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特別企画公演 『少し早いけど、オレ、 もう暮れちゃうよ』 ~ 一之輔 冬ばなし ~ー上野・鈴本演芸場・夜の部6日目「文七元結」ー

「やっぱり寄席はいいな〜」。改めてそう思った。トリの噺はもちろん、それまでに続く落語家、色物さんの一人ひとり、一つひとつの芸が気持ちを明るくさせてくれる。「寄席は大人のディズニーランド」なのだ。

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上野・鈴本演芸場下席夜の部は特別企画公演「少し早いけど、オレ、もう暮れちゃうよ」〜一之輔 冬ばなし〜。一之輔が主任を務め、初日から千穐楽までネタ出しした番組。初日がご存知「芝浜」、本日6日目は大ネタ「文七元結」。一之輔はこの噺をどう聞かせてくれるのだろうかと楽しみに席についた。

前座の開口一番に続き、一之輔の一番弟子・㐂いちの「真田小僧」。噺に勢いがあり、聴いていて気持ちいい。ニックスの漫才に続いては奇才・百栄の「状況説明窃盗団」。このあたりから場内の空気は落語のワンダーランドに入っていく。お次は天どん「アカウント泥」。加速度を増してずぶずぶと笑いの異世界へ。正楽師の紙切りで一旦正気に戻るが、続く一朝師の「宗論」で更に深く、深く笑いの沼に落ちていく。

落ち行く先で待っていたのが仲トリの喬太郎「ウルトラのつる」。「道灌」が始まったのかと思ったが、突如「つる」をモチーフにしたウルトラマンジャックの命名にまつわるハイテンションな噺に。師の迫力に圧倒され、笑い転げているうちに仲入り。

仲入り後はこみち「大阪のおばちゃんの壺算」。「壺算」を大幅に改作したものだが、文字通りの抱腹絶倒。翁家社中・太神楽で気持ちも頭もリセットして、いよいよ一之輔の「文七元結」へ。

私の場合「文七元結」というと志ん朝のイメージが強い。師が鮮やかに描写した左官の長兵衛、佐野槌の女将、文七、お久、その他登場人物から、江戸に住む人々の人情や気風を肌で感じることができる。五代目の小さんは「五十両拾う噺より五十両やってしまう噺のほうが好きだ」といったらしいが、私もそう思う。

一之輔版「文七元結」はベタベタな人情噺になることなく、笑いも多く軽めの仕上がりだった。あっさり薄味とはいえ、お久の親を思う気持ちや佐野槌の女将の粋、長兵衛の江戸っ子気質が心に響いてきた。
「落語は生き物だ」といった人がいたが、一之輔の「文七元結」はこれからどんな風に変化していくのだろう。

演目
(開口一番)柳家ひろ馬「金明竹」
春風亭㐂いち「真田小僧」
ニックス「漫才」
春風亭百栄「状況説明窃盗団」
三遊亭天どん「アカウント泥」
林家正楽「紙切り/熊手・紅葉狩り・助六」
春風亭一朝「宗論」
柳家喬太郎「ウルトラのつる」
ー仲入りー
林家あずみ「三味線漫談」
柳亭こみち「大阪のおばちゃんの壷算」
翁家社中「太神楽」
春風亭一之輔「文七元結」


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