梨木香歩『裏庭』
「西の魔女が死んだ」を読んで梨木香歩さんの他の作品が気になり、新潮文庫版がブックオフで厚みのわりに安く売っていたので買った。
中学生の時だったと思う。
文字のフォントが変わるのを最初は何かのミスかと思ったが、現実と裏庭の切替表現だとわかると感心した。
結局登場人物の誰のこともあまり好きになれず、文体が特別気に入ったわけでもないが、忘れられないフレーズがあってずっと手元においてある。
初めて読んだとき、なんの痛みもなく、大きな力がどうっと自分の中を通り過ぎたような衝撃を受けた。
中学生の私だけでなく今の私にも至るまでずっと、思い当たることが多すぎて、今後のためにタトゥーにして手の甲に彫りたいくらいだ。
これを読んでからも、何度読み返してもずっと変わらず、いつまでも自分の傷に翻弄されていて本当に情けない。
翻弄されたままでもいいからせめて、自分の傷から目を逸らすために他人の傷をいたずらに癒すことはしたくない。
情けないことにそれすら守れないかもしれないけれど、してしまったら自覚できるような人間でありたい。
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