恥じて生き熱く死ねない
「恥じて生きるより熱く死ね」は、ジョン・ウー監督「男たちの挽歌」の日本語版キャッチコピーだ。この映画を2年前に初めて観た時、僕はあまりに感銘を受け、とにかく精神がオーバーヒートして、赤ん坊でもないのに知恵熱を出した。それを具体的に何とは知らないがとにかく重病の前兆であると早とちりし、十代にして遺言を書いた。戒名は「与其羞耻地活着不如激情地死去」とするように。必死の形相であった。
それでも、なぜとは言えないが、僕は生き残り、後追いで「男たちの挽歌Ⅱ」「男たちの挽歌Ⅲ アゲイン/明日への誓い」をアマゾンプライムで見る僥倖に預かった。「男たちの挽歌」の背景には、当時映画会社内で左遷されていたジョン・ウーを、後に製作総指揮を務めることになるツイ・ハークが呼び戻すという出来事があった。この関係性は、映画におけるホーとマークの関係性と重なる。しかし、現実のジョン・ウーとツイ・ハークの関係性は、「男たちの挽歌」の後、悪化していき、Ⅲでは監督がツイ・ハークに交代することになった。Ⅲは、ベトナム戦争下のサイゴンを舞台にした「男たちの挽歌」前日譚だ。
しかし翌年、ジョン・ウーは同じくベトナムを舞台とした「ワイルド・ブリット」を公開した。「男たちの挽歌」前日譚的な意図があるのは明らかだった。取引先のマフィアから一気飲みを強要されたマークをホーが庇い、代わりに酒を飲み干すという「男たちの挽歌」中における一つのエピソードと、殆ど同じシーンを組み込んでいた。
正直、Ⅲには物足りないものがあった。前2作と比べてロマンを描くことが全面に出た一方で、スペクタクルを消失した感があった。そこにきて「ワイルド・ブリット」は、「スカーフェイス」も「地獄の黙示録」も盛り込んだヴァイオレンスの詩だった。同時に、「ワイルド・ブリット」は「男たちの挽歌」と対を成す物語を描き出した。それは、熱く死ねなかった男たちの物語である。