スーパーの年末年始
近所のスーパーが3店舗とも、
三が日がお休みだった。
良いことだと思う。
少し前まで、スーパーだろうと百貨店だろうと、年末は通常通り営業して、年始も元旦から初売りをする。
そういう日常と変わりない年末年始に、十数年ほど、うんざりしていた。
年末の29日か30日は時短営業、31日は休み、年始も三が日は休みであってほしい。
そうして町中が静かになり、お寺と神社にだけ、光が灯る。
そういう田舎の年末年始が好きだった。
わたしが5,6歳ぐらいまでは、穏やかにしめやかに過ごしていたように思う。
年末におばあちゃんがこしらえた、おせち。
1人1尾用意してくれた、立派な鯛。
近所の餅屋に餅米を持ち込んでついてもらった、お餅。
日に日に具材が減っていく、お雑煮。
お歳暮でもらった、高級なお菓子。
三が日の終わりには、そろそろ和食に飽きてきたなぁと言いながら、こっそり焼いてしまう、食パン。
どれも美味しいけれど、ちょっと物足りない。
そんな中で、いつからか三が日に営業するスーパーが出てきた。
24時間のコンビニが急増したあたりだろうか。コンビニに対抗するように、スーパー、百貨店、ファミリーレストラン、ファストフード、電器屋、車屋、ホームセンターまで、「元旦から営業します!!」とCMを打っていた。便利だと思ったのは最初の2,3年で、あとはすっかり昔の正月が懐かしくなっていた。
食べたい時に、食べたいものを買いに行ける。
とっても便利でありがたいはずなのに、
「お正月がこんな殺風景でいいのか」
と残念な気持ちになった。
不便なお正月は、趣があった。
(老人のような感想だが、まだ20代だ。)
(老害気質だという自覚はある。)
だから、今年、近所のスーパーが1月3日まで休むと知ってからは、とてもワクワクした。
3日も休みなら、年末は買いだめするしかない。
いっそ寝正月と決め込もう。
12月30日にスーパーへ行った。
いつもの買い物をしようとしたら、違和感に気付いた。
スーパーがお正月モードに入っているのだ。
「もういーくつ寝ーるとー」なんてBGMは些細なこと。
海老の天ぷらが1本300円で売られているのもご愛嬌。(普段は180円なのにと思わないでもない。)
「迎春」とあちこちにポスターやシールが貼られているのも、華やかなだけで、困ることはない。
問題は野菜だ。
まず、白菜がでかい。いつもなら8分の1切りがあるのに、今日の最小単位は4分の1切り。なんなら丸々1玉のものも置いてある。
エノキも大袋しかないし、にんじんは3本からしかパックされてない。
ははーん。
さては帰省で大家族が集合するのだな?
もしくはわたしと同じように正月の買いだめラッシュなんだな?
しかし一人暮らしには厳しいものがある。
3日間買い物しなくたって、食べ切れるか怪しい。
しかしこれが本来のお正月の風景なのだ。
わたしが幼い頃、恋しがったお正月は、独り身の人間にとって寂しさを感じるものだったのだ。
そりゃあ、コンビニが流行るわけだ。
お正月にも営業しちゃうわけだ。
心の中で、天秤にかける。
静かで不便な正月と、
騒々しくて便利な正月。
…まぁ、年に一度ぐらい、不便であっても良いかな。
白菜は4分の1カットを買った。
買ったら買ったで、ワクワクしてきた。鍋ばっかりじゃ寂しいから、炒め物にしようか、浅漬けにしようか。
ちなみに。
わたしは今年、1月2日が初出勤になる。
あー、ほんと、三が日ぐらい休みであってほしい。
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