本が売れないと言われる時代にわたしが「書籍化」を目指した理由
12月から担当していたweb連載の書籍化が決まった。
わたしが今働いているのは出版社でもなく、インターネットの会社でもなく、福祉や教育をやっている会社の「子育てに笑いと発見を」をコンセプトにした子育てのwebメディアの部署で。
新しい事業のタネを考えよう的な話があった時に書籍化したいと言ったら、金額サイズ的に事業になり得ないとそっこうで言われた。
いろんなところで本は売れなくなっているというニュースが流れている。(とはいえ、売れている買う理由の設計がないと売れなくなったということかなとも最近は思っている)
それでも私はこの作品を書籍化したかった。
その1番大きな理由は、本になることで夫婦で手に取れると思うから。
子育てメディアをやっている私たちのサイトの読者の多くは、子育てをするお母さんだし、特に初めての子育てをする時に悩んだり迷ったり、孤独を感じがちなのもお母さんだ。(そして私もそんなお母さんの1人である)
そんなお母さんに届けたかったり伝わってほしいことはたくさんあるし、迷ったり悩んだり孤独を感じているお母さんが、私たちがつくるコンテンツを通してくすっと笑って肩の力を抜けたり、新しい視点や発見を手に入れて子育ての選択肢が増えたりすることを願って、私はコンテンツをつくって届けている。
でも記事を読んで発見したことを家庭で実践するとなると、いろんなハードルがある。子育てをしながらの生活の中で、自分の場合だったら?と考えてみたり、我が家の場合だったら?と夫婦で話してみる、という時間をつくることはそんなに簡単ではない。
それに、夫婦で改まってお互いが思っていることを伝え合う、というのはそれをしてきてない夫婦にとっては気恥ずかしかったりハードルを感じるものなのだと思う。
だから、この作品が「本」という物体になることで、世のお父さんたちが手に取り、読み、夫婦で物語を共有できたら、この物語を下敷きにしたら子育てのこと、夫婦のこと、家族のことを語り合いやすくなるんじゃないか。
そう思っている。
それを確信したのは、今年の2月。初めてこの作品のリアル読書会をした時だった。
参加してくれたのは0歳のお子さんがいて、初めての子育て真っ最中なお母さんたち。話しやすくするために、私は当時公開していた10話までの記事をすべて印刷して、話題に困ったら本のようにぺらぺらめくりながら話ができるように準備をしていた。
だけどありがたいことに読書会は盛り上がった。参加してくれたみなさんがいろんな話をしてくれて、印刷した記事を使わなければいけないようなシーンはあまりなかった。
だけど、会が終わった時、参加者の1人に「この紙持って帰ってもいいですか?」と聞かれた。
「この紙」は私が印刷した10話までの記事。モノクロ印刷でホチキス留めしただけの紙束で、なんなら枚数にして60枚以上というボリュームだった。
経費を気にせずカラーコピーすればよかった!と後悔しながら(笑)、これでよかったら…と答えると、その人は「記事のリンクを送っても読んでもらえないから、印刷してあれば夫が読んでくれるんじゃないかなと思って」と教えてくれた。それを見て、参加してくれた人みんなが印刷した10話までの記事が印刷された紙を持ち帰ってくれた。
驚いたのは次の日だった。
参加者に送った御礼メールに返信が届き始める。
「夫が読んでくれました!」「夫から話をしようと言ってくれて、家事の考え方の違いについて話ができました」
そんな喜びの報告がなによりもうれしかったし、紙になることで、作品をきっかけに夫婦のコミュニケーションが生まれる。コンテンツを通して笑いと発見だけでなく、新しい行動をつくることができるんだと確信をもった。
だから私がこの本のことを考える時のイメージは、「リビングのテーブルの上」。読み終わったお母さんが置いておいたその本を、お父さんが読む。そしてその次の日「そういえばさ…」そんな風に会話がはじまってほしい。(だから、お父さんでも手に取りやすいような表紙のデザインにしたいなぁと思っている)
この作品の主人公と旦那さん、こんなところいいよね。ここはこうしたらどうかな?そんな話ができたら、どこかのタイミングで「我が家の場合はどうだろう?」そんな話ができるんじゃないか。
もし多くの家でそんなことが起きたなら、子育ての雰囲気ってちょっと変わるんじゃないかな。
そんな風にひとり妄想をしている。
本になったその先に、そんな未来を見てみたくてこの書籍化という取り組みを応援してもらえたらうれしいなぁと思っています。
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(追記)7/25発売になりました!