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【急行ゴンドワナ】

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心に刺さった美しい鄙の宿や、登録有形文化財になっている古き佳き日本の温泉旅館の美の探訪
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【急行ゴンドワナ 3】長野県 別所温泉・花屋

別所温泉で検索すれば最上位に表示される花屋は、ほぼ全館が登録有形文化財という美宿だ。 浴衣姿の客がそぞろ歩き和装の仲居さんが早足で通り過ぎる、華美を抑えた渡り廊下には日本旅館の美が凝縮されている。広い敷地の中を細い廊下が分岐していく様子は神社愛好家には厳島神社を、鉄道愛好家には軌道も連想させる。 花屋の廊下の美しさは露天風呂に下る小径でも楽しめる。写真好きがblue hourと呼ぶ日没直後・日の出直前の時間帯は吊り灯篭も良い感じに輝き、特に美しい。温かい季節なら湯上りに涼

【急行ゴンドワナ 2】山形県 白布温泉・西屋旅館

伊達家の次は上杉家だ。徳川家と敵対した上杉家は関ヶ原後取り潰しこそ免れたものの、会津120万石から米沢30万石に減封された。しかし徳川家との関係修復に努めた筆頭家老・直江兼続が米沢郊外の白布温泉で量産した火縄銃が大阪冬の陣で徳川軍に貢献し、2代将軍・徳川秀忠から感状を得たという。 その白布温泉には江戸時代より続く3軒の茅葺旅館(東屋・中屋・西屋)が平成初期まで残っていたが、2000年に東屋と中屋は惜しくも焼失、かつての姿で令和を迎えられたのは西屋のみとなった。開湯は鎌倉末期

【急行ゴンドワナ 1】宮城県 青根温泉・湯元不忘閣

Noteではテーマ別に列車名で分けて表記している。温泉宿をテーマにしたこの「急行ゴンドワナ」シリーズで最初に取り上げるのは、蔵王火山のマグマが沸かす青根温泉を代表する湯元不忘閣だ。 戦国末期から江戸初期にかけての英雄、伊達政宗が当時の湯守にここを忘れるまいと言ったことから名付けられたといい、その時から数えると5世紀近い歴史を誇る。コロナ後急速に普及した客室露天風呂は無いが、ここは個浴では無く温泉と建築(国の登録有形文化財が7棟もある)を楽しむ宿だ。客室が14に対して温泉が6