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読書日記『博士の愛した数式』

『博士の愛した数式』
“記憶が80分しかもたない博士”と”家政婦の私”と”息子のルート”、
3人の幸せな日常が描かれた小説でした。

そして、数字の美しさを教えてくれる小説でした。

小説の中で博士は、当たり前のことのように、会話の中で家政婦の私にいくつかの数学的法則を教えてくれます。
完全数やら、友愛数やら、ルース=アーロン・ペアやら…。(下部参照)
読者の私も家政婦の私を通じて博士の数学を教えてもらったのですが、
数は数えきれないほどあって、幾通りの組み合わせ方があるのに、運命のように繋がっている数字たちがスゴすぎて、不思議で、美しいなと思えたのです。
 
博士が純粋に教えてくれるから、こちらも純粋に美しいと感じることができたのかなとも思います。

★★★

また、博士は事故の影響で記憶が80分しか持ちません。
これは、現在のいる時点から80分前のことは覚えているけれど、81分前のことは記憶にないということです。
家政婦の私は、博士に永遠に覚えられることがないという現実を寂しく思っている場面もあります。
 
けれど、読者の私は思います。
博士は貴女のことをちゃんと覚えられていると思うから大丈夫だよ、と。
初対面の時の博士と最後の博士ではどこか対応が違うように感じたからです。
家政婦の私目線で話が進んでいくので気のせいなのかもしれませんが。
 
初対面の人とのパーティーをあんなに楽しめないと思うんです。
初対面の人に「あなたの料理している姿が好き」とは言わないと思うんです。
知らない女性に見守られながら、初対面の20代の男性とキャッチボールはしないと思うんです。
 
一緒に過ごした時間を覚えていて、
一緒に囲んだ食卓を覚えていて、
長年見守っていた子どもの成長を覚えているのだと思います。
 
身体が覚えているとか、魂に刻まれているとか、
そのようなことが起きててほしいなという希望も込めて、そう思います。

★★★

私はこのお話をとても透明なお話だと感じました。
博士と私とルート、またお義姉さんも含めてみんな幸せでありますように。

『博士の愛した数式』
小川洋子 著

あらすじ
[ぼくの記憶は80分しかもたない]博士の背広の袖には、そう書かれた古びたメモが留められていた──記憶力を失った博士にとって、私は常に“新しい”家政婦。博士は“初対面”の私に、靴のサイズや誕生日を尋ねた。数字が博士の言葉だった。やがて私の10歳の息子が加わり、ぎこちない日々は驚きと歓びに満ちたものに変わった。あまりに悲しく暖かい、奇跡の愛の物語。第1回本屋大賞受賞。

新潮社書籍詳細より

★★★
博士の愛した数式たち

完全数
自分以外の正の約数の総和が自分自身に一致する
6=1+2+3
28=1+2+4+7+14
496=1+2+4+8+16+31+62+124+248
そして、連続した自然数の和で表すことができる
6=1+2+3
28=1+2+3+4+5+6+7
496=1+2+3+4+…+39+30+31

友愛数
異なる2つの自然数の組で、自分自身を除いた約数の和が互いに他方と等しくなる数
220と284
220:1+2+4+5+10+11+20+22+44+55+110=284
284:1+2+4+71+142=220

ルース=アーロン・ペア
2つの連続した自然数のそれぞれの素因数の和が互いに等しくなる組。
714と715
714=2×3×7×17
715=5×11×13
2+3+7+17=5+11+13=29


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