読書日記 『さざなみのよる』
亡くなった彼女が残したモノは決してなくならず、彼らのムネの中で揺れ続ける。
この物語は小国ナスミという一人の女性を中心としたお話である。彼女の家族や友人視点のお話がいくつも収録されている。幾人もの視点のお話が読める本はなかなか貴重ではないだろうか。
基本的には、1話完結スタイルである。テンポよく進むことができ、非常に読みやすく感じた。私は一気読みをしたのだが、約2時間で読むことができた。読書する時間がないという方は参考にしてほしい。
私は彼女が人の機微に聡すぎる人間だと感じた。
「死んだ後も誰かの心の中に残る人でありたい。」と望む人は多いだろう。しかし、それは簡単なことではない。なのに、彼女は心に残り続けている。
なぜ、心に残り続けるのか。私は“自分を生きることを考えさせる発言”にあると感じた。
故意なのか、偶然なのか、はたまた「死」という予告された未来のためなのかは分からない。心のつっかかりをとる、前の前辺りの発言を彼女はするのだ。
前述のように、この話には幾人もの視点で描かれた話が収録されている。そのため、読み手に伝わる感覚や思いも様々だ。主人公との関係や、自分の性格に似ている人も登場するだろう。だからこそ、共感し、胸に突き刺さる話に出会いやすいと思う。
私には2話目の姉視点や祖母視点の話にはグッとくるものがあった。
自分に近しい人が亡くなると、どんな感情であれ激しく揺れるだろう。
自分にそれほど近しくない人が亡くなったと聞かされたとき、私の心は揺れるのだろうか。
もし揺れたなら、私はその人とどんな関係だったのだろうか。
小国ナスミ、享年43。
宿り、去って、やがてまたやって来る――。
命のまばゆいきらめきを描いた、感動と祝福の物語。
「今はね、私がもどれる場所でありたいの。
誰かが、私にもどりたいって思ってくれるような、そんな人になりたいの」(9話より)
「やどったから、しゅくふくしてくれてるんだよ」
やどったって、何が?と光は心の中で聞いてみる。
「いのちだよ」(13話より)
いいなと思ったら応援しよう!
【読んでよかった!】思って頂けたらサポートよろしくお願いします。