイメージはあったな……)。


住民が6人ともなれば、プレイヤーはキャラクターを覚えるのが大変になってくる。それもプロローグ部分となる事件発生前にある程度人物像を頭に入れておいてもらわないと、いざザッシュザッシュと殺されていくときのカタルシスが半減してしまうだろう(鬼畜作者の発想)。


ではキャラクターのビジュアルイメージを使わず、プレイヤーに人物を覚えてもらうにはどうすればいいか?


「んー、じゃあ忘れられないような濃い味付けにしてやりゃあよくね?」


そもそも舞台はいわくつきの格安マンションである。そのマンションの住民なんだから、変人ばかりというのも設定としておかしくない、というかハマる。

「よっしゃ! いっちょヘンな奴ばっか考えたるか!」


そうして生まれたキャラクターが以下である。

①猛烈ワガママ、ジャイアニズム発動美人女
②ひねくれてて口の悪い着物姿の作家(芥川龍之介似)
③万年作業服で隙あらば青い絵の具を撒き散らす画家
④よく言えば天真爛漫、悪く言えば空気の読めない不動産屋の若い男
⑤いかにもそれっぽい金髪のホスト男子
薄幸オーラ漂わせてる系美少女

……うん、濃いな。
……濃すぎる、か?
マジで普通っぽい奴が誰もいなくなったぞ?


⑤と⑥はまだマシな気がしていたけど、実際書いてみたらどいつもこいつも思った以上に濃いぞ? これだけでだいぶチュンソフトのサウンドノベルから離れた気がするが? うーむ。まあいいか。


あとは今作は名前表示が出るわけではなく地の文で物語が進むから、口調も何人かはあえて特徴的にして誰がしゃべってるのかわかりやすくしとくか。


「○○し給え」(昔の文豪っぽい感じに)
「○○です〜」(語尾伸ばし)
「○○ですわ」(お嬢様口調で)


こんな感じか?
うん。まあこれはなかなか……。

現実にはいねえな。


ま、いっか。ひぐらしも「にぱー」とか「かな? かな?」とか言ってたし別にええやろ(雑)。

当サークルのゲーム「アカイロマンション」をプレイした方は「この作者、個性強めの人物しか出してこないやんけ」と思ったことと思うが、このゲームは例外なんである。昔、小説を書いていたときは割と没個性的な人物も書いてたりしてたんである。書いてました。書けるんです。……お願い、信じて。

さて、役者は揃った!
あとはこのキャラクターたちで血みどろホラー展開をやるだけだ!
そして住民6人のサブシナリオも書くぞ! そっちではこいつらのキャラクター性も掘り下げて群像劇もやるんだ!


ん……?
落柿はふと思った。


変人ばかりのマンションでの共同生活モノ……?
何か。何か心にひっかかるというか、呼び覚まされる何かがあるというか……。


あ、そうか。
これ確実にめぞん一刻の影響受けてるわ

ここで作者の漫画三大バイブルをお教えしよう!(誰も聞いてないのに…)
めぞん一刻あしたのジョー最強伝説黒沢、である!(なおその日の気分によって若干タイトルは入れ替わる)。あ、らんま1/2が再アニメ化決定しましたね! めぞんも続け!


そんなわけで、「弟切草」「かまいたちの夜」「街」に加え、「めぞん一刻」をリスペクトしながら「アカイロマンション」の開発は進んでいった。

「めぞん一刻」知ってて「アカイロマンション」をプレイしてくれる人は、是非オマージュ部分を探してみてほしい。割とわかりやすいのからマニアックなところまでちりばめてある。

……。
……。
……。



うん。「めぞん一刻」が好きなのはわかったよ?
でも、あんたが作るのは、ホラーなんだけどね?




そんな落柿が15年かかって作ったゲームがこちら。

Steamのセールは明日まで!

DLsiteとBOOTHでも取り扱ってます!


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