【短編】王国の5月
最難関の国家試験と面接をくぐりぬけ、男はついに王子の付き人となった。城での仕事は、多忙であるが、それは日々の生活をつなぐための自転車操業では決してない。ただ決められたシナリオのロールプレイング。没個性的な密度の高い業務をこなしているのみである。
男もまた、城の歯車としてテキパキと仕事をこなした。背丈以上の長さのある赤色のマントは、男の一挙手一投足に合わせて自在に形を変え、その様は気品にあふれている。すらりと長い脚が大股を繰り出し、雑音のない廊下に甲高い靴音が響く。夕陽が壁面の