読むべきビジネス書を決めるフレームワーク
はじめに
前に以下の記事で自身の「知識・経験」を棚卸するためのポートフォリオについて書きました。
その中で、ポートフォリオ拡張の手段として読書に言及していたのですが、「どういう読書をしていくべきか」の言語化は不満足だったので、改めて考えてみました。
あくまで、私個人の整理でしかないですが、面白いフレームワークになったと思うので共有させていただきます。
ビジネス書フレームワーク
なお、ビジネス書の定義は特に定めません。今回の例でもノンフィクションを入れているので「≠小説」でもないですし、「≠漫画」とも言い切れないですし、何となく「仕事に役立ちそうな本」くらいのイメージです。
それでは、フレームワークの全体像をご覧ください。
それぞれの内容は以降の章で説明をしていきますが、まずはフレームワークの全体像についてです。
「経験ベース ⇔ 研究ベース」の軸と、「じっくり読む ⇔ サクサク読める」軸の2軸で全4象限を作っています。
この言葉の定義も曖昧なものですが、あえて言うとこんな感じです。
経験ベース:個人の経験に基づいている、エビデンスは明確ではない
研究ベース:エビデンスがある、調査や統計的事実に基づく仮説
じっくり読む:ページ数が多かったり、内容が重かったりする
サクサク読める:ページ数or1ページあたりのボリュームが少ない
なお、縦の軸は、体感的な「読みやすさ」(読みにくい=悪いではない)を示しているので、ページ数の大小と体感が逆転することは大いにあります。
サンプルのプロット
これだけではよくわからないので、サンプル本を私の本棚からチョイスしてみます。
参考までにこの時点で「重視度(経験or研究の5段階)」と「ページ数」を整理しておきます。ただし、前述の通りページ数は「読みやすさ」と完全には一致しません。
また、読んでから数年経っている本も含んでいるので、「重視度」は非常に雑な評価であることをご容赦ください。
何はさておきプロットしてみます。
続いて、各象限の名前を入れたものが以下です。
では、順番に見ていきたいと思います。ただし、フレームの左右を先に分けて、読みやすさで上下に振ったので、1→4→2→3の順番で書きます。
第1象限「鈍器」
最も意味不明なネーミングだと思いますが、このあたりの本は個人的には結構前から「鈍器本」と読んでいます。
「じっくり×研究ベース」本です。
読んだことがある方は共感いただけるんじゃないかと思いますが、これらの本は、ページ数も多いですし、内容が重たいので、1ページ進むのも大変です。
たまに集中力を維持できなくなって、2~3ページ前から読み直さないといけないことも多々あります。
このあたりは、論文チックなのもあり、また日本語訳特有の読みづらさもあり、という感じで、ページ数が同じくらいでも第2象限の本たちより「殺傷力」があります。
そういう意味で、鈍器本です。
『学習する組織』の見た目の鈍器感はほんとすごいと思います。
ただ、今回は3冊しか選んでないですが、去年くらいまではこういう本ばっかり読んでいました。やはり、なにかの分野で専門性を高めていくと、他の象限の内容では満足できなくなるのだと思います。
悲しいのは、『学習する組織』なんかは一番好きな本ですが、10人に勧めたら9人に引かれることですね。鈍器なので。
ここからは愚痴ですが、「学習する組織が大事」って言う人は多いんですが、実際にこの本を読んだことある人(読み切った人)はかなり少ないんじゃないかと思っています。
第4象限「入門・解説書」
さて、専門性を突き詰めると最後は鈍器だと思うのですが、やっぱりいきなり鈍器は厳しいので、エントリーモデルが必要です。
私にとっての第4象限がそれです。
『学習する組織』のエントリー本で丁度良いのを持っていなかったので、別の例で説明すると、この『なぜ部下とうまくいかないのか』は「成人発達理論」というジャンルの本です。
ただ、この成人発達理論というのは恐ろしく、『なぜ人と組織は変われないのか』、『インテグラル理論』、『ティール組織』みたいな鈍器本たちが待ち構えています。
私は実は先に『ティール組織』とかを読んだ(『なぜ人と…』は読みかけ積読です。。)ので、全くエントリーではなかったのですが、「新しいジャンルを人に紹介する」ときには有用な象限だと思っています。
鈍器本で得た理解を確認するのにも適しています。
また、私自身も最近はサステナビリティ、AIについてのリスキリングをしていますので、この象限の本に多く助けられています。
今回はプロットしていませんが、「資格の参考書」や「白書」あたりもここに入るイメージです。
鈍器も大事ですが、「難しいことを分かりやすく説明する」ことも大事なのです。
第2象限「哲学・伝記」
続いて「じっくり読む&経験ベース」の第2象限です。
『トヨタ生産方式』を哲学扱いすると怒られそうですが、ドラッカーや稲盛和夫の思想を哲学に位置づけるのはあまり反論ないんじゃないかと思っています。
また、『SHOEDOG』みたいな自伝や、場合によっては伝記(本人以外が書いたもの)もこの領域のイメージです。
実は『マネジメント』(エッセンシャル版)や『生き方』はそんなにページ数が多いわけでもないのですが、1ページが重めかなと思って、無理やり第2象限に入れた経緯があります。
1ページずつ、著者の哲学の意味合いを、自分の経験や考えと照らし合わせながら読んでいけるのはこういう本の醍醐味だと思います。
表現が悪いんですが、「読みづらいと、意味を考えながら読むので、考えが深まりやすい」んですよね。
このあたりは鈍器本も一緒です。
逆に『SHOEDOG』とか伝記系の本は「じっくり」というよりは、エピソードに乗ってすごい勢いで読めるのですが、いかんせんボリュームが多いので時間はかかります。
※読んだときの興奮を思い返して、読み直したくなってきた…。
個人的には、そんなに頻繁に手に取る象限ではないのですが、思考をリセットしたり、思いに耽ったするときには最適だと思っています。
第3象限「実務ノウハウ」
最後は「経験ベース×サクサク」の象限です。
気を抜くと、結構な量の本がここの象限に入ってくると思います。
「ライトな自己啓発本」という表現もできるかなと思いつつ、経験を元に実践的な話が書かれていることが多い象限です。
『もしドラ』が実務的かと言われたら違う気もしますが、さすがに『マネジメント』と同じ象限ではないですし、かつエピソード仕立てなので、ちょっと左よりです。
※創作エピソードを無理やり「経験ベース」にしている点はご容赦ください。
個人的には、この象限の本は最近全然読まなくなってきていて、どうせ思想系読むなら、ぶ厚めを選んでしまいます。
鈍器本は研究ベースなので、どんどん新しいものが増えてくるのですが、思想系って、そんなに進化しないんですよね。
だから、ライト本を読んでも大体「あー、この考え方ね。知ってる」となっちゃうんです。
手軽なところだとドラッカーで、ちょっと遡っても『人を動かす』、あとはあまり詳しくないですが、古くは『論語』とかで大体賄えるんじゃないでしょうか。
とは言え、たまに経験ベースだけど実務的な内容が助かることもあるので、本屋の平積みはチェックするようにしています。
また、先ほど『学習する組織』が好きだと言いましたが、全くのベクトル違いで大好きなのが左下にプロットしているこの本です。
全くもって実務的ではないですし、実際にいたら「スマート」の真逆なんですが、そのバカバカしさでマインドフルネスできます。
この本を知らない人がいらっしゃったら、上で紹介した本は全部読まなくていいので、これだけでも良いから買って読んでみてほしいです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。経験ベースなのか、研究ベースなのかとか、細かく突き詰めると右も左も分からなくなってしまうので、何となくで読んだ本・読むべき本を整理するのが良いと思います。
読むべきビジネス書を決めるためのまとめとしては以下の通りです。
専門性を追求するときは鈍器本に挑戦する。平積みはほぼ無視。
ただし、定期的にエントリーモデルを読むと、人に勧めやすいし、自身の理解の棚卸しにもなる。
新しいジャンルに挑戦するときは、一旦、鈍器本は避けてエントリーモデルで良い(※最先端過ぎると鈍器本しかないジャンルもある)。
思想系の本は源流を何冊か読むと、平積み本を読まなくてよくなる。
実務ノウハウは役立つこともあるので、新刊はチェックしておいた方がいい。
本屋や電子書籍ストア等で新刊をチェックするときと、目的があって特定ジャンルの本を探しているときとで、事情は変わってきますが、私はこのフレームで判断するようになってから、「あたり本」を引ける確率が高まりました。
なお、私のこのnoteは間違いなく第3象限です。ちょっとずつ、右上を目指していきたいと思います。
何かの参考になれば嬉しいです。